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009 | ペスト

前書きとして、この本は図書館にすでに返してしまったため、記憶に頼り書いている。おぼろげなところもあるため、その点をご了承ください(もう一回借りれば良かった…)

カミュといえば『異邦人』であるが、コロナ禍になってから急にこの『ペスト』が脚光を浴び、今やカミュといえば『ペスト』という人もいるのではないだろうか。
タイトルは大学時代から知っていたのだが、内容は知らなかったため、なぜコロナ禍になってこんなに脚光を浴びたのか、半ば疑問を抱いていた。

しかし、一度読んでみると、そのことに大いに納得した。『ペスト』はまさに、中世ではなく現代において、伝染病が突如発生したときの市民、行政、医療などの戦いや変化などを描いている作品だからだ。カミュ作品の「不条理」を描いている特徴を考えると、私にとっては『異邦人』よりは『ペスト』のほうが理解しやすかった。

作品は、あくまで客観的に記録として書いた(あるいは、書こうとした)という体で進んでいく。
ペストが突如として現れ、最初は受け入れがたく、半信半疑である状態、その後医師たちは行政に働きかけてロックダウンを行い、市民たちは受け入れがたいが受け入れるしかない、、そしてその状況が続くにつれ変化していく市民たち、疲弊していく医療従事者、不足する人手…。まさにコロナ禍ではないか?と思う状況であった。

医師リウーが主な人物として描かれていて、またその他主要人物も保健隊(今の日本で言う保健所?)の一員として働いている様子が描かれているので、医療従事者がいかに大変なのか、そのことがわかる本でもある。

ただ、私は、この「ペスト」はただ疾病を表しているだけでなく、貧困など、他の単語に置き換えても成り立つような状態だ、と思った。
そう思った一節があるのだが、なにせ図書館に返してしまったので引用ができない(馬鹿です。すみません)
でもその一節を読んだ時私は、あれ…??これ、不景気が続いてる日本における人々にそっくり…?と思ったのである。
(おそらくペストが引き続いたときの人々の状態を描いた一節だと思います)

解説を読んで、まさに、「ペスト」はただ病気だけを表しているのではなく、貧苦や戦争、人間の弱さなどの象徴をそこに見出すことができる、というような一文があり、納得するとともに、これこそが、『ペスト』を普遍的な名作たらしめているのではないか?と思った。

ちなみに、『ペスト』が発表された当初は、第二次世界大戦直後で、人々はそこにナチ占領下のフランスを見出したために人気を博した?ようなことが解説に書かれていたと思う。

今脚光を浴びているのはまさにコロナ禍だからで、おそらく今後も、人々は『ペスト』を読んでそこに違ったものを見出すのではないだろうか。

追伸
私はペストというと中世のイメージで、黒いカラスみたいなマスクと黒いマントを被った医師たち、みたいなイメージしかなかったので、この本を読んでやっぱ現代と中世じゃ全然違うよな〜と思うなどしました。

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