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10年前のサカつくに人生を吸われる話

筆の遅さとやりたいことの多さを考えれば自分がnoteを書くのに向いてるような人間とはとても思えないんだけれど、実家に帰る度に掘り起こしては進めたゲームに奪われた時間が完全に無駄になるのが惜しい。そういうわけで、俺が「サカつくDS ワールドチャレンジ2010」の何にそんなに入れ込んだのか考えてみたい。

なぜ人はサッカーゲームをするのか? 

 サッカーゲームをやる一番の動機といえばやはり「サッカーが好き」じゃなかろうか。中学時代にクラスメイトのサッカー部連中が挙ってウイイレをやりながら海外のリーグについて話していたのを覚えている。ところが俺はというと、サッカーがそんなに好きというわけでもない。小さい頃から典型的な運動音痴だったから球技への苦手意識が強く、自分で球を蹴ったのはほぼ学校の授業の中だけだ。別に自分で蹴るだけがサッカーではないだろうけど、生憎観るときもそこまで熱は入らない。

サッカーに興味がなくても面白いサッカーゲームというのもあるだろう。パワプロやプロスピがゲームとして面白くてはまり、後から野球を知る人だってたくさんいる。しかし、サカつく2010にそこまでの面白みがあるのかと問われれば答えに窮する。この作品に爆発的な人気はない。少なくとも俺の身の回りにはこのゲームをやったことある人間はいない。面白さに人気が伴わないコンテンツなんてこの世にごまんとあるという意見も聞こえるが、まあ少しこのゲームの概要を聞いてほしい。この作品の人気がない理由はわりかしはっきりしているんだ。

ウイイレだと思った? 残念でした! 

「サッカーゲーム」と言われて多くの人が想像するのは、プレイヤーが直接選手を操作してボールを操るような、所謂ウイニングイレブン的なゲームなんじゃなかろうか。仮にサカつくを知らないながらここまで読んでくださった奇特な読者がいるなら、恐らくサカつくもそういうゲームだと勘違いしているだろう。そして当時、このゲームを近所のゲーム屋で中古で買ってきた俺の弟も同じ勘違いをしていた。違うんだ。このゲームは、蒐集・育成ゲームだったんだ。

詳しい説明は公式サイトに任すとしよう。とりあえず今知っておいてほしいことは、サカつくとはサッカー選手をポケモンが如く集め、レベルを上げ、自分だけのチームを作り上げるゲームだということ。ポケモンと違うのは、選手を直接操作できない部分。大まかな戦略やフォーメーション、選手交代などの指示は出せるものの、基本的に試合中は自分が育てた選手が飛んだり跳ねたりいるのをただただ見るだけだ。これはシリーズを通じてそういう仕様らしい。ロックマンエグゼで例えるのならばバトルチップGPみたいな感じ……伝わるかな? 当然、ウイイレを期待していた弟はすぐに失望して投げ出したけど、捨てる弟がいればそこに拾う兄がいた。さて、ではなぜ俺はこのゲームをやっているんだろう……? 

文字で読むサッカー選手のかっこよさ

ひとつこのゲームの魅力として挙げられる要素があるとすれば、それはサッカー選手への限りない愛である。それは選手自身が語る競技自体への愛とは性質の異なる、サッカーの歴史や偉大な選手に対する礼賛を含んだ、言うなればスポーツ雑誌の記者めいた愛だ。例えば、ゲーム画面の直撮りで申し訳ないけれど次の選手説明を見てほしい。

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かっこいいじゃあないか。サッカーはほぼやったことないし、オランダが強豪国だってことすらこのゲームを始めるまでは知らなかった俺でさえ、この文章に熱いものを感じる。このグラーフという選手はオランダの英雄、ヨハン・クライフを元ネタとしているらしいんだけど、この短さでクライフの偉大さやその精神性を余すことなく表現しているのは凄い。そして、全員とは言わないまでも古今東西の多くの選手にこういった固有の紹介分が書かれているのがさらに凄い。こういうものを読んでいるうちに、たぶんゲーム内の選手が現実の選手と乖離して自分の中でキャラクター化し、色んな選手を蒐集したり育成したりしてみたいと思うようになってしまったんだ。ちょっとアイドル染みているというか、サッカーやサッカー選手の実際を一切見ていない邪道な楽しみ方だとは自覚しているけれど、ゲームシステム上仕方ない気もする。

どうしようもなく果てしない

ところで、思うに世の中のゲームをする人間は大別して2種類存在する。ひとつは、ストーリーをだいたいクリアしてしまったら満足して別のゲームをプレイし始めるタイプ。もうひとつは、とっくにクリアはしているのにアイテムなり称号なりを集めようといつまでもプレイし続けるタイプ。実際にははっきりと2種類に分かれるのではなく、どれくらい前者寄りか、後者寄りかという話だというのは勿論だけど、これに当てはめると俺は完全に後者寄りだ。ここにサカつくがぴったりはまってしまった。

このゲーム、話の大筋と言えるリーグ優勝やワールドレジェンズリーグの制覇は容易いのだけれど、選手集めがそれとは比較にならないほど難しい。ただでさえランダム要素が強く目当ての選手の獲得には時間がかかる上に、レジェンド選手とゲーム内で位置づけられている何人かに関しては指定の選手を用いてリーグ得点王などのタイトルを獲らなければ開放されない。ぴんと来ないかもしれないけど、とにかくまあまあな無理難題を押し付けてくるんだよね。それでもレジェンド選手はひいひい言いながらコンプリートしたんだけど、じゃあ残りの選手集めは楽なのかと言えばそんなことはない。俺の場合はこの時点で作中の選手名鑑はまだ全体の3分の1も埋まっていなかった。だって新規選手は高々2,3試合に1人しか得られないのに、このゲームに収録されている選手数は3900人近くもいるんだもの。

また、若干マイナーかつ微妙に古いゲームゆえに攻略方法がネット上で見つけにくいのも厳しい。こういった育成ゲームは効率の良い手法やより強いステータスの割り振りなどが共有されていることが多いのだけれど、このゲームでは実験的な育成方法を試して途方に暮れているWikiやブログが少し発見できる程度。それの何が辛いって、選手が思ったより強く育たなかったときにそれが育て方のせいなのか元々そういう性能だったのかがいまひとつ分からない。おかげで俺はキミイロミッチ(シニシャ・ミハイロヴィチが元ネタらしい)を3回も獲得しては育てなおす羽目になった。

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で、結局何の意味があるの? 

意味なんかあるわけないじゃん。意味のないことに時間を溶かすのが好きな人間というものはいるもので、運転免許を更新するために実家に帰ったのにサカつくと向き合っていたら瞬く間に数日が経ってしまった。それも最新のですらない、10年前のサカつくが原因なのだ。しかし意味のないことほど、どこにも記録に残りそうにないことほど誰かに喋って笑い話にしたくなるじゃないか。そう思って普段随筆をしたためるような性分ではないにも関わらずわざわざnoteに登録してこの文章を書いてみた。で、書いてみて思ったことがひとつ。

これ書いてる時間が一番人生の無駄だったんじゃねえの? 

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