公演1カ月前の学生達へ
公演まであと1カ月。
そろそろやんなきゃなあ、と思いながら、気が重いと感じている人も多いだろう。寒いし、雪だし、コロナ感染で休んだり、勉強もしなきゃなんないし、部活行っても人あつまらないし、なんか楽しく無いし、面倒くさいし、家帰って炬燵の中でゲームしたい。
まあ、確かにそうだ。
で、根源的な疑問が湧いてくる。なんで演劇なんか、公演なんか、芝居なんか、部活なんかやってんのか。やる意味あんのか?
答えを教えてあげよう。
「そんなものは無い」
生きる意味なんて無いし誰も答えられないのと同じように演劇だって部活だってなんとなくやるものなのだ。
だが、それでは話が終わってしまうので、高校45年生である私が少し思う所を言う。
勉強や特に個人競技は自分にフォーカスされる。 自分ががんばれば、結果が出る(出ない事もあるが)、基本自分の事だけ考えればいい。 あと、道筋や答えと方法が提示されているから、その意味で迷いはない。ひたすら頑張れば、結果が出る。(出ない事もあるが)
しかし演劇は違う。 完成形が見えない。完成形、つまり目的地は公演ごとに毎回自分達で作らなければならない。 そして方法も自分達で考えなければならない。 大変だ。迷う。ベストの解法を出すには自分達が何をすればいいのかわからない。
また、参加者が一人ではない。複数の関係者と協業して協力して討論していかなければならない。 自分の思ったように他人は動いてくれない。 他人からは思った以外の事を要求される。 ぶつかる。面倒くさい。喧嘩になる。 喧嘩は避けたい。君たちは今までの人生の中でそのような自由度と衝突は殆どしてこなかったと思う。
そして皆が集まれないから練習ができない、とか、方針が決まらないから進められない、とか思った物が作れない、とか言う障害も出る。
自分の力で対策ができない、となったら「できません」で済ませていた。
他の事ではそれで済まされる。できません、で済む。
だが、芝居は「できない」では形にならない。どんな方法であれ「できる」ようにしなければならない。
このような経験は皆してこなかった。未経験。
だが、だからいいのだ。
やった事がないから得点は0点だ。だからやればやっただけ得点は上がるのだ。最初から上手になんか出来るわけが無い。そして、一生でこんな機会は多分今しかない。卒業しても進学しても遊びでも仕事をしても複数でこんな人数でプロジェクトを組んで大きな事をやる事なんかほぼ無いのだ。そして目的が自分以外の所にある。 公演の成功、という目的を常に考えなければならない。では、目的を達するためには何をすればいいのか?代案は無いのか?を考える。それが大事。 できない、ではなく、やれる方法を考えるのだ。 そしてお客さんに芝居を見てもらって、「凄かった」「面白かった」「感動した」って言ってもらうのだ。確かに一人ではそんな面倒くさい事は続けられない。だが、チームではできる筈だ。そのための部活なのだ。そしてプロジェクトの成功のため、自分が行動すれば、その分成功がより良いものになる。
一人の人間は一人の物でしかないが、チームを組んだ人間は一人の人間を超えた大きな物になれるのだ。 それがたとえ1カ月の間だったとしても、一人の人間を超えた大きな存在になれる。
こんな経験はまたとない。そして、その経験は絶対に今後の人生で生きる。
そんな良い所があるのが「公演」だ。
だからこそ山ほどある面倒臭さを乗り越える価値がある。