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江國香織さんの「赤い長靴」を読んだ


凄く良かったので記念にここに感想を残しておくことにしました。
これを良かったというのは胸の内を晒すようで少し迷ったけど、noteだからいっか。



この本を手に取り、背表紙に書いてある文章を読んで購入を決めた。

「結婚して10年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景ー
幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、限りなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。」




短編集で、日常のお話が淡々と続いていく。
激しい展開とかもないので、ゆっくり気まぐれに読み進めた。


最初はあるあるー!とか思いながら日常のエッセイを読み進めていたが、次第にこの夫婦、背表紙の煽り的にもしかして別れちゃうの?と手に汗握りながら読んでいた。かなり際どい描写もあった。しかし、絶妙なタイミングで入ってくる愛の描写。好きだからこその想い。愛されてるからこその反応。二人のすれ違い。




途中で気づいた。
そう、これは2人の愛の記録なのだ。





家事を任せっぱなし、服も脱ぎっぱなし、妻の話を聞いてない無口な夫。
そんな夫に文句を言いたくなるものの、注意することを諦めてしまった妻。
一緒にいてもどこか孤独で、このままでいいのかななんて時々思いながら生活を重ねていく。

側から見たら、今すぐ別れちゃえばいいじゃんと思われても仕方ないかもしれない。


読了後、この本のレビューを見たら私の感想とは全く違う意見が沢山だった。

「何で一緒にいるの?私なら即離婚」
「夫が無理」
「こんな風にはなりたくないと思った」


びっくりした。
私はこの2人のお互いを思う愛情が凄くいいなと思ったから。


※この先ネタバレ含みます。


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まずは妻。

ダメなんて一切言われていないのに夜外を出歩くことに罪悪感を感じる事。
何故か帰りたくなってしまうこと。

一緒にいる時よりいないときの時の方が、夫を好きになる事。会いたいなと思う事。家で一緒にいる時は色々思う時もあるのに。



夫もやばいの。めちゃくちゃ愛してるの。


遅い時間に習い事を始めた妻が心配になって誰にも言わずに妻が習い事のテニスをしている姿を遠巻きから覗きに行った事。

自分の休みの日に妻が予定を入れると機嫌が悪くなってしまう事。寂しいんだね。

妻が少し離れたトイレに行くときですらも、
ちゃんといけるか?と心配するところ。

外に出かけるときに妻に待たされたバナナを外で食べられず、一日中持ち歩いて黒くなったバナナをリビングで食べ、美味しいと思う事。

あまり普段は夜に外を出歩かない妻がコンビニにいるのをたまたま見かけたとき、
「自分の所有物が公共のものに紛れ込んでいるのを見つけたような驚きと心許なさだった」と無論不穏当ながら思ってしまった事。


でもそんな事を思っても、夫は妻に甘い言葉をかけない。好きすぎる故してしまった行動だと分かっていないから。気付かずに心と身体を動かしているのだ。


上記の所だけ読むと、この夫婦、束縛がすごいの?モラハラなの?と思ってしまうかもしれないがそんな事は一切ない。

なんの縛りも決まりもないし、機嫌が悪くなる事を怖いと思ってないし、二人でまったりと平和に生活してるだけ。


そんな風に日常を両者の目線で回想しながら、絶妙なタイミングで愛の描写が入っていく。ここには書き切れないほど多く、甘く。

特に14編中、3編しかない夫側目線の短編は甘くてどろりと濃い。無口な夫だから3編しかないのかな、とか考察した。




話を聞いてくれなかったり、義実家で微妙な思いをしたり、妻にとってなんだかなぁと思う時間は多々あるけどなんだかんだ妻は夫の存在が好き。存在が愛おしいって、あると思う。

たまにその<なんだかなぁ>をぶつけてみると、夫は無口なのに心の中で何回も反芻するほど戸惑って超可愛い。




妻はそんな夫をくすくす笑い、なんだかなぁと思っても存在を愛おしく思い、夫に重めに愛されながら生きていく。

夫は静かに妻を重めに愛し、全力で甘え、妻の器と愛に助けられながら生きていく。

じりじりと愛し合う2人。
周りには分かりにくい、2人だけの世界。


素敵すぎるじゃないか。


多分ね、妻はそんな夫の不器用さに気付いてるし可愛いなって思ってる。
夫は妻がいなくなったら死んじゃうと思う。


この本、めちゃくちゃに恋愛小説。
文章に何回もきゅんきゅんしました。
レビューは割と悪いけどな!

ラストシーンも最高でした。





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この中に収録されているシールという短編。
これ、凄いです。私のお気に入り。


古い友達の女同士の会話、その時思う事。
こんな事よく文章にできるなと思った。
この内容はエグすぎてここには書けない。
ただ、めっちゃわかるという言葉だけを添えておく。中でも、主人公の気持ちが私はめちゃくちゃ分かってしまうのだ。大声では言えない。


江國香織さんはすごい。
これが書けてしまうって本当にすごい。

痒いところに手が届くというより、
「あなたこんな所が凝ってるんですよ」って予想外なところをほぐされて、「え?!めっちゃ気持ちいいし信じられないぐらい身体軽くなったんだけど」ってなる感覚。

その他にも、女の「分かる」が沢山あって夫と妻のラブストーリー以外の部分でも沢山楽しめました。




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女の人生についての本が割と好きなので
これからもそんな本を読み進めて行きたいと思います!江國さんの本まだまだ読んでないものが多いから読んでいきたい!


おしまい

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