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最近行方不明者が多発しているという「神呑森」についての1コラム

どうも。民俗学者をやっているネクタイデカスギと申します。
本当はあった怖い儀式」シリーズや、「日本の秘祭36」、
実録映像 んにゃぴ」「投稿映像 かんのみほ」「投稿映像 ふたいたい」「戦慄映像 みうらさん」などの映像シリーズなどで
既に私の名前をご存じの方も多いでしょうが、
この度(8月28日)、テレビ下北沢の特別番組
心霊現象194連発」に出演させていただきましたうえ、
それに関するコラムの執筆依頼を週刊淫夢様にいただきました。
えーなので、書かせていただこうと思います。
去年と同じですね。1年に1本というのは申し訳ないのでもっと書きたいところですが、今回はこれでひとつお許しを。


神呑森とは何かの紹介

知らない方も多いと思いますので、最初にそれを説明いたします。
「神呑森」は関東近郊の山奥、Y県山間部に存在する森林です。
下北沢からだと…車では2時間から3時間、
死ぬ気で飛ばせば1時間ぐらいで着くでしょうか。対向車も少ないですし。
ただあの辺、崖も多いです。スピード出すのはお勧めしませんよ。
電車とバスならJR中央本線とY県の県営バスでかなり近くまで行けます。
そっちの方が時間はかかりますが、お勧めできますね。
一応駐車場もあるので車もOKです。
で、神呑森ですが、地元住民から「神隠しの森」って呼ばれてるんです。
興味が出てきました?こんなコーナー読んでるんだから当然か(笑)
あなたの期待通りのエピソードがぞろぞろ出てきましたよ。
あ、言い忘れてましたね。私、先日行ってきたんですよ。神呑森。
現地では近くに住んでいるというお年寄りの方から話を聞けたりしてですね、大変有意義な取材になりました。
今日はそれについても触れていきます。

神呑森で多発している行方不明事件

私がY県に目を付けたそもそもの理由は、ここ数年、
日本全体で見た時のY県の行方不明者数がやたら多かったことです。
全国の行方不明者数は7万9218人(前年比2196人増加)だと警察庁の資料に
ありますが、私が警察筋から独自に入手した情報によると、
なんとその内の1割がY県だと言うのです。
8000人近くが?そう思い、気になった私はジャーナリストの同僚、
緩次郎氏に協力を依頼しました。
Twitter(現X)のDMで質問してから数日、
氏から返ってきたコメントは「一杯…一杯、ご覧?」というもの。
一体何が一杯なのか。
私は送られてきた資料に目を通し、目を見張りました。
Y県の行方不明者数は多い。しかしそれ以上に、その内の2割、
1600人以上が神呑森で消息を絶っていたのです。
たかが一つの森で1600人ですよ?
富士の青木ヶ原樹海(ここにも前行きましたが静かなものでした)だって
ここまで行方不明者は出ていないのではないでしょうか。
出ているでしょうか?うーん、分からない。
ともかく、私と緩次郎氏は更なる調査のため、直接神呑森を
訪れる運びとなったのです。

「神が呑む森」を訪れた感想

もう最初からズバリ言います。普通です。
何ともありませんでした(笑)
いやぁ~期待外れでしたね。
確かに暗く、樹海って感じはしていましたが、道はしっかりしていて、
別段荒れてもいませんでした。
歩きやすいし、複雑に細い道へ分岐したりもしてない。
地元の人が掃除してるのかってぐらい綺麗でしたね。
ゴミが捨てられてるとかもない。綺麗なものです。
青木ヶ原では沢山ゴミを見つけたので、驚きましたよ。
神様が呑んじゃったんですかね?(笑)
ゴミなんて食べる神様いなさそうですが、日本は多神教、
八百万(やおよろず)の神々がいる国ですし、
そういうこともあるのかもしれません。
何でも食べる、呑み込む、大喰らいの神様とかいそうですもんね。
他にもこのことに関して私が考えたことがあって、それは後で書きます。

現地住民から聞いた話

7時に下北沢駅周辺で緩次郎氏と待ち合わせし、神呑森に着いたのが朝9時。
それで、森の中を行ったり来たりして…とにかく何も起きない!
蒸し暑くもないし静かで涼しい、避暑地にはピッタリですね。
実際にあの近くには昭和60年代、バブルの頃に、別荘地として
かなり数のコテージやらペンションやらが建っていたそうです。
(利用客の減少からかは分かりませんが、今では全て取り壊されているので廃墟も残っていません。廃墟愛好家の方は残念でしょうね)
そこの住民たちは神呑森で夏を涼しんだんでしょうねぇ、ええ。
私もその時代にバブリーな人生を送りたかったものですよ。
あの森の中にいると、時間を忘れるというか…
ずっとあそこに居たくなるような安心感がありましてね。
緩次郎氏なんか「最高…出力を…」とかいってよがってましたよ。
おっと、愚痴は控えめに。編集さんに怒られちゃいますからね。
で、14時ごろに森を出たわけです。
もうこんな時間か、とか言い合いながら駐車場に向かって歩いていると、
血相を変えて一人のお婆さんが駆け寄ってきたんですね。
「お前らー!あの森に入るんか!」って。
緩次郎氏が「先(さっき)、森に入っちゃった」って言うとお婆さんはガックリ肩を落として、
「あんたら…分かっとるんか?あの森はずぅっと前に呪われた森じゃあ。
入るなんてとんでもねぇ」って言うんです。
これは面白い話が聞けるかもしれないぞ、と。
私の民俗学者としての好奇心がムクムクムクッ!と沸き上がりました。
それでそのお婆さんにお願いして、お婆さんのお宅に上がらせていただいてから、お話を聞かせていただいたんです。
インタビュー記録をここに掲載する許可も頂きました。
「多くの人にあの森の危険さを伝えるため」だそうです。

インタビュー記録

<記録開始>

私:それでは記録を始めます。あなたのお名前は?

三浦氏:あたしんところは古くから三浦とだけ呼ばれてる。名前は聞かんでええでしょう、記者さん。森のことについて話をさせてくれ。

私:えー、まあ記者じゃなくて…うーん、記者でいいか。お聞きします。どういったお仕事などをされていらっしゃいますか?

三浦氏:だから聞かんでええに…寺じゃ。うちの息子や孫もみぃんな寺の職に就いとる。孫の一人だけは生意気ん子で、大学行くんじゃ言うて東京に行きおったが…

私:インタビュー対象の情報があった方が読み手も信頼してくれるんですよ。何も情報がない匿名のAさんに聞いた話なんて、今のネット時代、誰も信じてくれないんです。

三浦氏:そないなもんかのう。

私:そないなもんです。さて、「神呑森」についてですが。

三浦氏:(急に身を乗り出して)あの森は呪われとる!今じゃタドコロ様もおらんくなった。みんないなくなったんじゃ!なのに次から次へと、こう余所者どもめが…夏場のウジの湧くようにやって来おる!

私:タドコロ様?

三浦氏:なんじゃ、知らんのか。(勢いを削がれたのか座る)昔ここにあった村に祀られとった神さんじゃ。外との交流を絶っておった村じゃったから、村の名前はない。だけんど、タドコロ様の名前は周りの村々にも知られておった。優しいとはいかんくとも、祈りを捧げれば雨も降らせ、作物は実り、子供は生まれる。別の村からわざわざ移住してくるもんもおったほどじゃった。

私:土着信仰でしょうか。随分信頼されていたんですね、その「タドコロ様」は。それが「いなくなった」…というのは?

三浦氏:…タドコロ様は、篤く信仰されておった。それはそれは立派な神社が建てられ、住民は毎日拝みに行っておったそうじゃ。だけんど、ある日タドコロ様はお隠れになられた。加護が消え、村は未曽有の不作に見舞われた。元より周りの村と交易などしておらんかった村じゃ、これは存続の危機だ、と村の有力者たちは集まって寄合を開いた。

私:それから?

三浦氏:それから…(しばらく押し黙る)それから、村の者どもは生贄を捧げ始めた。なんとも、村の外から来た「ヒラノ」という祈祷師様の助言だったそうな。…その祈祷師も、悪気はなかったんじゃろう。江戸の世、農業の知識なんぞなかった。それがその時代の最良の手段だったんじゃ。

私:でも、上手くいかなかった。そうなんですね?

三浦氏:そう。むしろ悪くなった。生贄が捧げられるようになってから、村の健康だったもんまで消えるようになった。村を出たと陰で噂もされたが、外と交流の無い村のことじゃ。そんなことはまず無い。こりゃ神隠しだと、村のもんどもは生贄を続けたが、どんどんいなくなる。渋々、村丸ごと村民は周りへ移住したんじゃ。

私:一体なんでだったんでしょうね、それ。

三浦氏:分からん。タドコロ様はそんなことをする神様と違った。考えられるのは、「空き」に悪いもんが寄ってきたか、それとも…

私:それとも?

三浦氏:こんな婆ぁの考えなんぞ言ったってしゃあない。それより森じゃ。今は何がいるにせよ、ろくなもんじゃない。入らん方がいい。昼間はまだええ。お天道さんが見とる。夜は何も見とらん。誰も止めん。ふらふらっと入ってく者が今でも居よるけん、こうして止めて回っとるんじゃ。

私:なるほど。ちなみに、三浦さんはその村に住んでいた方のご子孫…だったりなさるんですか?

三浦氏:いんや、違う。あたしゃそこの…(斜め前方を指差す)あっちの方の村に越してきた寺の、そこの娘じゃ。越してきたと言っても江戸の話じゃけんど。元から住んでたもんとは違ぁが、ちょうどここの村の連中がぞろぞろとやって来るところを、ご先祖さんが見てたんじゃ。どいつもこいつも、生気を吸い取られたような顔をしとったそうで。それからずっと、あの森に入ったらいかんということを近くの村々じゃ語り継いどる。

私:分かりました。長々とありがとうございました。

三浦:構わんよ。あの森に入っておらんくなるもんが1人でも減るなら。

<記録終了>

何故森に入った人がいなくなるのか?

ここからは、何故森に入った人がいなくなるかに関する私の考察を書かせていただこうと思います。
1年で1600人。届け出が出ていないだけで、もっといるかもしれない。
それほどの人が、どうして皆揃って行方不明になるのか?
そもそも何をしに森へ入っているのか、から考えていきます。

  1. 自殺をするため入った

  2. キャンプや森歩き、野宿をしに入った(近くに山はあるが、旅館もあるので登山客は考えないものとする)

  3. 森で消息を絶ってからどこかへ行った

  4. その他

①自殺者が森に入った説

これは皆さんが一番有力だと思っている説でしょうが、実際に神呑森に入った私から言わせて頂くと、一番「無い」説です。
何故か?どこにも死体がないから。
これは余りにも大きな根拠です。
「青木ヶ原にだって死体はないぞ」と仰る方、それは適宜回収されているからなんです。
警察筋の協力者は「神呑森で遺体を回収したことは過去1度も無い」と断言していました。なら、自殺者がいるのに死体がないというのは理屈が通りません。野生動物が食べている?それについては少しだけ後で。

②キャンプや野宿など、森で過ごすために入った説

なら何故、森から出てこないで消えてしまうのでしょうか。
ずっと森で過ごしていると考えるのは無理があります。
あの森には驚くほど生き物がいないのです。生き物が動いて茂みがカサカサいう音も、鳥がピーチク鳴く声も。
木の枝が動いて葉が擦れ合う音も、殆ど聞こえませんでした。
今から考えると恐ろしいぐらいです。
あの森に生きている動物はいるのか?と思うぐらいの静けさでした。
①で出した説のように、自殺者の遺体だけを食べている肉食獣がいるなら、
もしかしてあり得るかもしれません。
ただそれでも、キャンプ客なら火を使うでしょうし、
自殺者相手でも、1人残らず喰われるというのは納得がいきません。
1人ぐらい怯えて逃げかえって来る人がいそうなものです。
相当な肉食獣がいるなら別ですが。
追記:緩次郎氏の別調べに曰く「猟友会は一杯ギロチン…ヒヤシンス!(情報がゼロ、冷えているの意)」とのこと。猟友会に情報が行かない猛獣というと、余程頭がいいクマか何かがいるのでしょうか?

③森で消息を絶ってからどこかへ行った説

これも謎。裏社会関係の人間だけがいなくなるなら分かりますが、
行方不明者の多くは一般人です。そんな高度なことが出来るでしょうか?
だいたい神呑森に行くのだって一苦労です。
Y県営バスはかなり近くまで行きますが、利用する人は少ない。「神呑森の行方不明者が多い」という記録の大部分は、このバスの利用者記録から分かったことです。
そんなことをするぐらいなら自宅から徒歩で消えた方がよっぽど足跡を消せるってものでしょう。違いますか?

④その他

ぶっちゃけ、自殺にしたってキャンプにしたって神呑森を選ぶ理由は謎でしかないんですよ。
ネット上で有名なわけでもないでしょう?神呑森って。
そりゃそうです。国土地理院の地図には現在、神呑森は載っていません。
グーグルマップにも。画像という意味ならグーグルアースには写っているでしょうが、地名は出てこないと思います。
そんな場所を選んでわざわざ出かけに行きますかね?
私が自殺者なら、どこかも分からないような森の中で一人寂しく人生を終えようなんて思いません。
だから、そもそも神呑森に行く理由自体が分からないんです。
オカルト好きであろうあなただって知らなかったでしょう?

終わりに

そんなこんなで、もう夕方になってから緩次郎氏と私は引き上げました。
帰り際、バックミラーに何か映ったような…なんて、冗談ですよ。
本当に何もいない、静かな森でしたから。
ただその静かさが不気味でもありました。森にいる間は、むしろ心地よかったんですけどね。緩次郎さんなんか「我慢できぬ!」とか言って服ぬぎ始めちゃったりしてて。森林浴ってやつですね。
結論としては、「神呑森で行方不明者が多い理由は不明」といったところです。記事としては曖昧な結論になってしまい申し訳ないですが、これ以上は私の手に余ります。勝手ながら取材を打ち切らせて頂きました。
少しでも、皆さんの背筋に冷たいものを感じさせられたならホラー専門のライター(本業は民俗学者ですが)の端くれとして幸いです。
今回のコラムはこれにて終了です。
わざわざこのページをご覧いただき、ありがとうございました。
これをお読みの画面の前のあなたも、是非神呑森に行ってみては絶対行くな絶対にいくな。絶対にいくなどうでしょうか。
ください。

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