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マンションに長く暮らすと、なぜ生命力が落ちていくのか ~ バージニア・リー・バートンが半世紀前に鳴らした警鐘

もう私の両親は長いこと、マンション暮らしをしている。
その結果、表題のことを実感している。

今のマンションに移る前も、違うマンションに住んでいた。
その頃、私が大学生時代に飼っていた犬(大学のキャンパスに迷い込んできた野良犬だった)を東京に就職するため(会社の寮へ入ることになった)
、その犬を引き取って飼養してくれた。

犬が高齢となり、だいぶ弱り始めた頃、父がたまに山歩きに行く山へ連れていくと、帰りには、見違えるように元気になったらしい。
自然から受ける「何か」を感じたのだろうと話していた。

マンションには「変化」が無いのである。
マンションには四季や日々の天候条件によって、見せる「顔」というものがない。

私が馬を飼っている時、馬のいる場所へ行くと、毎日必ず何かが違う。微妙な天候によって感じる光や風、それに伴う空や木々の色や匂い。
動植物の声、馬のたてがみの流れひとつとっても、それはそれは違う。

ところが、マンションの世界を構築するコンクリートは毎回、ほぼ同じなのである。
どうかすると風も吹かないし、光もあたらない。
当然、虫や鳥も来ない。鳴き声も聞こえない。

***

バージニア・リー・バートンというアメリカの女流作家が描いた「小さいおうち」という絵本を、誰もが一度は手に取ったことがあるだろう。

めくるめく季節の中で、暮らしていた「おうち」は、自然に無機質なコンクリートのビル群に囲まれ、四季どころか、夜か昼かもわからないような世界に取り囲まれ、くたびれ果て、やつれ果てる。

彼女が半世紀前に鳴らした警鐘に耳を貸すことがなかったため、私の両親を始め、多くの人が、精神を蝕まれているのではなかろうか。






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