見出し画像

「聞く力」がもてはやされる世の中での生きにくさ

先日全国から同期が集められ、集合研修が行われた。東北支店以外の同期に会うのは昨年の10月以来だったので、楽しみな気持ちもあった。しかし、私は全体行動が嫌いであるが故に、振り返ってみれば結局一人で過ごしている時間が多かった。

雪国を出て、東京で一泊したのち、別の雪国に行き一週間の研修を終えた。研修を終えて感じたのは、終始同期に混じることができなかったという点だ。大学時代のサークル、今でも交流のある中高の同級生みたいな感じで、他の同期の雰囲気に馴染めないのだ。スマホがあってよかったと思う。一人でいる時はずっとスマホの画面を眺めていた。

同期たちと一週間を過ごして、なぜ私が混じれないと感じるのか、理由は誰しもが自分のことを話したい!という状態になっていたからだと思う。私自身も聞いて聞いて状態に陥っていた。それぞれの現場に配属されておおよそ半年。全員が自分の経験したことに少しずつ自信がつき、プライドが出来始めた頃だ。嬉しかったことやムカついたことを共有したい気持ちが痛いほど伝わった。

特にそれを感じたのは4日目の打設検討に関する研修の時だ。6〜7人のグループごとに、課題として提示された狭小敷地で打設の計画を行う。最初にグループ内で話し合い、意見をまとめる時間が取られ、その後にひとグループずつ発表をしていった。みんな同じ施工管理の仕事をしているわけだから、大体同じ考えになりそうなものなのだが、現実私のグループ内では全然意見がまとまらなかったのだ。

生コン車に何m3の生コンが入るのかにすら、4というものもいれば、4.25という子もいた。私は個人的に現場が4m3とい点や計算のしやすさを考えて、4が良いと言ったのだが、結局東京の子に押し切られて4.25になった。話始めは全員「私の現場では〜」だった。誰もグループの司会をしない中、私がほとんどその仕事をしていたのだが、何回か「ヒートアップしているところごめんだけど、今回は『実際』をいくら考えてもわからないし、一つの課題として考えよう?」と言った記憶がある。それほどみんな各自の現場で習ったことを無理にでも当てはめようとしていることを感じたからだ。

私は本当に興味を持ったこと以外聞くのが苦痛だと思う人間だ。これが馴染めない理由の一端になっていることは重々承知なのだが、直そうと思って治せるものではないためどうしようもないと半ば諦めている。だが、人が話している時に無理やり割り込んで話を脱線させるのは失礼なとこだとわかっているから、「まじかあ」とか「うそー」とか言って誤魔化しているのだ。

みんなと話してうても、誰しもがその話題から自分のことに方向転換しようとしていることが感じ取れるから余計話しづらい。女子は特に顕著である。人間は結局自分の話をしたい生き物だ。その特性は原始時代にまで遡ると聞いたことがある。人類は群れで生きており、その歴史の中では、ほとんどが村八分になることはつまり死ぬことを意味していた。その中で自分がいかに所属する群れに利益をもたらすことができるのか、アピールすることが重要であった。何万何の間に培われたその習性が、今日まで続いているのだと以前知った。

もちろん人の話を聞くことも生き残る上で大切だったのだろうが、人の話を聞きたいのは自分に関連がありそうだと判断した時限定だったのではないか。その点から言えば、私は東北支店の同期が話す彼らの現場のことについては比較的興味深く聞いている。東北支店内だと自分に影響がある可能性が高いと無意識に判断しているからかもしれない。

この点から考えると、「聞く力」を持つ人というのは、想像力が豊かな人のことだと思う。人の話す内容から、同じ状況に自分が置かれた状況を想像できる人であれば、興味深く他人の話す内容を聞くことができるのではないだろうか。残念ながら私はそれが苦手だ。

他人の経験を自分に重ねることが苦手な想像力ない人は、どうすれば「聞く力」を手に入れることができるか考える。「聞く力」を、自分側から見たときに①興味深く聞けるか、と話す側から見て②気持ちよく話させることができるか、の2点に分解して考えると解決の糸口が見えてくるのではないだろうか。

つまり、②の「相手に気持ちよく話をさせる」に集中すれば良いだけなのだが、これはどうも接待になってしまう。上司や仕事の関係者に行う分にはなんとも思わないが、同期や友達に会話の接待を行う必要があるのだろうか。円滑な人間関係を築く上では重要かもしれない。

もうひとつ、異なる点から考えると、その人の話に興味を持てば、話す方も相手が聞き入ってくれていると感じとり、さらに話が深化していき、聞き手はさらに面白いと感じる、というプラスのループが発生することが一番望ましい。だから最初は接待とか考えないで、心から相手の話を注意深く聞くように心がけたいと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?