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コロナウイルス危機と憲法(1)

日刊サイゾーの緊急事態宣言インタビュー

 4月15日の日刊サイゾーで私がインタビューを受けた記事が掲載されました。

 この中で私は、コロナウイルスの危機と憲法の関係で、緊急事態宣言を行っても強い手段を取れないのは憲法のせいではない、と述べています。

 コロナ危機になってからのメディアや政治家の論調を見てみると、「憲法のせいで、社会が危機に陥っても強い手段が取れない」という意見がみられるようになり、「憲法を改正して、(憲法上の)緊急事態宣言ができるようにするべきだ」とさえ叫ぶ人もいます。
 
 今回は、日刊サイゾーのインタビューで語り切れなかったことを含めて、「コロナ危機への対処の問題は憲法のせいではない」ということについて説明しましょう。

「私権の制限はできない」というデマ

まず細かい議論に入る前に、
  
  「今の憲法では、コロナ危機で緊急事態宣言を発しても、私権を制限することはできず、自粛要請しかできない。憲法を変えない限り、強制的に営業や人の移動を規制することはできない」

という人がいますが、これは明確にデマですので、だまされないようにご注意ください。このような規制は憲法の問題ではなく、あくまでも法律(特別措置法)の問題です。程度にもよりますが、法律を改正すれば、営業や移動に対する規制は可能です。

今も既に行われている営業や移動の法令による制限

 こういうことは別に今回のコロナ危機の話に限ったことではなく、企業や店舗などの営業の自由を制限する規制は、既に世の中にいくらでも存在しています。つまり現在もすでに「私権の制限」は行われているのです。

 例えば労働安全衛生法では、労働災害の危険がある職場について、労働者の安全を守るため、労働基準監督署長などが、作業や建物使用の停止を命令することができることを定めてます。
 また大気汚染防止法によれば、環境を守るため、排出基準に適合しない施設の使用の停止を都道府県知事が命じることができます。

 現在でも、営業の自由はいろいろな側面で、人の健康や安全を守るなどの目的のため、法律によって制限されているわけです。

 人の移動については直接制限した法令は少ないのですが、感染症予防法では、一定の限られた時間の交通制限が定められています。さらに一定の区域についての通行や立ち入りを禁止する例は、災害対策基本法から道路交通法までさまざまな形で存在しています。

 このように、いま既に移動や営業については、身近なレベルでも法律による制限が様々な局面で、何かしら行われているのです。

憲法ではなく法律の制定でできる営業や移動の制限

 このように考えれば、コロナウイルスのような感染症の危機でも、現在の特別措置法よりも実効性のある法律を制定して、感染拡大防止のため必要な範囲で営業や移動を明確に制限することは、今の憲法のもとでも不可能というわけではありません。(もちろん際限なく制限できるわけではなく、その点は次回で触れます。)

 次回、コロナウイルスのような事態への取り組みと憲法の関係について、さらに立ち入って説明したいと思います。

 (以下、続きます)

よろしければお買い上げいただければ幸いです。面白く参考になる作品をこれからも発表していきたいと思います。