見出し画像

今の憲法のままで天皇・皇族が辞める方法はあるの?

天皇・皇族を辞める方法はあるか?

 皇室・皇族のあり方についての話題は、このnoteでも既にお馴染みのテーマになってきました。今回は、「天皇・皇族を辞める方法」です。

 日本国憲法は象徴天皇制を規定しています。皇位は世襲ですから、皇室に天皇しかいないのでは困るわけで、世襲ができるためには天皇以外に皇族も存在しなければなりません。

 皇族は生まれながらにして一般国民とは違う扱いを受けるのであり、この点は憲法14条の平等原則の重大な例外を憲法自身が定めていることになります。
 法的にはいろいろな説明の仕方がありますが、皇族には一般国民と同じような基本的人権の保障は及ばない(そもそも「基本的人権の保障がまったくない」のか、「保障はあるが一般国身とは異なる大きな制約を受ける」のかは別として)ことは異存がないでしょう。

 とはいえ、眞子さんの騒動などでも明らかになったように、皇室の人々も私たちと同じ人間です。このような不自由な立場にいる人が、天皇・皇族をやめたくなることもありうるでしょう。そのような場合、どうすれば良いのでしょうか。

天皇の退位の制度

 まず天皇の生前退位自体が可能であることは、既に前例があります。これは「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」という法律で、1回限りのこととして定めていたものなので、現上皇だけが対象であり、今後の天皇には適用されません。
 といっても、現在存在している法令では対応できないというだけのことなので、新たにまた同じような法律を制定したり、さらには皇室典範そのものを改正して、生前退位を例外ではなく恒久的な制度として決めれば良いのです。いずれも国会の決議だけで可能です。天皇が退位した場合は、現上皇と同じような立場になるので、皇族の一員であることには変わりありません。

皇族からの離脱

 それでは、天皇以外の皇族はどうでしょうか。
現在の制度は、皇族女子と皇族男子とでは違ってくるので、以下、説明します。

 まず既に多くの人が知っているように、皇族女子は皇族以外の男性と結婚した時には皇族の身分を離れます。皇族男子は、結婚しても皇族の身分に変動はありません。

 次に、自分の意思で離脱することができるでしょうか。これは皇室典範11条に定めがあります。

 第11条1項 年齢十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。

 「内親王」は天皇の子か孫にあたる皇族女子であることは言うまでもありません。「王」とは天皇の曾孫以下の皇族男子、「女王」は天皇の曾孫以下の皇族女子です。これらの人々は、15歳以上であれば、自分の意思に基づいて皇室会議の議決を経て皇族の身分から離脱できます。

 ここでは親王(天皇の子または孫にあたる皇族男子)が含まれていないことに注意してください。つまり親王は、現在の制度においては、自分の意思では離脱できないことになっているわけです。これは比較的近い将来、天皇または摂政になる可能性があるからと考えれば良いでしょう。
 それではどうにもならないのかといえばそんなことはなく、その制度を改正してしまえば良いだけです。先ほど述べたように、皇室典範は国会の決議だけで改正できるのです。

 このように考えると、憲法にはまったく手をつけないまま、皇室典範を国会決議で改正するだけで、天皇・皇族が自分の意思で皇族から離れることができるようにすることは、理屈のうえでは可能ということになります。

皇族が全員離脱してしまったらどうすれば良い?

 仮定のうえに仮定を重ねて、仮に天皇が退位し、さらに皇位を継承できる立場にある皇族も全員離脱してしまって、皇位継承者がいなくなったとしたらどうすれば良いでしょうか。

 これは前回の記事で触れたように、天皇の代行者=「摂政」の制度を使えば良いのです。
 現在の皇室典範では、摂政は一定の皇族しか就任することができませんが、これを改正し(これも国会決議だけで改正できます)、皇位を継承する者が定まらないときに、一般国民から摂政を選挙で選ぶ「選挙摂政」の制度にすれば、皇族がいなくなっても対応できます。
  選挙された摂政が、そのまま天皇の代行者として、内閣総理大臣や最高裁長官の任命、国会の召集などの国事行為を行えば良いわけです。

今の憲法のままでも天皇・皇族は一般国民になれる

以上、まとめると

①天皇が生前に退位できるようにする
②男女問わず、皇族は自由な意思によって離脱できるようにする
③皇族でない一般国民が選挙によって摂政に就任できるようにする


 これらは、憲法を改正しなくても、国会決議により皇室典範を改正するだけで実現できます。

 これにより、憲法をまったく改正しないままで、天皇・皇族が離脱して存在しなくなってしまっても、選挙で選ばれた人物が摂政として「天皇の代行」となる体制が実現する可能性が出てくるのです。
 ただし憲法自体を改正しない限り、憲法の条文の言葉の中では天皇・皇室が引き続き存在し続けることになります。

★なお冒頭のへたくそなイラストは、例によって私の著作『13歳からの天皇制』の第5章「天皇の基本的人権、国民の基本的人権」の自作扉絵です。

 天皇や皇族の"人権"の問題についてわかりやすく説明していますので、ぜひご一読ください。




 

 

 

よろしければお買い上げいただければ幸いです。面白く参考になる作品をこれからも発表していきたいと思います。