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#読書

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑭ 他から思われているほど傲慢でも自分勝手でもなく、己をとらえている

*** 「隠れ家」に潜伏していたアンネ以外の7人のうち、少なくとも6人は、アンネに対し、「子ども扱い」するという差別行為を行っていた。 その内、母親とデュッセル氏(日記上の仮称)は、その度合いが酷かった。 アンネがしばしば、「生意気」だとか「傲慢」と捉えられるのは、その差別に対する反発であり、人として当然のことであろう。 しかし、彼女はひとりの人間として、かくもストイックに自己をとらえ、また未来に希望を託していたのだ。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑬ 「突き放す」が「子ども扱いをやめる」ではないこと

「ピム」とは、アンネが日記上で使った父オットーの愛称である。 母親に比べれば、随分と価値観が近いと感じていた父であったが、「子ども扱いをやめようとしている」にも関わらず、その切り口が「勉強をおしえてやらない!」などと依然、子ども扱いの範疇から出ていないことをアンネは嘆いていることがうかがえる。 そして、戦後オットーがアンネに代数を教える機会など、二度とやって来なかった。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑪ 日記のひとつのピークである部分 ~ 巣離れと旅立ち 

この日記が書かれたのは、日記が終わる5か月前のこと。 長い日記の中でも、アンネがひとつの結論めいた決意を記したといってもいい部分かと思う。 一見、両親への反発、特に母親への嫌悪のように思えるかもしれないが、もはや精神的に、そういう段階を遥かに過ぎていることがうかがえる。 つまり、自分を「未熟者あつかい」或いは「子どもあつかい」するという差別に対し、敢然と決別する決意を表明し、また独自のパラダイム(価値観を伴った、物事の見方・捉え方)に従い、より高い理想に向かって旅立つという

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑨ 人間関係と、その問題解決についてのほぼ完成された考察と提案

この日の日記は、とても示唆に富むものである。 歳のいった人間は、幼い者を非常に低く見積もってしまう。自分の子どもについて、それは顕著であるが、この日の日記を読むと、それがいかに相手の尊厳を傷つけるものであるかが判る。 アンネが述べる「愛情」の部分は「人間という存在への尊重」という言葉をあてはめてもよいだろう。 とっても考えさせられ、また反省させられるものである。

書き言葉として素晴らしい~岩波新書「高橋源一郎の飛ぶ教室ーはじまりのことば」

かつて私が作業をしながら愛聴していたのが、NHKラジオ第一放送で月から金までの午前中に放送されていた「すっぴん」という番組だった。 アンカーのアナウンサー以外に、日替わりのパーソナリティーがいて、私は木曜の川島 明が大好きだった。 翌日の金曜が高橋 源一郎だったのだが、一度もこの人のトークを「面白い」と思ったことはなかった。 むしろ金曜の高橋氏の日になるとガックリというのが正直な気持ちだった。 「すっぴん」が放送終了して久しいが、時折SNSの中で高橋氏のエピソードを目にする

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑧ アンネリーゼは成熟し、巣離れをする時季にはいっているのに・・・

脳科学者は「15歳は大人脳」だと言う。 アンネ(本名はアンネリーゼ)はこの時14歳であるが、あと数か月で15歳を迎える。 彼女が少々早熟であることを考えると、見た目は痩せた少女に見えたかもしれないが、中身はもう既に立派な大人なのである。 異性に焦がれ、自分をいつまでも「子ども扱い」する両親から離れる時季を迎えているのに、物理的にも精神的にも、それをさせてもらうことができず、苦しんでいることがうかがえる。 ちなみに「巣離れ」とは鳥がいったん巣を飛び立った後、自分の能力を吟味しな

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑦ プリミティブな人間の幸福に気付く

隠れ家から出られないという環境だったが、幸い屋根裏部屋からは裏の大きなマロニエだけでなく、アムステルダムの市街を見渡すことができた。 自分が愛し始めた人と、何も言葉を交わさずとも、プリミティブ(根源的な)人間の幸せというものを直感として感じ取っていることがうかがえる。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑥ 家族の「子ども扱い」に苦しみ、自己昇華しようとする

洋の東西、時代の新旧を問わず、親や大人による「子ども扱い」という差別や存在に対する敬意の無さは、アンネの日記の中に喝破されている。 しかし、彼女は己に対する厳しい見方を忘れず、その苦しみを越えて自己昇華しようとしている点に、注目すべきであろう。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑤ ミープ・ヒース

アンネ達、8人のユダヤ人をかくまい、手助けしたのは、以下の引用に出てくる4人の一般オランダ市民だった。 もちろん、かくまった事がナチ親衛隊にばれると、自分たちにも命の危険が及んだのである。 私は、特に日記の中にミープ・ヒースという女性の名が頻繁に出てくることに気が付いた。 オーストリアで生まれたミープは幼い頃、実親が貧しく、子どもに十分な栄養を摂らせてやることができなかった為、裕福なオランダ人の家庭に引き取られ育ったという経歴を持っていた。 引き取った先のオランダ人家庭は、ミ

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ③ 性善説

これは、ナチスのSSに連行される約一年前、アンネが14歳の時に書いた日記である。 これはアンネの日記であるから、当然アンネの価値観から綴られたものであることは当然である。 しかし、そのことをいくら差し引いても、少なくとも同居していた二人は、あまりにもアンネに対し、「一人の人格を持った人間に対して」語っているのではなく、「こざかしく未熟な存在」という扱いをしていたことがわかる。 そのことに対し、(誰もがそうであるが)アンネは、日記の中で理路整然と反論を展開しており、それはもっ

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ② しつけの問題

この日の日記を読めば、アンネ・フランクという、ひとりの人間がこの時、どのような問題を抱えていたかが理解できるであろう。 アンネは、これだけ理路整然と物事を見つめ、解釈しそれを整理したうえで記録できる人格を身に付けているのだが、特に母親を始め、他の隠れ家の人物たちが、自分をまるっきり「子ども扱い」をしており、そのことがいかに深く心を傷つけることであるかという警鐘を鳴らしている。 「ナチス・ドイツ」によるユダヤ人迫害から逃れる為に、隠れ家生活をしているにも関わらず、その家族や仲

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補新訂版(文春文庫)」を読む ①

但し書きとして、この表題を見て、まず「amazon」などの書評を読むのは、お薦めしません。 ある特殊な時代の、特殊な環境に置かれたティーン・エージャーの「可哀そうな日記」などといったつくり上げられた先入観は捨てて読んでください。 600ページにも及ぶ、その真髄に触れた時、その中の「人間としての本質と精神」をどれくらい汲み取るかだと思います。 従いまして、読んだ後に「性格が悪い」だとか、「日記そのものが捏造だ」とかいった、様々な思いを持たれても、それはなんら責められるべきこ

心に染み入る言葉 「東洋人は、いつも死を小鳥のように肩に乗せている」~「モリー先生との火曜日」ミッチ・アルボム

生活が良くなったと実感することのひとつは、インターネット。 正解中のあらゆる人の日記、感想、評価、主張、書評などの「考え」を自分の興味関心に沿って取捨選択して読むことができます。 私は今、誰かが動画投稿サイトに投稿してくれたラジオ音声をMP-3としてSDカードに保存し、作業をしながらMP-3プレイヤーで、この音声を聴くことにはまっています。 今、聴いているのは文化放送の「武田鉄矢 今朝の三枚おろし」。 タイトルのごとく、武田氏が読んだ本を自分なりに解釈して伝えてくれると

The talent of JRR Tolkien, famous for "The Lord of the Rings," was trained in his single-mother home education. His mother died prematurely, unaware of Tolkien's glory.

I don't think it's necessary to tell anyone about the worldwide hits of the movie The Hobbit's Adventures and The Lord of the Rings series. However, I don't think much is known about the original author, JRR (John Ronald Lowell) Tolkien. In