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015 | 夫婦間における愛の適温

だいぶ前に下書きとして残してて中途半端だったものを重い腰をあげて書いてみました。というのも、私と母親のくだりを書くのが当時はしんどくてそこでずっと止まっていたのです・・・。あえて前書きからそのまま残してみます。

半年くらい?いやもっと?note放置して読書に耽ってました。
いや、noteに感想書けよ!という感じなのだけど、noteにまとめる前に次の本読んでいて笑
読書メーターにはちゃんと記録しております。
最後の更新から、梨木香歩さんの椿宿の辺りで、関連で古事記に興味が出て古事記を読んでみたり、日本ファンタジー(獣の奏者、鹿の王、十二国記)を読んでみたりしています。

さて、今回の久々のnoteは読書記録。
向坂くじらさんの本は以前に詩集を読んでいて、これで2冊目となる。
この本は夫婦、にまつわるエッセイ集で、日常のことを描いているのだが、掘り下げ方や関連した話題への飛び方が面白い。

ほんとうに、全ての章に感想を書きたいくらい面白かったのだけれど、そうすると収拾がつかないので、いくつかピックアップして感想を書いてみたいと思う。

俺は論理的に話したいだけなんだけど、彼女はすぐ感情的になって

著者の考え方がとてもあらわれているエッセイだなと思った。論理 について、深く考えたことなかったけれど、なるほどそうだなと思える部分がたくさん。

よく、論理的であることと客観的事実であることが混同されるけれども、実際のところ、その両者はイコールではない。…

『夫婦間における愛の適温』p.39

このエッセイの根底にあるのはこれであるような気がした。何でこの話題に飛ぶの?!と思っても、作者の論理の立て方により筋道が立っていて、面白い。なるほど、と納得させられるところもたくさんある。でもそれがおしなべてみんなに言える論理かというと、違うと思うのだ。きっと他の人が読んだら、いやここは違うじゃないか、と思うかもしれないけれど、一旦は納得するような。そうか、この人はこう考えているんだ、というのがはっきりとわかるというか。
エッセイを読むというのは、他の人の考え方を身近に知れるいい機会だなと思う。新書とか論文みたいな学術的な意見ではなくて、日常の何気ないことに対する他の人の意見って、なかなか知る機会って意外とないから。

合理的に考えて、死んだほうがマシである

このエッセイは、実はこの本を読んでいて一番納得が言ったというか、ああ、あのときのあれはそう言うことだったのかもしれない、と目から鱗が落ちたような感覚になった。今までずっとモヤモヤしていたことが、スッキリした。
著者は、親友のエスさんから「死にたい」と言われたときに、今まで学んできたカウンセリングの知識がほかの人とは違い通用せず、思わず怒ってしまうというシーンだ。
まるで私と母親を見ているようだった。私も気分の落ち込みがひどいときに母親に「死にたい」とつい漏らしてしまったところ、共感どころか怒られ、しまいには「私もしにたいから一緒に死ぬか」と脅されて?しまった。

著者はこの、自分と他人との間に引かれた線をこえてこのような状態になることを以下のように分析している。

そこで、夫が怒った。おそらく、わたしが悲しんでいることのつらさが限界に達して、気のやさしい男だから、わたしが泣いていると、同じく「自分のことのように」つらいのだ。そしてそのつらさを、「気持ちを入れずに観るか、はなから観なければいいのに、どうしてそうしないのか」とわたしを責めることで、自分から切り離そうとした。

『夫婦間における愛の適温』P54

この部分を読んで、私はものすごく納得したのだった。そうか、母親は怒りたくて怒ったんじゃない、私の辛さが「自分のことのように」つらく、それをなんとか切り離すために怒られたり、脅されたりしたのだと。
これは、たとえば、介護士として他人を介護するのと、身内を介護するのとではしんどさが違う、という話にも通ずる話なのではないか、とも思った。
いつもは他人とほどよい距離感を保って接すことができていても、親しい存在に対してはなかなか難しいこともある。

「いなくなくならなくならないで」を読んだ今、エッセイのこの部分がその小説に通じてる部分あるよな・・・と思った。


いちばんふつうの家のカレーが好きなんだよね

詩集を読んだときも思ったことなのだが、私は、著者の料理をするときの描写がものすごく好きだ。一度このエッセイに書かれているレシピのとおりにカレーを作ってみたい、そんな気持ちに駆られる。

一度スパイスからカレーを作ってみたい、と思い、作ってみたら、スパイスをそろえるのだけが大変で、あとは案外、簡単な工程だった。(玉ねぎをいい感じに飴色に炒めるのは難しいけれど・・・!)
その後、余ったスパイスを適当に調合して鶏肉のカレー炒めなんてのも作ってみた。分量も気にせず目分量で入れたのに、しっかりカレーだった。カレーの味って・・・一体・・・なんなんだ?!?!と思うこの頃です。
何が決め手なんだろう。使ったのはクミン、チリパウダー、コリアンダー、ターメリック、カルダモンだけれど、どれかスパイスを抜いたら、全然カレーじゃなくなるのだろうか・・・。というのもスパイス単体では、あ~~カレーにある香りの一つ!となったり、はたまたこんなさわやかな感じの、カレーにあったっけ?!となったりするのである。それでも混ざって火を通すと、ちゃんとカレーなのである。不思議だ・・・。

向坂くじらさんの本、どれも読みやすく・かつ読み応えがあってとても好きです。これからも追っていきたい・・・!ところで『いなくなくならなくならないで』が書店のどこを探しても見当たらない。頑張って入手します。




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