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安倍首相はプラス・マイナス両方の「代弁者」であった件

政治家は有権者の代弁者とされるが・・・

 一般的に、政治家は有権者の代弁者であると言われていて、有権者は自分の思想や利害を代弁したり象徴してくれるような政治家を選び、支持するとされています。
 それでは、安倍首相の場合はどうだったでしょうか。ごく簡単に振り返ってみましょう。

ナショナリズム的な傾向を代弁した安倍首相

 安倍首相が「美しい国」とか「歴史に対する誇り」「改憲」などを語り、ナショナリズム的な意識をアピールしていたことは誰もが知っているでしょう。この意味で、ナショナリズム的な傾向のある人から見れば、安倍首相はまさに代弁者であったということができます。

批判派を代弁したのは誰か?

 これに対して安倍首相に対して批判的な有権者も根強く存在していましたが、こちらは誰が代弁者だったのでしょうか。立憲民主党や共産党など野党の政治家たちが代弁していたのでしょうか。

 私の感覚としては、全体的傾向としてみると、野党政治家は、かならずしも安倍首相に批判的な人々の代弁者とまでは言えなかったように思います。

 そうなると、安倍首相に批判的な人々の代弁者は誰だったのでしょうか。 

安倍首相はマイナスの代弁者でもあった

 ここで発想を少し変えて見る必要があるように思います。安倍首相は、批判派にとってもある意味代弁者だったのではないでしょうか。より正確にいうと「マイナスの代弁者」だったと言えないでしょうか。

 普通、代弁者である政治家は、有権者が思い描く理想、あるべき社会や国の姿、思想、利害を反映した政策などを語り、表現し、象徴する存在です。さきほど書いたように、ナショナリズム的な傾向の人にとっては、安倍首相はまさにその意味で「代弁者」でした。プラスの価値をあらわすわけですから、これを「プラスの代弁者」と呼んでも良いでしょう。

 これに対して批判的な人々にとっては、安倍首相は、社会や国が進むべきでない方向、受け入れられない思想、あるべきでない姿を反映し、表現し、象徴していたと言うべきでしょう。これこそ、まさに「マイナスの代弁者」だったというわけです。

 繰り返すと、野党が批判派の代弁者となったというよりも、安倍首相(安倍自民)が批判派のマイナスの代弁者となったという方が当たっていると思います。
 世論調査で野党の支持率が低く、それでいて選挙の時はそれなりの得票率を得られたのも、これによって説明できるでしょう。
 批判派は、野党に自分たちの考えを代弁してもらいたかったのではなく、自分たちの考えのマイナスの代弁者である安倍自民と対決する手段として野党を使った、ということです。

プラス・マイナス両方の代弁者

 「安倍政権で世論の分断が進んだ」とか「安倍政権に対しては、根強い支持派も、根強い批判派も、両方存在していた」とか言われるのは、まさに安倍首相がプラスとマイナスの両方の代弁者の役割を果たしていたと考えれば、たやすく理解できると思います。
 憲法改正や安保法制で、その対立は非常に明確になりました。

 安倍首相は、支持派にとってはプラスの価値、批判派にとってはマイナスの価値、それぞれを表現する、シンボルのような役割を果たしていたのでしょう。
  そして後継の菅首相は、今のところこのようなシンボル的な役割とは縁が遠いようにも思えますが、評価は今後の話です。


 

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