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リヤドで感じたアル・ヒラルサポーターの熱量と、埼スタへと繋がった物語 #浦和レッズ #サウジアラビア遠征

浦和レッズサポーターのほりけんです。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝、サウジアラビアの首都リヤドで行われた第1戦は、0-1で折り返しました。現地組の一人として悔しさは残りますが、アル・ヒラルはやはり強敵でした。

しかし、大槻監督も言う通り、「現実的なスコア」で終えられた試合でもありました。あれだけ押し込まれた中、タイトル獲得への条件は十分に残せました。興梠選手は1点取られた段階で「ホームで勝負しよう」と言ったとのことですが、埼玉スタジアムで、本物の浦和レッズを見せつけましょう!

そんな正真正銘の決戦を1週間後に控え、今回は、主にサッカーの視点から、サウジアラビア遠征を振り返ります。

サウジアラビア入国への準備

サウジアラビアに入国するには査証(ビザ)がいる。189か国・地域にビザなしで訪れられる「最強のパスポート」であっても、ビザが必要な数少ない国。

しかもサウジアラビアが観光ビザを解禁したのは今年9月27日のことだ。ベスト4進出が決まった後だったのもあって、なんてタイムリーなんだ!と密かに思っていた。余計なフラグは立てたくなかったので口には出さなかったけれど。僕は行けなかったが、2年前は特別に商用ビザを発行してもらって入国していたので、そのときに比べれば状況は格段に改善した。

実際にオンラインでビザの申請をしてみると、予想以上に簡単で驚いた。ログインまでの認証が何ステップもあったり、各ページの入力に10分の制限時間があったり、多少面倒はあったけれど、申請してから30分後に確認したら、その時点で既に交付されていた。ビザは1年間のマルチエントリー、最大90日間の滞在が可能だ。

ちなみに申請には顔写真をアップロードする必要があるのだが、これも結構緩め。2017年に遠征したサポーターのブログなどを見ると、当時は背景は白など細かい指定を受けていたようだが、今回は出張帰りの特急ひたちの車内で、スマホの内蔵カメラで撮ったものでOKだった。アップロードできる写真のサイズが5-100KBと小さいのでリサイズに苦労はしたけれど、申請自体は相当簡単だった。

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10分縛りには地味にやられた。
写真のサイズを整えてから申請手続きを始めよう。

リヤドに飛ぶ

ビザの次はフライトだ。Skyscannerで調べると9万円台からある。直行便がないので中東または東南アジアで乗継ぎになるが、思ったよりリーズナブルな印象。いくつかあったオプションの中で、行程的にはドバイ経由のエミレーツ航空が良かった(現地での滞在時間が一番長い)。しかし、エミレーツでは安いチケットが入手できなかったため、次点のマニラ経由のフィリピン航空にした(約10万円)。

職場の創立記念日が重なって1日長く休みが取れたこともあり、チームが出発してからほぼ1日後、11月6日(水)の深夜(11月7日(木)01:30)に羽田を発った。マニラには7日早朝に着くが、乗継の待ち時間が5時間強あり、リヤドには7日夕方に到着する行程だ。

羽田空港では、フィリピン航空のカウンターでリヤド行きのサウジアラビア人と見られる男性2名がごねていた。手荷物7kgまでのところ11kgあったようなのだが、常備薬が入っているから必要、機体がエアバス300なんとかだから積めるはずだなどと、どうしようもない言い訳を重ねていた。応対していたのは日本人の女性1人だったが、「はいはい、色々言うのは勝手だけど、どんなに言っても無理よ、諦めなさい♡」というような笑顔で突っぱねていたのが印象的。流石である。

羽田─マニラは4時間くらい。満席ではないもののそこそこ埋まっていたし、思ったより日本人搭乗客が多かった(全体の3-4割はいた)。また運良く周りに空席が多く、1列(3席)使わせてもらえたので、機内食もパスして横になった。

マニラでの乗継は、サウジアラビア行きの搭乗客だけラウンジという名の小部屋に集められ、パスポートとビザのチェックを受けた(一瞬パスポートを取り上げられるので驚くかもしれない)。

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ラウンジという名の小部屋

その後バスで移動するが、移動した先のターミナルの設備はいまいち。コーヒーショップが2軒くらいと売店がいくつかある程度だが、まぁ文句は言うまい。

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乗継待ちのエリアは写っている範囲の2倍位しかない。

マニラ─リヤドの機内の設備も貧弱だった。電源やUSBジャックは勿論、モニターもなく、エンタメはゼロ。時間すらわからない。

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のっぺりとした背中。国内線かと思った。

10時間近いフライトでなかなかの苦行を強いられそうになるが、残念そこはタブレット。タイムゾーンを変更し、落としておいたコンテンツを消化すれば、スペース(時間)は埋められた。新刊をまだ読んでいなかった漫画アオアシを読み、映画ペンタゴン・ペーパーズ(The Post)を観て、あとはコンディショニング(睡眠)に充てた。羽田─マニラに続き、1列使わせてもらったので、体力面ではだいぶ助かった。

なお、リヤド行きの搭乗客にはフィリピンの女性が大勢いた。まさにサウジアラビアに詳しい友人に聞いていた通りで、予習しておくと、旅の面白さも一段と増す。

リヤドに降り立つ

リヤドに向けて降下を始めると、窓越しに赤茶けた大地が目に入る。街はまだ見えない。

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無事着陸したあとはバスでターミナルに移動する。一瞬外に出るが、乾燥しているからかそこまで暑さは感じない。その後入国審査だが、ここでも予習が生きる。職場から空港に直行したのでジャケット姿だったのだが、案の定、丁寧な応対をされる。ビザも問題なく、極めてスムーズに入国できた。

入国してから最初にしたことはSIMカードの購入。今の時代、現金より重要かもしれない、旅の必須アイテム。ちょうど出たところにmobilyという通信会社のブースがあったのだが、友人から名前を聞いていたいくつかのうちの1つだったので、迷わずここで購入した。1GBでSR40(約1200円)、5GBでSR85(約2500円)だったが、3日間だけなので1GBにした。

空港からリヤド市内へ、公共交通機関はないが、タクシーやUBERなどで行ける。タクシー乗り場と並んで、UBERやCAREEM(中東・アフリカ地域の配車アプリ)の乗り場が設置されていたのが面白い。ちなみに着陸してから1時間くらいの間にちょうど日が暮れ、見ての通り空港を出る頃には真っ暗。

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なお、街中では大体クレジットカードが使えるので現金はあまり必要ない。今回も念のためホテルで100ドル分だけ両替したが、結果として、ほとんど必要なかった(両替する場合は米ドルまたはユーロ)。

リヤドを眺める

リヤドには高い建物がいくつかあるが、そのうちの1つのAl Faisaliah Towerがホテルの近くにあったので登ってみた。その街を知るには、ひとまず高い所に行くのが僕のセオリーだ。

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Al Faisaliah Towerの外観。球体(Globe)付近に展望台やレストランがある。

展望台から街を眺める。真ん中右寄りの、上部が逆三角形になっているのがKingdom Towerだ。どうやらこのKingdomとAl Faisaliahの間が一番の中心部のようで、この方角はだいぶ都会だ。

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一方で、少し視線を移すと趣が異なる。比較的背の低い、淡い肌色の建物が広がり、地平線に溶け込んでいた。

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Al Faisaliahからは夜景も◎。なかなかの近未来感。この日はアバヤ&ニカブ姿の若そうなサウジアラビア人女性の4人組が、きゃっきゃいいながら自撮りなどしていた。

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リヤドの気候

11月のサウジアラビアは、秋から冬への変わり目で、気温も比較的穏やか(最高気温が約30℃、最低気温が約20℃)。日差しは強いが、湿気が全然ないので思ったよりも過ごしやすい。

ただ、乾燥した空気がなかなか厄介(乾きではなく、渇きというイメージ)。軽いのど風邪を引いたような感じになる(実際のど飴は重宝した)。今回の試合は19:30キックオフなので、暑さはあまり感じずにプレー出来そうだが、水分補給はポイントになりそうだ。

ただ、このような気候は旅行者にとってはメリットでもある。降水量が少ないため、天候不順によるスケジュール変更のリスクはかなり少なさそうだ。そして、もしサウジアラビアで雨に降られたら、それはそれでラッキーな気もする。

リヤドで浦和レッズサポーター大集合

ACLアウェイゲームの観戦方法は、対戦する相手や国によって異なる。今回の場合、安全上の理由で、オフィシャルのツアーでないと観戦ができなかった。

ツアーの種類は、日本発着ツアー、リヤド空港発着ツアー、リヤド発着バス&チケットツアーがあった。僕は普段ツアー旅行は全くしないので、バス&チケットツアー(9000円)を選択。今回は200人くらい?がこのツアーだったようだ。

試合当日は、キックオフ4時間前(15:30)に、集合場所に指定されていたリヤド市内のホテルに行く。

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ツアーにチェックインをすると、バスの号車を書いた紙を渡される。

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その後、クラブとHISのスタッフからこれからの流れや注意事項を聞く。注意事項は、宗教上の慣習をリスペクトすること、緩衝地帯がないので挑発に乗らないこと、サポートに徹すること、の3つ。何かあったらクラブスタッフが戦います、という言葉は心強かった。

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サウド王国大学スタジアムに向かう

スタジアムへはバスで30-40分ほどだ。1号車から順に乗り込んでいく。ちょうど乗る前に、ペットボトルの持ち込みが禁止になったとの現地情報が入った。サポーターも水分補給が大事になりそうだ。

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スタジアムに着くと、昼間に教えてもらった1番ゲートから入場する。同じゲートの左手にサウジアラビア人が並んでいるのを見て、緩衝地帯がないという注意を思い出した。

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チケットはバスから降りる際に受け取り、ゲートでバーコードをかざして入る。思ったよりシンプルなチケットだったが、周りの人達曰く、2年前はもっとちゃんとしていたとのこと。

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アウェイ側のコンコースには売店がひとつだけあった。サンドイッチなどを売っていたが、僕は水を中心に調達した。

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水はこれで1リエル(約30円)

アル・ヒラルサポーターの熱量

サウド王国大学スタジアムの収容人数は2万5000人。小ぶりだが、イングランドスタイルの良いスタジアム。その中で、我々浦和レッズサポに与えられたエリアはメインスタンドの一角。左側のファイナルサードのあたり。

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ヒラルサポーターは両ゴール裏のペナルティエリアの幅くらいに陣取っていた。メインスタンドから見て右側がメインのようで、コールリーダーと覚しき人たちは赤いシャツを着ていた。

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この配置を現地で見て、緩衝地帯がない理由が理解できた。我々の右側はVIPも含むエリア、左側のコーナー付近は女性も観戦できるファミリー席と、どちらも比較的落ち着いている客層だ。これなら揉め事も起きにくいだろう。

ただ、ゴール裏以外のヒラルサポーターも声はしっかり出ていた。しかも客席が完全に屋根で覆われているため、声は全て中に反響する。DJのボリュームも大きい(若干空回り気味だったが)。おかげでこの日は声が非常に通りにくかった。

試合中も含め、ヒラルサポーターの熱量は敵ながらあっぱれだと感じた。チャントのバリエーションは多くはないが、ひとつひとつのプレーにスタジアム全体が反応していた(さすがに試合中の動画はない)。

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あの雰囲気を考えると、点を決められたのが後半で良かったと思う。早い時間に失点していたらヒラルサポーターはもっと乗っていただろうし、圧力はもっと強くなっていただろう。

0-0の時間を長引かせられたことは重要だったし、その意味で、青木拓矢のスーパークリア、そして福島春樹の2つのビッグセーブは大きかった。

ホーム埼スタでの逆転への物語が、繋がった。

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▼サウド王国大学スタジアムにて、キックオフ9時間前の奇跡
▼同盟国アル・ナスルにお布施
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