『日本社会のしくみ』を読む
『日本社会のしくみ』小熊英二 著
講談社現代新書 (2019.07.20)
著書の小熊英二氏が 研究を進めていくうちに、日本には特徴的な傾向があることに気づいたと書かれています。p.583
それは「カイシャ」と「ムラ」を、人々が相互に助け合う単位とされている。
人々の生活は「自治会」
日本の企業は「終身雇用」
労働組合は「企業別労働組合」
序章
日本社会の構成原理
1) 学歴
2) 勤続年数
3) 都市と地方
4) 女性と外国人
第1章 日本社会の「三つの行き方」
・日本の社会は「大企業型」「地元型」「残余型」の三つに類型される
・「大企業型 26%」「地元型 36%」「残余型 38%」
・非正規雇用は増えているが、正社員は さほど減少していない
・非正規雇用の増加は、 自営業の減少が要因。
p.46 図1-9就業地位別の推移
▶ 団塊の世代(1949/270万人)
戦後の日本経済の成長過程で、吸収する余地があった。
地方から都市への人口移動も1960年〜1970年が最も激しかった。
1973年のオイルショック前後から一段落した。
▶ 団塊ジュニアの世代(1973/209万人)
1980年代のバブル期に地方からの人口移動が起きる
1990年代〜2000年代初頭の「就職氷河期」
1990年代半ばに地方への人口回帰が見られた
2008年 リーマンショック
しかし、このころから景気の高揚が伴わないのに、都市部への人口移動が恒常化した。
p.77 図1-21 三大都市圏・地方圏の人口移動の推移
第2章 日本の働き方 世界の働き方
欧米企業の構造
・上級職員
・下級職員
・現場労働者
職務の平等 社員の平等
日本の企業
・三角構造
第3章 歴史
▶ ヨーロッパ
職種別労働組合
職種で決まる賃金
▶ アメリカ
職務 (job)
▶ 日本
社員の平等 (第4章へ)
図表【日本社会のしくみ(前半)】
金融工学大学院日記のnoteより 転載
第4章 日本型雇用
・日本の特徴
職務より学歴で処遇
明治期の官公庁における給与制度
学歴と勤続年数で決まっていた
軍隊型の階級制度
ジェームス•C•アベグレン 著 山岡洋一 訳
『日本の経営』日本経済新聞社 (2004)
1958年に発表されたこの本は、終身雇用・年功序列・企業内労働組合の三本柱を軸とする「日本的経営」の特徴や利点を欧米に初めて紹介し、その後の海外の日本研究者にとってバイブル的存在となった。
また、本文中のLifetime Commitmentの訳語として、「終身雇用」という言葉が初めて用いられたことでも知られている。日本の企業経営を考えるうえで基本文献となる名著、待望の復刊。
ジェームズ・アベグレン(James Christian Abegglen)1926年〜2007年
アメリカの経営学者
日本企業の経営手法を「日本的経営」として分析し、戦後の日本の企業の発展の源泉が、終身雇用・年功序列・企業内組合にあることをつきとめた。
また、「終身雇用」という言葉の生みの親として知られる。
第5章 労働慣行
日本の労働慣行の特徴
・ドイツのプロイセンの制度を参考に制定された。(1887年)
・官吏は労働契約ではなく、国家への忠誠勤務によって俸給を得ている。p.281
新卒一括採用
年功昇進と定期人事異動
定年
第6章 民主化と社員の平等
・戦後の民主化のなかで「社員の平等」への道が開かれた。
・戦後の労働運動は、年齢と家族数に応じた「生活給」のルールを確立した。
「職務給」「社会保障」「労働市場」
第7章 高度成長と学歴
・進学率の向上により、従来の三層構造(中卒/現場労働・高卒/事務・学卒/意思決定)を維持困難にした。
・職能資格制度の導入
第8章 「1億総中流」から「新たな二重構造」
・大企業の正社員の量的拡大は、1974年で ほぼ止まった。
・1980年代:正社員と非正規雇用の二重構造が注目され始めた。
・1990年代以降:日本型雇用の改革が唱えられたが、基本的な慣行は変わらなかった。
終章 「社会の仕組み」と「正義」のあり方
近代日本は、政府と企業(とりわけ大企業)の影響力が強かった。
そのため、横断的な基準や労働市場が出来ず、多くの企業が年功賃金の負担などに苦しむ結果となった。
p.553
あとがき
日本社会の特徴
▶「カイシャ」「ムラ」を、人間が相互に助けあうことを想定している。
▶ 西欧型の社会民主主義の考えが存在しにくい。
p.583
2021.11.28.〜2021.12.01 読了
2021.12.07. 加筆