浦和レッズサポーターがレディースを観るべき3つの理由 ~頂上決戦の展望と篠ノ井への旅を添えて~
今、浦和レッズがアツい!
Jリーグを観ている人は、なぜ、10位のチーム(9勝9敗3分、勝ち点30、得失点差マイナス10、2020年10月4日現在)がアツいのか、疑問に思うだろう。
しかし今日の主役は、なでしこリーグ1部、浦和レッズレディースである。
昨季、森栄次監督が就任し、新たなスタイルを構築している浦和レッズレディース。森体制1年目から魅力あふれるサッカー(後述)を展開し、リーグと皇后杯でタイトル争いに絡んだ。
2年目となる今季は、シーズンの3分の2を消化した時点で、堂々の首位に立っている(10勝1敗1分、勝ち点31、得失点差14)。
そしていよいよ、10月11日(日)には、2位の日テレ・東京ヴェルディ・ベレーザとの大一番を迎える。勝ち点の差が9ポイントあるとはいえ、アウェイAGFフィールドで行われるこの試合は、優勝の行方を占う試合だと言っても過言ではない。
浦和レッズサポーターなら、この試合を観ない手はない!
(注:なでしこリーグのYouTubeチャンネルで生配信)
なぜなら、今のレディースは、浦和レッズのチームコンセプトを十二分に体現した、魅力溢れるチームだから。
チームコンセプト『浦和を背負う責任』
▼個の能力を最大限に発揮する
▼前向き、積極的、情熱的なプレーをする
▼攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする
(出典:2020シーズン新強化体制記者会見)
その1 チームの土台の上で、個の強さが際立つ
チームのベースは、ショートパス主体のポゼッションと、即時奪回を目指すゲーゲン・プレッシングだ。試合が始まって数分もすれば、「なるほど、こういうスタイルなんだな」とわかるほど、チームに浸透している。
基本フォーメーションは4-2-3-1で、今のレギュラーはこちら↓(注:2列目の並びは流動的)
戦術的にはモダンなスタイルだが、実はチームのストロングポイントは、個の強さにある。
まずは後ろ、センターバックの2長船加奈と3南萌華。積極的に前からはめに行く守備のため、後ろはハイライン、そして数的同数で守ることになる。そのリスクを甘受できるのは、強さも速さも兼ねそろえたこの2人がいるからである。必然的に、最終ラインは局面のバトルが見どころだ。
守護神は1池田咲紀子。ハイラインの裏の広大なスペースを管理し、また高い足元の技術を活かしてビルドアップにも関与する。そして昨今はまた違った意味での「強さ」を感じる。チャント等が禁止されている今、コーチングの声が一際目立つ。「強い」言葉がバンバン飛んでくる。現地で注目して見る(聞く)と面白い。
前に目を転じると、最前線にはエースの9菅澤優衣香。現在15得点で、得点ランキングの首位を走る。チームとしてはポゼッションを重視しながらも、状況によっては菅澤めがけてロングボールを蹴ることも厭わない。したがって戦い方が一辺倒にならない。
トップ下に入る8猶本光も、2年間のドイツでのプレーを経て、強さが目を引く。球際や守備の強度もそうだが、何よりボールを蹴る瞬間のインパクトが強い。ミドルシュートはもちろん、セットプレーでも可能性を大きく感じさせる。
攻撃のキープレーヤーは右SBの11清家貴子。元々FWの選手だが、森監督が右サイドバックにコンバート。スピードがあるので、カウンター時に持ちあがることも多いが、セット攻撃のときも、積極的に前に上がり、幅を取る。
流行りの5レーンでいえば、11清家が大外に張り、ハーフスペースに入ってくる中盤の選手(16水谷はこれが上手い)とサイドを攻略し、中央の9菅澤にボールを届けるのが定番である。
その2 ユーティリティな選手たちが、圧力と柔軟性をもたらす
試合の流れを変えたいときは、11清家が2トップに入る。その際は、ボランチの6栗島朱里が右サイドバック、2列目の16水谷有希がボランチにスライドする。
左サイドバックの4佐々木繭も中盤はどこでもできるし、複数のポジションをこなせる、ユーティリティな選手が多い。そしてチームの根幹であるポゼッションもプレッシングも、このユーティリティな選手達が生み出している。
ボール保持の時も非保持の時も、ボールサイドに極端に圧縮し、ポジションを大きく崩しながら相手に圧力をかける。片方のサイドラインから中央までにほとんどの選手が入り、敵陣に押し込むと、ハーフコートどころかクオーターコートで試合を進める。
さらに、こうした選手達がいるおかげで、戦い方に柔軟性が生まれる。ピッチの中だけで配置やシステムを変えることができる。実際、試合中のシステム変更は日常茶飯事。中盤の2列目に至っては、数分毎にポジションを入れ替えることもあり、実況泣かせだ。
これを象徴する選手が7高橋はなである。U-20W杯優勝時はセンターバックで、3南とコンビを組んでいたが、浦和レッズレディースではディフェンスとフォワードを兼任している。途中出場の場合、菅澤と交代または2トップを組むことが多いが、今季先発した5試合の試合開始時のポジションはすべてディフェンス。センターバック2回、右サイドバック2回、左サイドバック1回と、最終ラインをコンプリートしている。
前線や最終ラインでは高さと強さ、サイドでは突破力と、様々なポジションで個性を発揮でき、12人目のレギュラーといっても良いだろう。チームにまた一段と厚みを加えている。
その3 激闘必至の一戦、違いを生み出すのは誰だ!?
週末に激突するベレーザは、いわずとしれた日本女子サッカーの名門である。代表選手も多数在籍しており、昨季はリーグ5連覇に、3冠の花を添えた。
しかし、森体制下の浦和レッズレディースは、ベレーザに対抗する力を蓄えている。事実、昨季もビッグマッチをいくつか争った。
中でも忘れられないのは、2019年9月22日の西が丘での一戦(なでしこリーグ第13節)。浦和レッズレディースは、エースとキャプテンを欠く中、非常に強度の高いゲームを展開し、3-2で勝利した。
この試合は、過去10年間に僕が観たサッカーの試合すべての中で、5本の指に入る。最高のゲームだった。
今季は、早くも第3節にホーム浦和駒場スタジアムで迎えうった。奇しくも観客を入れた最初の試合。僕も浦和駒場スタジアムに観に行ったが、こちらも両チームの特徴が存分に出た好ゲームだった(結果は浦和が1-0で勝利)。
今回も激闘は必至だが、違いを生み出すのは誰なのか。
森監督は、これまでのところ序列がはっきりした選手起用をしているので、コンディションさえ許せば、上記の11人がスタメンに名を連ねることが予想される。
両チームが対峙するときは、ポゼッション重視、ポジショナルなサッカーを志向するベレーザに対して、浦和レッズレディースがハイプレスで対抗するというのが基本的な構図だ。浦和の勝ち筋は、局面の強度を高めることだ。
とはいえ、90分通して強度を維持するためにも、ボール保持の質も大事になってくる。その意味では、キャプテンの18柴田華絵や6栗島を中心に、中盤をどれだけ制圧できるかは展開を左右するだろう。
MF18 柴田華絵(しばた はなえ)
▼浦和レッズ・レディースのキャプテンにして、不動のボランチ。自陣で組み立てに関与しつつ、敵陣ペナルティエリア付近まで進出。小柄ながら、ボックストゥボックス型の選手。
▼アンダー世代の頃は、タッチの細かいドリブルからハナエスタとも呼ばれたが、今はそのスキルを1列後ろで発揮している(直前でプレーの選択を変えられる)
その中盤にはもう1人、特徴のある選手がいる。
19塩越柚歩。レギュラーの中では清家と並んで個で打開できるタイプの選手であり、観ていても楽しい。新潟戦のように、ゴールに絡むプレーを期待したい。
MF19 塩越柚歩(しおこし ゆずほ)
▼アカデミー出身。密集でもするすると抜いていくスキルがあり、ペナルティエリア付近でボールを持つとわくわくする。意外に(失礼)走力もある。
▼昨季は怪我での欠場が続き、シーズン終盤に復帰。年末の皇后杯から試合に絡み始め、今季は早々にスタメンに定着。森サッカーの2列目にはまる選手のひとり。
そして、試合展開にもよるが、ベンチワークも大事になるだろう。10安藤梢は、いわずと知れた2011年のW杯優勝メンバー。経験豊富で、僕が浦和レッズレディースを観はじめた2009年シーズンの得点女王でもある。
しかし、この試合は17遠藤優に注目したい。昨年9月のベレーザ戦ではスタメン出場し、出色のパフォーマンスを披露した。今回は途中出場の可能性の方が高いだろうが、攻守両面で強度があり、ラグビーで言うところの「インパクトプレーヤー」となり得る存在だ。
MF17 遠藤優(えんどう ゆう)
▼アカデミー出身のドリブラー。スプリント能力も高く、縦の推進力がある。球際でも戦える。伝統的な浦和レッズサポーターが好きなタイプではないか。
▼今季スタメン出場はまだないが、レギュラーの中盤の選手とは明らかに個性が違うので面白い。右サイドバックでの起用もオプションとして興味深い。
いずれにせよ、激闘は必至。
決戦を見逃すな!
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さて、ここからはOWL の本題「旅とサッカー」に戻り、昨夏、休暇先から足を伸ばした、浦和レッズ・レディースのアウェイ遠征in長野をお届けする。
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