それでも、声を上げることの大切さ
マジョリティの壁を切り崩すことは大変だ。
どんなことにも言えることだが、こと日本において難民をめぐる問題は深刻だ。名古屋出入国在留管理局の施設で亡くなった、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんへの非人道的な対応が問題視された。このことをきっかけに、(僕も含めて)難民問題に関心を持った方も多いのではないだろうか。近年は「マイスモールランド(監督:川和田恵真)」「FLEE(監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン)」「ミッドナイト・トラベラー(監督:ハッサン・ファジリ)」など、難民に関する素晴らしい作品も公開され、「ああ、こういうことが現実に起こっているのか」と、より強く関心を持った方も多いだろう。
そして、その声は徐々に(本当に少しだけど)政府や法務省に届きつつあるようだ。
2023年3月25日毎日新聞朝刊によると、「出入国在留管理庁は24日、2022年に202人を難民条約上の難民に当たると認定したと発表した」と報じている。2021年は認定数が74人だから、約2.7倍増えた計算になる。
ちなみに難民認定申請者数は3,772人。だから認定率は5.3%※と欧米水準と比べたら低いものの、0.7%だった2021年と比較すると、かなり高くなっている。当然、課題は山積している。上図を作成した認定NPO法人難民支援協会は、3月24日にコメントを出している。(※正確な数値とは限りません。2022年の申請者数および認定数なので、認定申請が全て完了しているわけではないかもなので)
これを読んでいただいて分かる通り、入管庁や政府の対応を何ひとつ評価していない。「懸念」「不十分」「〜は認められない」など、厳しい言葉が並ぶ。
24日に、「難民該当性判断の手引」を公表した入管庁は「手引きによって難民認定の範囲が広がるわけではないが、適正・迅速な認定につなげたい」と、これまでの自分たちの判断は何ら問題がないことを示唆するコメントを出している。申請者の生命や人権に対する視点が欠如していると嘆息してしまうが、これは内部関係者の「メンツ」を守る方便であり、世論にじりじりと押されていることも多少は推察できる。
ここ数年、難民に関する報道をなるべく注視している中で、「声を上げること」の大切さを痛感した。どんなに形勢不利な状況でも、粘り強く声を上げ続け、行動する人たちがいることで救われている人たちがたくさんいるのだ。
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最後に、「疑わしきは申請者の利益に」の原則(通称「灰色の利益」)について紹介したい。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が定めている「難民認定基準ハンドブック」には、こんな文言が記されている。
https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/protect/HB_web.pdf
一部の自民党政治家の言う通り、悪意を持って「自称難民」を主張されている人もいるのだろう。彼らに対して「毅然と対応すべき」というのは、正論のようにも思える。
しかし、はたして本当に3,700人近くの「難民申請が却下された人たち」は、彼らがいうような「毅然と対応すべき」存在だと言えるのだろうか。
そうは言えないだろう。
難民認定基準ハンドブックが認めている通り、難民申請の認定とは非常に難しいものだ。だからこそ「灰色の利益」を頻繁に適用する必要があると記しているのだ。
まだほとんど何も解決していない、日本の難民をめぐる問題。世界情勢が不安定な中、「難民」として生命を脅かされる人たちをゼロにするのは不可能だ。だからこそ日本が、相手に対して敬意を持って接する国であってほしい。
#世界難民の日 は6月20日。
それまでに色々な知見を貯めつつ、自分にできることを実践してみたい。
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