YasuhiroHorie

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最近の記事

いやソウじゃなくてさ。【ソウX】

ソウ(2004)は金字塔、2はそこそこ面白かったかな。3以降スパイラルまではしょうもなくてほぼ覚えていないけれど、その中のひとつに妙に面白い回があったな、でもどれだったかもう思い出せないや。…というのがソウシリーズに対する私の立ち位置です。お気づきかと思いますが、なんだかんだ文句言いつつ全部観ています。ソウ(2004)のめちゃくちゃかっこいいラストの衝撃を求めて20年(!)ってことなのでしょうか、何度騙されてもアホみたいにすべて観てますね。 で、今作は事前に「全米初登場1位

    • 安定感【犯罪都市 PUNISHMENT】

      小さかったあの頃、町の映画館(というものがあった頃!)で毎年お正月に観たトラック野郎やら寅さんやら。もはやそんな安定感ですね。マブリーが人を殴ればつい笑える。それに尽きます。面白いです。見て損はないです。以上。 …というのも何なので、いちおう感想を書いておきましょうかね。アクション映画でもプロレスでも定番の面白さって、敵役の強さを丁寧に作り上げて「これにどうやったら勝てるっていうんだ」と思わせつつ、その敵を上回る何らかの理由づけによって主役が勝利する、というところが鉄板なん

      • 生きててよかった【ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ】

        The Raid をはじめて観た時の衝撃は凄まじかったな。また新しい時代が始まるのかなって思った。そして同時に、日本のアクション映画はなぜあんなすごいものを取り入れないんだろうってずっと思ってた。アクションって、創意工夫。世界中のある所で新しいアイディアが生まれては、それをまたある所で取り入れつつ独自に発展し、それをまた...というループ。古今東西のアクション映画っていったら途方もないけど、2000年以降のアジアって限ってみても、例えばHERO(英雄)のドニー・イェンとジェッ

        • 最後に勝ったのは…【ソウルの春】

          史実なのでこの結末は知ってる。でも悔しい。観客なのに何故か強烈に敗北感まで感じる。それでもうっすら、「まだ敗けてねえ」という気持ちも起きるのはこれ、いったい何でしょう。 ひとつはやはりこの作品そのものの力が凄まじいこと。変に時系列をいじったりせずに、その日数時間を一方向に追うシンプルなストーリーや、日本の昭和実録物のような字幕による人名所属アシストによって観客を迷子にさせない配慮があるという優しさ設計。そこに乗せてくる、韓国映画界が誇る層の厚いおっさん俳優陣の演技力がまたす

        いやソウじゃなくてさ。【ソウX】

          【命を濃くして立ち向かおう】サユリ

          金曜の夜、最終上映回で鑑賞。上映前の幕間映像が流れる時間帯に猛烈な違和感。なぜか白石晃士のはずなのに観客が多い。しかも若いカップルとかが多いときた。おかしい、これはおかしい。これはキングダムかなにかのシアターと間違えたに違いない。本編始まって違う映画だったらすぐ出なきゃ。いやでも両隣が埋まっている、白石晃士なのに。さてどっち側から出ようか...などと考えていると本編が始まる。なんかすごいのが出てきた...あ、「サユリ」ってタイトル!やっぱりシアターここであってたんだ...ほっ

          【命を濃くして立ち向かおう】サユリ

          誰もいなくたって森の奥で木が倒れたら音くらいしますよね【誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる】

          こちらの想像をいちいち裏切っては撹乱してくる序盤から中盤は、この話がいったい何なのか、また登場人物が誰なのかってことさえ掴ませない。しかし名優キム・ユンソクが演じる、ずっと中途半端でいらいらさせるあのおじさんが、待ってましたとばかりに一気に「チェイサー味」を増してスピードを上げてくる終盤は圧巻、さらにあれだけとっ散らかしたように見える話を見事に大団円というその積み重ね方が本当に絶妙。新しい試みを入れながらもストーリーの王道は外さないという力強さって、つい先日観た密輸1970で

          誰もいなくたって森の奥で木が倒れたら音くらいしますよね【誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる】

          私たちの幸せとともにある悲鳴【関心領域】

          唐突ですが、この映画が現しているのは、「無関心」ではなく「無視」だと思います。関心を持たないことにする領域。 美しい風景と快適な生活の裏で、ずっと響く焼却炉の音や怒声、悲鳴、ときおり銃声。ヘス一家の野郎…いや、みなさんは、その状況に無関心なゆえに気づいていないわけではない。みんな壁の向こうで何が起きているかを知っている。 そう言い切るのはなぜかって、もちろんそれは作中何度も描写されているところでもありますが、何より現在の私たちと同じだからですね。ガザの虐殺から国内のあらゆ

          私たちの幸せとともにある悲鳴【関心領域】

          激しいケン・ローチ【バティモン5】

          パリ近郊の団地の話であるけれど、鑑賞中に頭に浮かんでくるのは、自分の身の回りで起きている事柄や生きている人たちのことだと思います。それくらい世界は同じ問題を抱えているんだな。 この日本でも、なんかわからん陰湿な身内びいきくらいに堕ちたナショナリズムによって、匿名有名の有象無象が想像上のクルドやら在日コリアンやらアイヌやらを攻撃するのを見かけるのが日常になってしまっているけれども、ああ、フランスもそうなのか、っていうかいま人類全体の問題なのかってことに気づきます。 後半の怒

          激しいケン・ローチ【バティモン5】

          お前は関係ないから大丈夫【貴公子】

          この作品、観始めの印象と観終わったときに感じているものが絶対に違っているはず。それもきっと良い意味で。 登場人物たちが騙し騙され殺し合いつつ考える暇もない速度で展開するストーリーに、観客も大いに騙される。序盤には冷酷無比に見えていたあの人やあの人が、いつしかとても人間臭いキャラクターに見えてくる頃にはもうこの作品にハマっているでしょう。どのくらい騙されるかって、アシュラを観に行ったらブルース・ブラザースだったというくらい…ってわかるかな。いやわかりづらいか。 またパク・フ

          お前は関係ないから大丈夫【貴公子】

          亡霊恐るに足りず【12日の殺人】

          先日観た「落下の解剖学」は今のところ私的今年ベスト映画の文句なし暫定1位ですが、今回観た「12日の殺人」は暫定2位。この2作、舞台は同じグルノーブルという田舎の町で、マッチョな司法の男達から見る女という構図も同じ。そして何と言っても話の落としどころが両者とも素晴らしく、差と言ったらまあパルムドッグを獲得したメッシさんの存在ですかね。止まらないグルノーブルの勢い。もはやグルノーブル派。 実は「女の子だから殺された」「すべての男性が殺したようにも感じる」というセリフを感想サイト

          亡霊恐るに足りず【12日の殺人】

          死で罪は償えない【我、邪で邪を制す】

          前情報がなければないほど、急激な展開に振り回されるのを楽しめるタイプの作品なのであまり語るのも気が引けるところだけどね。 めちゃくちゃ泥臭いアクションから始まってすっかりバイオレンスアクションものだと思い込んで観ていたら、『悪魔を見た』や、まさかの『オカルトの森へようこそ』のようなやり過ぎ感のある展開まで、一体この映画はどこへ行ってしまうのかって観ているこっちがドキドキと心配してしまうほどですが、最終盤ではトーンが全く変わって「ああ、この話は全てそこに持ってくるものだったの

          死で罪は償えない【我、邪で邪を制す】

          幸せじゃないことはしなくていい【ネクストゴールウィンズ】

          いま、フットボールも社会もハイプレスショートカウンターだ。相手のチャンスは芽を出したそばから刈り取り、奪ったら一切の無駄を省いてゴールや利益をゲットする。大きな相手の戦術が“ポゼッション”だった頃はそれもまたエキサイティングだった。でも今ではすでに持っていた者がさらに資金や人材を漁り、一分の隙もない効率的な戦いを目指す。そうしたらもうすでに弱いとされた者はどうしたらいい?マンチェスターシティが卒なく勝ったところでそんなグロいフットボールを見ておれは幸せか…げふんげふん、いやな

          幸せじゃないことはしなくていい【ネクストゴールウィンズ】

          手に汗握るってこのこと【梟】

          面白かった! 権謀術数渦巻く宮中の出来事だけに、誰が敵か味方かもわからず、そこに暗闇と光の切り替わりが加わり、主人公の立ち位置が二転三転。「ああ、次はそう来るよね〜」なんてサスペンス物を観ている時にありがちな思いを絶対にさせてくれない、全編緊張感まみれの展開。 なにより、世の中の不正義に対面した時、弱い者って生き抜くためには見て見ぬふりをしなければならないのか。そうか、ほんとにそうか、それでいいのか。そういうアツいところを必ず入れてくる韓国映画、好き。 衣装もかっこよか

          手に汗握るってこのこと【梟】

          右拳に全体重をのせ、まっすぐ目標をぶちぬくように打つべし【犯罪都市 No Way Out】

          日本の中高年としてはもはや往年のトラック野郎やドリフを思い起こすほどの安定感を醸し出すこのシリーズ、しかし今作は武器や総合格闘技に対抗する術として「殴る」ことの純度を上げて、安定さえも打破していく。爽快。 エンドロールが終わったあと、隣の女子が「面白かったぁ」とつぶやいた。どストレート(フックやアッパーも多用)で貴重な作品でした。

          右拳に全体重をのせ、まっすぐ目標をぶちぬくように打つべし【犯罪都市 No Way Out】

          おそれずに言えば面白いんですよ、この映画【ボーはおそれている】

          『ヘレディタリー』というホラー映画史上最高傑作(当社調べ)が長編デビュー作で、その後も臆することなく『ミッドサマー』というさわやか青春ラブコメディの傑作を放ってきた化け物アリ・アスターの、早くも集大成といった今作、全くわけがわからないという感想もたくさん見られるし、いつも何か不安な方は躊躇してしまうかもですがいや大丈夫、「前2作がなんかわからんけど無性に好き」といった面々には必見、むしろ見ないと損というのが今作です。 ちょっと前に観た『哀れなるもの』とは全く正反対の世界観。

          おそれずに言えば面白いんですよ、この映画【ボーはおそれている】

          すごいけど【アフターサン】

          すごいという話を度々聞いていたので、遅ればせながら配信で観たけど…うーん、ちょっとなあ… お父さんと過ごした休暇の思い出。話はただそれだけだけど、何かずっと違和感があったり不穏であったり。その違和感が何かは演出やら編集やらによってわかるようになっていて、またそれが何かわかったときの感情の揺さぶられ感はすごい。これだけ無駄に語らずに映像でわからせるのってこれはまたすごい作品だなとは思ったものの、でも何か乗り切れないところがあるんだよなっていうのが観た直後の感想。あえて率直に言

          すごいけど【アフターサン】