「フリマアプリの次」を探して- 2度目の起業はじめました
最後にnoteを更新してから、既に1年が経ってしまいました。
実は今月で2度目の起業から2年が経過したということもあり、過去を振り返りながら、今の気持ちを書き綴ろうと思います。
フリマアプリとは何だったのか?
2012年に日本で初めてフリマアプリというプロダクトをゼロから立ち上げ、社会人人生の大半をフリル(ラクマ)に費やしました。
フリマアプリというカテゴリ自体が10年経たずして、年間市場規模8,000億(推定)を超える化け物サービスになったこともあり、読者の方にも「モノは捨てずに売る」という習慣や生活の一部を変えたサービスになった人もいるのではないかと思います。
悔しいことに一番初めに誕生したフリマアプリ は僕たちが始めた「フリル(ラクマ)」でしたが、最も世界を変えたのは「メルカリ」であり、退任した今でも「なぜメルカリのようにうまくやれなかったのか?」という心の憂いを抱えています。
我々以上に大規模な資金調達と大きな赤字を許容し、TVCMでは東京の意識高い系の人々だけでなく「地方マイルドヤンキー層・貧困層」などに波及し、PCを持っていない中高生やお小遣い稼ぎの専業主婦などをアクティブ層として取り込んだのも急成長の原動力だったはずです。
サービスを運営していく中で、取扱金額が100億/月を超えた規模になった時に利用者の大半が10代〜30代の若年層(単身、主婦)に集中しており、ユーザーインタビューを通しても「売上を生活費に充当している」「クレジットカードの返済に充てている」など、地方の「貯蓄ゼロ世帯」と呼ばれるお金がない訳ではないが、将来に備えた貯金や金融資産を持たない層とシンクロするなとも感じていました。
プロダクトを創る上でN1を観るようにはしていたつもりでしたが、初めてマスに届いたプロダクトを運営する中で、我々が住んでいる世界こそがイレギュラーであり、フリマアプリを使っている層がマジョリティーなんだという感覚を認識し直すようにもなりました。
女性が服を売るというイシューの解決から始めたフリマアプリの本質が、実は「身の回りのモノをお金に変換する」というFintechだということを理解しつつも、サービスとして突き抜けることができなかったのは自分の最大の責任だと思います。
次の10年をかけられるテーマを探して
退任してからは1ヶ月ほど、何もしない毎日を送ってみたのですが、プレッシャーのない日々に張り合いがなく、メルカリにはなれなかった起業家として、いち早くカムバックしないとという強い飢餓感が勝るようになりました。
とはいえ、1回目の事業よりも大きいことをしたいという呪縛もありつつ、やはりN1からイシューを解くというスタイルが自分には合っているなと思い、身近なテーマから問題解決を始めることにしました。
【エンジェル投資とANGEL PORT】
楽天へのExit後に少しずつエンジェル投資をする傍らで感じた課題を解決したいと思って創ったのが『ANGEL PORT』でした。
N1の行動を観察しつつ、自分自身の課題でもある、エンジェル投資をしているという表明と、ポートフォリオはそっとPRしたい、投資先からもPRして欲しいという隠れた欲求に対して、Twitterのプロフ欄での投資先紹介の説明が代わりになっていることに気付き開発したプロダクトでした。
エンジェル投資家はこれからも増え続けると思いますし、オープンなエンジェル投資家のコミュニティという点では北米のAngelListのような存在が必要だろうと考えてはいたのですが、やはり市井の人(しせいのひと)の問題を解決して、たくさんの人に使ってもらえるプロダクトを作りたいという気持ちが強く、10年掛けて取り組みたい課題かと言われると体重をそこまで乗せることができず、ANGEL PORTは起業家の友人に託すことにしました。
【ロンドンで見たキャッシュレスの未来】
長らくお金にまつわるプロダクトを運営していたこと、最後は「楽天Pay」に「フリル(ラクマ)」の売上をチャージして利用できるという連携を実現できたこともあり、世界で一番キャッシュレスの進んだ国で生活してみようと思い立ちイギリスに行くことにしました。
結論、キャッシュレスが普及した国ではあらゆる支払いが「iPhoneがあれば良い」に集約されており、お金は紙幣ではなくデジタルに移行するんだということを強く認識させられました。
あらゆる飲食店、公共交通機関もキャッシュレス、チャージレスで生活できた体験と、それを主導する決済プレイヤー(チャレンジャーバンク等)のプロダクトに触れられたことは日本においてもタイムマシン的に未来を垣間見れた貴重な体験となりました。
個人的にはフリマアプリが成功した背景にはiPhoneが普及する黎明期にネイティブアプリに全額Betしたことも大きかったなと感じており、このときもサンフランシスコでネイティブアプリに触れた体験が、iPhone3GSが発売したばかりの日本でもアプリの勃興が来るはず、起業するならアプリに賭けようと思えた大きな要因でした。
【お金を管理しない人々、現金を頑張って管理する人々】
自分の手持ちのイシューを横並びにしてみると、やはりフリマアプリはインサイトの塊で、特にその特性からもお金に関するイシューには事欠きませんでした。
特に衝撃だったのはフリマアプリで現金の出品が横行したことでした。
なぜこのようなことが起きたのかについては各ニュース記事が解説してくれているので細かくは言及しませんが、キャッシング枠がない、消費者金融で借りられない、といった事情を抱えた人などがクレジットカードのショッピング枠を使って現金を得たかったのだろうと思います。
額面以上の金額を払っても、今日・明日に現金が必要な人が一定数いるということには驚きました。
ユーザーインタビューを通して、特に借りる側のインサイトとして、クレジットカードの返済は自転車操業になっており、売上を「クレジットカードの返済に充てている」、毎月、分割払いをし続けないとキャッシュフローを維持できないような方もいらっしゃいました。
一方でお金を使いすぎないようにしっかり管理している人もおり、instagramで「無印パスポートケース」と検索すると分かるのですが、アナログな方法で現金主体で管理している人も多数いらっしゃいました。
@___uuta.kakei
@mami_ssy1213
お金を預ける・借りる・管理するサービスは複雑さをプロダクトに内包せざるを得ない構造があります。
この複雑さというものの中には、簡単にする、分かりやすくすることがマネタイズする上で運営側に必ずしもメリットとして働かないため、なかなか改善されないという問題があります。
また、金融機関のサービスはUIが洗練されておらず、家計簿アプリなども金融機関との連携が必要で、ある程度のリテラシーを持っていないと使いこなせないことも関係してくるかと思います。
【10年後の自分の子どもたちへ】
日本のキャッシュレス化がどんどん進むことは不可逆な流れです。
経済産業省が2025年までに「キャッシュレス決済比率40%」という目標を設定しており、「PayPay」のようなQRコード決済事業者がその一端を牽引し始めています。
今や小学生でもスマートフォンを持っている子は大勢おり、中学生であれば、大半の子供がスマートフォンを持っています。
現金の流通が減り、支払いはどんどんデジタルになった10年後の未来で、子ども達はお小遣いを現金でもらったりするでしょうか?
先般の無印のパスポートケースで現金管理する人がいるように、デジタル時代に合わせたお金を管理する方法についてはまだまだ改善の余地が残されています。
難しい課題だと思いますが、「デジタル時代に最適なお金の管理方法を発明する」これこそがフリマアプリを創り、誰でも簡単にお金を稼げるようにした自分が次に取り組むべきテーマではないかと思うようになりました。
日本人が本当に必要とするモバイルバンキング
イギリスではチャレンジャーバンクの台頭を目の当たりにし、北米ではSquareの「Cash App」が非常に躍進しています。イギリスのチャレンジャーバンク大手の「Revolut」が日本進出したのも目新しい動きかと思います。
とはいえ、こういったチャレンジャーバンクが躍進している背景にあるUnbanked層の「銀行口座を保有できない」といった課題は日本人ではほとんど存在しないでしょう。
自分達もチャレンジャーバンクが流行ってるから、デジタルバンキングのサービスをやろうぜ!というつもりは毛頭なく、求められてくるのは「誰もが日々お金を使っているのに、ほとんどの人がそれを正しく把握できていない」、そんな課題を誰でも使えて、継続しやすく、リアルタイムなお金管理の方法だと考えています。
• いくら使ったのか、あといくら使えるのかわかること
• 振り返り、改善のサイクルが回ること
• 意志の力を必要としないこと
• それがキャッシュレス(デジタル)で完結すること
• ユーザーのために作られていること
このような構想のもと、今年の1月にようやく家計簿プリカ「B/43(ビーヨンサン)」というサービスをリリースしました。
「Balance(残高) / 43(予算)」 や「Budget(予算) / 43 (資産)」 を意識して生活できるように、という願いを込めています。
リリースするまでに1年半以上が経過しており、事業を開始する上で必要な金融ライセンス(資金移動業)の取得に長らく時間が掛かりました。
ちなみに日本ではこの免許は80社しか保有していません。
非常にニッチなエントリーポイントですが、初期リリースでは「支出管理アプリ」+「Visaプリペイドカード」と生活の中で特に変動費や生活支出の管理課題を解決できるように設計しています。
ホーム画面では残高と支出の見える化、自動家計簿で支出カテゴリの月次振り返り、予算設定とレポーティングという一連の家計管理が習慣化できるような機能を実装しました。
また、利用用途毎に口座を複数に分けてお金を管理できる機能も実装しており、無印のパスポートケースや封筒で現金を袋分け管理している行為を、スマホで簡単にリプレイスできるようにしています。
銀行のオンラインバンキングにも同じような機能はありますが、資金移動業を駆使して、登録から利用までをスマホで手軽にこの機能を提供しているのは日本初ではないとかと思います。
現在はニッチ向けで、シングルの生活支出管理にフォーカスしてプロダクトを作っていますが、そこに留まらず、パートナーや子供など、家族との家計管理、ゆくゆくは貯蓄、投資といった分野でも問題解決できるようにしていきたいですし、個人でYoutube配信や副業をされている方なども増えており、副業収入の管理といった、個人利用とは違ったビジネスシーンに合わせたカード発行&機能提供も可能性を感じています。
個人的にはここ最近のFintechプレイヤーを取り巻く環境は資金移動業の3類型化、資金移動業者の全銀ネットワークへの参加の検討、特に「給与デジタル支払い(ペイロール)」と呼ばれる、給与を銀行以外が預かることが可能なエポックメイキングな法改正も控えており、資金移動業者の立場からすると、バンキングに近い機能開発の幅が増え、追い風が吹いてきているタイミングだとも思います。
2度目の起業に寄せて
自分は生涯を通して、ユーザーから支持されるサービスを創り続けたいと思っています。
ユーザーインタビューからくる観察を通して、小さなインサイトを拾っては、どういった発明ができるか、事業として継続が可能かなど、考えることは尽きず、プロダクトをリリースした現在も日々、自問自答を繰り返しています。
今回が2度目の起業にはなりますが、解決すべき課題が変われば、創るべきプロダクトも当然変わり、それこそゼロから学び直すことの方が圧倒的に多く、振り返ってみても役に立ったのはとにかくユーザーの声を聞き愚直に観察する泥臭さぐらいじゃないかと感じています。
改めて、これまでの実績など何もなかったかのように、持たざる者として挑戦していき、自分を更新し続け、結果的に多くのユーザーから支持されるような、それこそフリマアプリを超えるようなプロダクト(事業)になるよう頑張りたいと思います。
最後に
ここまでお読み頂いた賢明な読者の方であれば、もうお気付きかもしれませんが、恒例の採用募集となります。
前回の起業で振り返って鑑みることがあれば、やはり総合的なチーム力の差がプロダクトの差としても顕著に現れており、青臭かった自分は、自分が一番ユーザーのことを理解している!一番良いプロダクトを作れば勝てるんや!と思っていましたが、今では「プロダクトを創る」ということはいかにチームの総合力を高めるかと同義だなと強く感じます。
コモディティ化が早期化する時代には、いち早くプロダクトを磨ききって、スケールした方が勝者になります。ただし、プロダクトを磨くという行為は単にコードを書いて、UIを見直して体験やファネルを良くするというだけではなく、マーケティング、Bizdev、CS、バックオフィスそれを可能にする採用力と資金調達力といった総合格闘技であり、いかに改善サイクルを回して、プロダクトを磨き、早くスケールするかに尽きるかなと思います。
今回も新卒の同期であり、フリルの共同創業者でもあるエンジニアの堀井 雄太(双子兄)とデザイナーのtakejuneの3人で起業しています。
もはや10年以上一緒に仕事をしていますが、阿吽の呼吸で仕事ができ、泥臭さを背中で体現するエンジニア、創るだけでなくビジネスまでコミットするデザイナーとして、最高のパートナーかと自負しています。
それもあり、現在のスマートバンクは元Fablic(フリル・ラクマ)のメンバーを中心に、少数精鋭が集まっています。
特に全員がユーザーの問題を解決するという部分において真摯に向き合い、職種を飛び越えて協力できる素晴らしいチームだなと思っています。
このnoteを読んで少しでも話を聞いてみたいと思われた方、プロダクトに興味を持たれた方がいらっしゃれば、以下のNotion採用ページをご覧いただき、カジュアル面談フォームから是非ご応募ください。
緩く話を聞きたいというレベルでも大歓迎です。(副業からの募集も絶賛受け付けております。)
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
今回も「人が欲しがるものを創る」を体現できるよう頑張って参ります。
株式会社スマートバンク
堀井 翔太
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