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開拓者精神で荒れた山林や空き家を活用する

私たちNPO法人東京里山開拓団は、荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと開拓して自らふるさとを作り上げる活動を推進しています。2012年以降80回開催し、虐待や貧困などで家族と離れ暮らす子どもたちの参加はのべ500名以上。環境保全と児童福祉の一石二鳥として、環境省・厚労省から表彰も受けました。

しかし、2020年からのコロナ禍のせいで活動は延期続き。一方で、施設職員から「ステイホーム続きで子どもたちはもう限界」という悲痛な声も届きました。深刻化、複雑化する社会課題を前に何ができる?と自問自答の日々が続きました。

2021年の春、東京都あきる野市の里山のふもとの空き家が目に留まりました。それは都心から一時間余りののどかな農村集落にあって、小川に面した日当たりいい木造平屋建ての一軒家です。ただ、何十年も人が住まなかったので、外壁や壁や扉、天井の一部ははがれ落ち、床板はむき出しでした。

ふと、一緒に里山開拓できないなら、施設だけで里山ライフを満喫できる所があればいい、空家を児童養護施設のための里山付き別荘にしようと思い立ちました。早速、地元関係者の協力を得て、3か月間の素人DIYと30万円の予算で改修し、2021年7月にオープンしたのが「さとごろりん菅生」です。

物置きだった部屋は、3つのハンモック、押入れ改造の勉強部屋、300冊の里山文庫、滑り台、つたのランプ、黒板の壁のある部屋へ。外壁はヒノキの板張りへ。庭先にはバーベキュー場を整備。目の前の小川で水遊びや魚とりもでき、里山にも徒歩10分で通えます。

現在5つの児童養護施設がここを利用しています。「一生ここに居られる」といってくれた少女も、施設にいられずここに2週間滞在して心を癒した少年もいます。

荒れた山林や空き家なんて、汚くて怖くて関わりたくないと考えるのが普通でしょう。地主も地元も行政も企業もみなそう考えてきたから、全国に無数の荒れた山林や空き家が存在するのです。

でも私たちが見ていたのは、そこが家庭を失った子どもたちのふるさととしてプライスレスな価値を輝かせる夢でした。しかも、夢の実現に向けて泥臭い作業をしている瞬間が一番楽しいとさえ感じたのです。

これはきっと開拓者に共通する思考です。私たちは、自分の中に眠る開拓者精神を呼び起こし、自然の力を生かして試行錯誤を楽しみながら、社会課題など軽々と克服したいと思っているのです。

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