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Vol.3 「なんで舞台を仕事にしようと思ったんですか?」

ホリプロの舞台制作の部署である公演事業本部ファクトリー部では、今現在約65名の人間が働いています。大きく、①舞台作品を制作・宣伝する制作部と、②舞台チケットの団体セールスをする営業部、③そしてチケットを管理・販売するチケットセンターに分かれていて、グッズを制作する物販チームも制作部に含まれています。

私が入社した2006年頃は、ホリプロが制作していた舞台は年間12本。社員数も、確か今の半分以下だったと思います。ホリプロに来る前は吉本興業という会社におり、宮川大助・花子さんのマネージャーを経験したのち、大阪の劇場でよしもと新喜劇の制作をしていたのですが、東京に異動になったタイミングでもっと演劇の仕事がしたいと思い現職に転職しました。この話はまたの機会に。

編集注:社内ページから拾ってきた梶山P入社時の写真

ロングラン公演のハリー・ポッターも始まり、毎月のように新作舞台を開幕させている我々は、いつも人手が足りていません。なので、定期的に働き手を募集しています。もう応募は締め切ってしまいましたが、つい最近も毎日のように応募者と面接をしていました。最近のリクルート方法は、まず書類選考、そのあとにリモート面談、そして最後に対面での面接という流れです。

私はすべての方にリモートと対面で会うのですが、いつも決まって聞いていることがあります。それは「なんで舞台を仕事にしようと思ったんですか?」という質問。面白いのは、ほとんどの方が舞台をいつのまにか好きになっていた、というのではなく、ある一本の舞台を観ていきなり好きになっていることです。

小さい頃にアニーを観たから、という人、結構多いです。内心は「うちが毎年やってるのはピーターパンだけど、正直でいいね」と思いつつ。もちろんピーターパンに感激して、という方もいます。ある1回の観劇が強烈に心に刻まれて、そのあと別の仕事をしてみたのだけれどやっぱりどうしても舞台の仕事がしたくて応募しました、という人がほとんどです。舞台は生なので、映画や読書よりもインパクトが強いのかもしれません。

他によく聞くのは、「これまで観た舞台で一番好きだった作品は?」という質問。この答えは本当にバラバラです。小劇場が好きな方、ミュージカルが好きな方、劇団四季が大好きな方、歌舞伎が大好きな方など。中には、気を使ってくれているのか、自分が企画した「デスノート」や「生きる」が大好きだったという方もいます。そんな時、自分はなぜか妙に恥ずかしくなり、「あ、そうなんだ」とわざと他人のような態度を取り、表情を変えずに「どの辺がよかったの?」とか聞いてしまうのですが、内心、実は嬉しいです。

かくいう私も、アメリカに留学していた高校2年のときに、自分が通っていた高校が上演した「サウンド・オブ・ミュージック」に、フレンチホルンプレイヤーとして参加し、オケピで演奏したことが、自分の人生を変える出会いとなりました。今でも「サウンド・オブ・ミュージック」は、自分が一番好きなミュージカルです。

先週末、7歳になる娘のバレエの発表会に行きました。実を言うと、彼女がバレエを始めたきっかけは2020年に彼女が観た「ビリーエリオット~リトル・ダンサー~」なんです。あれ以来、彼女はたくさんバレエ公演を観にいき、今ではバレエが一番好きなものになりました。彼女が舞台上で踊っているのを観たときは胸に迫るものがありましたが、このままバレエを続けて、「私、ダンサーになりたい」と言い出したらどうしよう、と不安に思う自分もいます。娘が、自分の職場で踊っているなんて、今は想像できないので。

2020年『ビリー・エリオット~リトルダンサー~』ビリー役キャスト4人と

毎月のように我々は新しい舞台を開幕させていますが、いつ、どこで、誰かの人生を変えているかわからないなーと、つくづく思います。だからこそ、一本一本、丁寧に、手を抜かずにいい舞台を作るのが我々に課せられた役目なのだと思います。

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