ダブルキャストとオタクの性 ミュージカル フランケンシュタイン


はい、記念すべき1つ目の感想記事は『フランケンシュタイン』です!この演目はDVDも発売されましたし、円盤から知ったって人もちらほらいたりするんでしょうか。とにかく、私はこれを劇場で見たことでダブルキャストの面白さとお芝居の奥深さを知ることになりました。
記事の題名はなんかちょっとカッコイイけど、中身は全然そんなことなく、私以外が読んでも仕方のない思い出話です。あと、なんでここまで熱狂する人が多かったのかについても最後に書きました。

2020/2/20 梅田芸術劇場 運命の日に運命の場所で

この日、わたしは初めて1日に同じ演目を2公演観た。この日は体力的にではなく精神的に非常に疲れた。良い意味で。
舞台上から伝わってくるものの情報量、圧、熱、そして同じなのに昼と夜で全く異なるキャラクターとストーリー

率直に言って最高すぎた。

これまで私は「1つの演目を1度だけ観る」ということが多かった。学生にとってミュージカルのチケットはやっぱり高い。そのため身分相応の観劇を楽しんでいたのだ。
しかし今回はビクター役の2人両方が気になっていたので2公演見ることにした。同じ日に詰め込んだのは劇場までの交通費を少しでも節約したかったから。だけどその貧乏精神が思いもよらない良い結果を生んでくれたのだった。


ソワレ放棄未遂と貧乏性

だが「最高すぎた」と上では言いつつも、私はマチネを見終わった時点ではソワレを見ずに帰ろうとしていた。なぜか。あまりにも暗く重いストーリーとバタバタ死んでいったキャラクターたち、そしてどうにもならない虚無感に心を抉られてしまったからだ。
「こんなに誰も幸せにならない話ある!?」
これがマチネ後に最初に浮かんだ感想だった。

「もういい…疲れた…これをこの後もう1回見るなんて無理だ……」
フラフラと大阪駅への道を歩きつつそんなことを考える。
しかしここでまた貧乏性発動。
「いや、でもチケット代無駄にするの超もったいなくない?今から引き取ってくれる人は多分見つからないし、空席作るのも申し訳ない  …ソワレも見るしかない」
そう思いなおし、適当に近くのカフェに入ってソワレまでの時間を潰した。

そして再び戻ってきた梅田芸術劇場。
マチネはオケピ考慮3列どセンターという良席だったが、ソワレは2階6列上手ブロック。正直言ってあまり見やすい席ではない。
「マチネとは見え方全然違うな… でも相変わらず椅子は気持ちいいし…寝ないように集中しないと」
気合いを入れて見始めた公演だった。だが始まってみればなんのことはない。マチネとは全く違うキャラクターによって紡がれる全く違うストーリーを私は食い入るように見つめた。

そしてソワレ観劇後の一発目の感想
「フランケン最高!!!!今日見に来てよかった!!!ソワレ放棄しなくてよかった!!!!」


闇のかきこに 光のあきかず

フランケンゾンビがよく発する言葉に「闇のかきこに 光のあきかず」がある。
その日のマチネはかきこに、ソワレはあきかずだった。
ここまで言えばフランケン履修済みの人は私のマチソワがどれほど情緒ジェットコースターだったかおわかりだろう。
私がマチネで心をやられたのは闇ペアだったから。そしてソワレは正反対の光ペア。この両極端なキャラクターによる真逆のストーリーは私の心をつかんで離さなかった

「なんて面白いんだろう!同じ登場人物で同じ話をしているのに何もかもが違う。メイン2人の役者が違うだけでこんなに変わるだなんてすごい!」

かくして私も名誉ある(?)フランケンゾンビの一員となった。


フランケンの持つ隙間とそこに入り込んだもの

この演目のテーマは「人間と怪物の違い」や「人の愚かさ」、「愛」など使い古されたものが多い。
しかし、『フランケンシュタイン』という演目、ダブルキャストというシステム、そしてオタクの性、この3つが組み合わさることで新しい魅力や熱狂が生まれていたようにも感じられた。

オブラートに包まず言わせてもらうと『フランケンシュタイン』の脚本には荒が多い。ストーリーはキャラクターたちの回想を軸に成り立っているため過去と現在を行ったり来たりする。そしてキャラクターの心情や行動の変化、場面の転換も急な部分が目立ち、なんの予習もしていない初見だと話についていくのが難しい。
この点だけを見るとフランケンはちょっとアレな作品だと思われてしまうかもしれない。しかし、演劇とは脚本と演出がすべてではない。
作品の隙間を真っ先に埋めるのが役者だ。隙間が多いということは想像の余地が多いということ。そしてこの演目ではメインの2役はそれぞれ2人の俳優によって演じられた。彼らは想像し創造することで同じにも関わらず全く異なるキャラクターを生み出した。まずはこれによりストーリーと登場人物の性質が補完・補強された。
そしてもう一つの欠かせない要素が観客である。私たち観客は舞台上の出来事を見て想像を膨らませることが大好きだ。そしてこの演目は想像の余地である隙間と、役者ごとの役柄の違いをすでに持っている。ここに想像し解釈をこねくり回して考察することが大好きな演劇オタクが合わさったら…。
もうこれはビッグバンと言っても過言ではないです。運命のマチソワ後にTwitterでフランケンの感想を即検索。するとあるわあるわ大量のツイートが。キャラの心情や生い立ちを想像し、役者による違いを比較し、各曲の同じ部分を見つけ出し、歌詞も全部書き起こして、日替わりネタも欠かさずまとめて…。ここまでたくさんのオタクのツイートを見たのは初めてだったかもしれない。どんだけみんな熱心やねん。だけどそれほどまでに、フランケンの脚本の隙間とダブルキャストによる違い、オタクによる想像と考察には高い親和性があったようです。フランケン、楽しい。フランケン、最高。


具体的なことには何一つ触れてないのに結構な字数書いてしまいました。各ペアの感想とかは次の記事から順次書いていけたらいいな。

この記事公開した数ヶ月後
めっちゃ今更な追記ですが、学校の課題との兼ね合いでフランケン関連のことほとんど書けなくなっちゃいました… 縛りが完全に無くなったらいつか書くかも

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