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皇室を支持する層が、二つに分断されている件

二つに分裂した「天皇制支持派」

 皇位継承問題についてはこのnoteでもたびたび取り上げていますが、今回は、世間一般において皇室を支持する層(現時点での日本社会では多数派に属する、いわゆる「天皇制支持層」)の現状について考えてみます。

 大雑把にいえば現在、この皇室を支持する層は、二つに分断されているということができます。

 わりとメディアに出てくる話題に即していうなら「女性天皇・女系天皇容認派(または愛子天皇待望派)」と、「男系死守派」の対立ということになりますが、もう少し動機とか発想の根幹の部分にさかのぼっていうと

1 今の皇室の人々に親しみや敬意を感じるから、結果的に皇室を支持する層
2 神武天皇の子孫だ(とされている)からこそ皇室を支持する層

 の二つに分裂しているのです。

今の天皇皇族に親しみを感じるからこそ支持する人々

 1の層は、皇室、とりわけ天皇一家の(メディアを通じた)姿や言動を見て、そこに親しみや敬意を感じており、それを理由として支持しています。
 もちろん直接接しない限り実際の人柄まではわからないので、あくまでもメディアを通じたイメージではありますが、とにかくそこに親近感などの心情を抱くのです。(とりわけ雅子皇后については、その経歴や皇太子妃時代の様々な苦労やバッシングの経緯もあって、特別な感慨を抱く人も多いと思われます。)

 こういう心情に基づいて皇室を支持し、現在の天皇皇后の子である愛子内親王がそのまま天皇になれば良いと考えるわけです。そして将来的に愛子内親王が仮に結婚して子が産まれたら、さらにそのまま皇位を継いでいけば良いだけと考えるので、女性天皇のみならず女系天皇についても何にも違和感はなく受け入れることになります。

 現在の天皇一家への親近感の延長で、そのまま女性天皇とか女系天皇を受け入れる考え方につながっていくわけです。

現在の皇室を起点にして考える

 この1の人々の大半は、皇室が長い歴史を持つことは当然認識していますが、あくまで現在の天皇皇后などを起点にして考えますから、過去の伝統や歴史について必ずしも厳格に重視すべきだとまで考えているとは限らず、また初代が神武天皇であることが理由で皇室を尊重しているというわけでもありません。
 極端なことをいえばこれらの人々は、仮に皇室の遺伝的系統を科学的にさかのぼった場合に蘇我馬子や藤原道長の血筋とか、または無名の誰かにつながったとしても、あまり気にはしないのではないでしょうか。
 
血統上の祖先が誰であろうと、現在の天皇皇后が天皇皇后であることには変わらないわけで、その現在の天皇皇后(のイメージ)に敬意を感じていることがすべての根源だからです。

 逆にいうとこれらの人々は、仮に尊敬も共感もできないような天皇が現れた場合は、あっさりと容赦なく天皇制廃止とか無用論にかたむく可能性があります。

 この1の層の発想は、天皇の地位が国民の総意に基づくものとした日本国憲法の方向性に割と適合したものだということができるでしょう。

神武天皇を起点にして考える2の人々

 一方2の層は、個々の天皇皇族に敬意や親しみを感じる人ももちろんいるでしょうが、本質はそういう部分ではなく、あくまで(伝説上の)神武天皇の血を引いて皇位を代々継承していることそれ自体が重要だと考えます。現在の天皇が起点になるのではなく、神武天皇がすべての起点なのです。

 この層にとっても、天皇皇族が尊敬されるに越したことはありませんが、極論すれば、尊敬できないような言動や性格の天皇皇族であっても、神武天皇からの系譜がつながっていさえすれば別に構わないということになります。

君主は能力や適性や人柄は不問?

 実際、故・西部邁先生はかつて「君主には能力とか適性は必要ない。能力や適性が必要なら、それに合った人を選挙で選べば良いのだから、君主制にする意味がない。血統で決まるところに君主制の意義がある」という意味のことを言っておられました。
 そもそも現代の立憲君主制では、実際の政治は民主的に選ばれた議会や内閣が決めるのであって、君主は政治判断をするわけではなく、あくまで儀礼的な行為を担当するのですから、能力とか適性とか人柄などはどうでも良く、とにかく血統で正統性が確保できれば他はどうでも良いと考えるわけです。

男系・女系論争との対応関係

 天皇が男系であるべきか女系であるべきかの対立と、この1か2かの区別とは、必ずしもきれいに対応するわけではありませんが、やはり1の層の方が女系天皇容認の傾向が非常に強いと言えるでしょう。正確にいうと、女系天皇そのものを理論的に容認するというより、「今の天皇皇后に親しみを感じるので、その子である愛子内親王、さらにそのまた子に皇位を継承してほしい」という発想です。

 一方2の層の方は、男系で皇位を継承すべきという人が基本的には大半だと思われます。現在に至るまで、神武天皇との男系のつながり(つまり父親⇒祖父⇒曾祖父…と父方を遡っていった場合に、必ず過去の天皇につながり、最後は伝説上は神武天皇につながる)のない天皇は存在しなかったので、それを維持すべきだという発想です。
 ただし2の層の中にも、例外的に、「男系だけでなく女系も含めて、何らかの形で神武天皇とのつながりが存在すれば構わない」と考える論者がいないわけではありませんが、少数派のようです。

親近感や敬意を維持できない君主は存続できるか

 この2の考え方はそれなりに筋はとおっているのですが、現実問題として、「天皇や皇族は、神武天皇と系譜上のつながりさえあれば良い。自分で政治をするわけではないのだから、態度だの適性だのは問題にしなくても良いし、経緯や親しみを感じなくて良い」などというのはかなり一般的感覚とは異なる割り切った考え方であり、ある種の保守思想(?)を学んだ人のマニアックな発想というべきではないでしょうか。

 何の親近感も敬意も感じないような天皇皇族であれば、世間の一般的な人々は、国の費用で皇室を維持運営するのがバカらしくなってきて「何のためにあの人たちのために税金を使ってるんだ」という発想になるのがオチであり(現実問題として、眞子さんの結婚騒動のときにもそのような反応が非常に多く見られました)、それでもなお「神武天皇からつながる血統さえあればいいんだ、人柄はどうでもいい、それが君主制なのだ」などと達観したことを言えるのは、かなりの少数派ではないかと思われます。

 そして民主主義国家では、君主制といえども国民大衆の支持がなければ維持が難しいという現代の状況からすると、いささか難点を抱えているといわねばなりません。

 いずれにしても現在、女性天皇や女系天皇の問題とからみあう形で、いわゆる天皇制支持層は、1の層と2の層とに大きく分裂しているということができるでしょう。この分裂は、皇族の人数確保や皇位継承の議論が進むにつれて、一層激しくなっていくことが予想されます。

 皇位の継承、またこれからの皇室がどうなるかについては、下記の私の著作『13歳からの天皇制』を是非お読みください。


 

 

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