見出し画像

5年前の執筆挫折、そこからスタートアップのように2度目の執筆に取り組んだ話

こんにちは!株式会社Renewer CEOの堀内です。

本日、2024/6/12に著書が発売になりました。

とはいえ、世に出ているコンテンツの多くは裏側で苦労があるように、
私の出版までのプロセスも順調とは言えないものでした。
話は5年前に遡ります。

5年前の挫折

実は約5年前にも一度出版の機会を頂いたことがありました。
しかし、その時は筆が進まず、徐々に執筆から距離を取り、締め切りを守れず、フェードアウトして…
つまるところ、本の出版に挫折しました。

「スタートアップな進め方」を取り入れる

ありがたいことに5年越しで再度出版の機会を頂けたものの、過去の失敗も踏まえて取り組み方を変えないといけないと考えていました。

その時にちょうど「スタートアップに適したプロジェクトの進め方」をリサーチしていて、それを自身の執筆に適用しました。
そして、二度目はゴールまで到達することができました。

"積み上げ"が必要なビジネスパーソンへ

一般的なビジネス書は、約10万字と言われています。1日3,000文字書いたとしても1ヶ月以上かかる、長期戦です。
日々コツコツと進めないとゴールには到達できません。

一方で、勉強や運動など"日々の積み上げ"が必要なビジネスパーソンは多いと思います。また、それに苦労している方も多く見かけます。

ここから、私の"積み上げ"の失敗経験と改善例を紹介します。
同じような挫折を回避したり、参考になれたらとても嬉しく思います。



一度目の失敗

出版のお話を頂く

2019年頃に翔泳社さんから出版のお話を頂きました。
私がプログラミング教育のスタートアップであるCodeCampの代表をやっていた時で、私個人というより会社に対してご依頼を頂いたと記憶しています。

「"プログラミング勉強法"というテーマで本を書けませんか?」という打診でした。運営しているサービスとの親和性は極めて高いテーマです。
プログラミングを学習中のサービス利用者が、学習に苦戦していたり挫折しているのを肌で感じていたので、シンプルにそういう人たちの為に書きたいテーマだな、と思いました。

加えて、サービスを成長させるのに躍起になっていました。
その当時プログラミング教育業界の競争は激化していたので、本を出版することが成長への有効な一手になる、という期待もありました。

執筆開始

そうして取り組むことにしました。
いつまでに書き上げるかはこちらで決めることができたので、「6ヶ月で書き上げる」というスケジュール感を担当編集の方には伝えていました。
本業もある中で、無理のないスケジュール設定をしていたと思います。

最も重要なのは「ルーティン」だと考えていました。
なので毎日同じ時間に執筆時間を確保する、というのをやりました。具体的には、毎朝8:00〜10:00を執筆時間としてブロックして取り組みました。

締め切りも設定しました。
章ごとに書き終わったら編集者に提出することになっていたので、「次の章は◯月◯日に提出します」と事前にコミットしていました。
"締め切り効果"と呼ばれる、集中力を高めて取り組む手法です。

今振り返っても、十分に作戦を立てて取り組んでいたと思います。
でもうまくいきませんでした。

筆が進まない

最初の章は比較的スムーズに書き進められました。毎日決めた時間にパソコンに向かって、執筆を進めていました。
3日坊主もクリアし、ルーティンを構築できていたと思います。

しかし、だんだんと書けなくなってきます。
2時間パソコンに向かっても数行しか進まない、みたいなことがよくありました。

脳内編集者の登場

筆が進まない原因はいくつかありましたが、一番大きかったのは"脳内編集者"の存在でした。

脳内編集者とは、文章を打ち込んでいる最中に「ここ、もっと良い表現があるんじゃない?」「ここは例を入れたほうがわかりやすいよ」と、ダメ出しや編集案を提示してくるヤツ(思考)のことをそう呼んでいます。

自分の名前で世に出す文章ですし、批判されたり笑われたりしたくはありません。そんな思考が脳内編集者を呼び覚ましてダメ出しをしてきます。
その都度リライト案を考えて、文章を書くことが止まっていました。

ルーティンが崩れ、リカバリプランを立てるも…

毎朝書くというルーティンも徐々に崩れていきます。
子どもの体調不良などで病院に通ったり、急遽の資料の準備が必要になったりなどのイレギュラーにより、執筆時間が確保できない日がしばしば発生します。

リカバリプランとして、夜の就業後に執筆時間を移したりしました。
自分の場合は帰宅してしまうと作業できなくなるので、オフィス近くのコワーキングスペースを契約して会社帰りに寄るなど、作業場所の面でも工夫していました。
でも、夜は夜で会食などイレギュラーな予定があって、やっぱり時間確保が難しくなりました。

期限に遅れ始める

徐々に章ごとの期限が守れなくなってきて、締め切りの翌日に提出になったり、月曜日に提出すべきものが週末になったり、と遅れ始めました。
一度期限を守らないと遅れることに抵抗が無くなって、そこからスケジュール通りに進捗させていくことが難しくなりました。

3日書かないと、もう戻ってこれない

そうこうしているうちに、3日ほど執筆のブランクが空いてしまいました。
一旦勉強/運動しない期間を作ると、再開できなくなる、という経験はないでしょうか?
いわゆる慣性というやつで、一度やらないモードに入るとやるモードに切り替えるのはとてもエネルギーがいることだと思います。
私も執筆を再開するのが難しくなりました。

そして、完全フェードアウト

こうして、完全に執筆を止めてしまいました。
30,000字近く書いていましたが塩漬け。完遂できなかった恥ずかしさ・情けなさはあるものの、誰からも咎められませんでした。
特に大きな変化もなく、執筆作業のない日常に戻っていきました。

二度目の改善

前回の反省

そして2023年夏、また同じ翔泳社さんからご連絡を頂き、執筆のチャンスを頂けました。リベンジしたいという思いもあり、お引き受けしました。

前回は「ルーティン」を最も重要視していましたが、それだと上手くいきませんでした。
今回は、「スタートアップに適したプロジェクトの進め方」として注目していた「モメンタム」を重視して臨むことにしました。

「ルーティン」から「モメンタム」へ

“Startup survives on momentum”
(スタートアップはモメンタムによって生き延びる) 

サム・アルトマン(OpenAI CEO)

ChatGPTの開発元であるOpenAI社のサム・アルトマンがスタートアップ向けの講演で話した一節です。
モメンタムは「勢い」と訳すことができます。

スタートアップではモメンタムがすべてだ
私がスタートアップに対して最も重視している命令の 1 つは、会社のモメンタムを決して失わせるな、だ

スタートアップは野心的である反面、生まれたてでか弱さをはらんでいるので、勢いによって駆け抜けて成長していく必要がある、とサム・アルトマンは述べています。

か弱いプロジェクトである、という面では執筆活動も共通しています。
本業があって優先順位が下がってしまったり、課題にぶつかったりすると、すぐに進捗に影響します。

そこで、スタートアップのようにモメンタムを生命源として執筆を取り組むことにしました。

ここからは「スタートアップがモメンタムを維持するために重要なTips」をキャッチアップして、自身の執筆に取り入れたことを紹介します。
Tipsについては東京大学 FoundX ディレクター 馬田隆明さんの以下の記事を大変参考にさせてもらいました。(この記事でも一部引用しています)

①計測可能でモメンタムを生むKPI

「モメンタムを計測可能にする(メトリクスを設定する)」

「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」より

まず、モメンタムを生み出せるKPI(重要指標)を設定することからはじめました。前回は学習時間を最重要としていましたが、今回は文字数を最も重要視してKPIとして計測しました。

毎日書いた文字数を記録して、以下のような指標をモニタリングしていました。

  • その日どれだけ書いたか(当日実績)

  • その週どれだけ書いたか(週実績)

  • これまでどれだけ書いたか(累計)

  • 目標ペースと比べてどうか(累計差分、週差分、当日差分)

文字数目標管理シート

文字数をKPIとすることで、前回進捗が進まない原因であった、脳内編集者問題も一定解決できました(とにかく書くことを優先するようになる)

今回は文字数でしたが、より汎用的にこのTipsを使うには「モメンタムを生むためにはどういう指標を追えばよいか」というところから考えるとよいでしょう。

ちなみに文字数目標管理シート(Excel)、もし必要な方いれば以下からダウンロードできます。

②小さな成功の積み重ね

「プロジェクトを小さなチャンクに分けて勝利を重ねる」

「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」より

1日の目標を2,000文字に設定していたのですが、日々の執筆作業はそれをクリアすることを目指しました。

大事なのは集中だったと思います。
「前に書いたあそこの箇所、ブラッシュアップしたいな」とか
「内容が伴わないと意味ない」など考えずにとにかく2,000文字を書くことに集中することを心がけました。

2,000文字の目標を達成する。勝利。次もできる気がする。また取り組む…。
そうやって結果的に本1冊分の文章を執筆することができました。

②人を巻き込む

ピア・プレッシャーの中に身を置く

「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」より

ピア・プレッシャーとは「仲間からのプレッシャー」と訳せます。
前回はひとりで進めていましたが、遅れても挫折しても誰からも咎められませんでした。
今回は周囲の協力者を巻き込んでチーム化して、自分が進めなければいけないというプレッシャーに身を置きました。

具体的にはSlackに招待して、レビューや技術的な調査などを協力してもらっていました。(ありがとうございます!)
そしてプレッシャーを得るために、毎日進捗レポートを送ることをチームメンバーに約束していました。

Slackレポートの内容

レポートを送ることで貰えるチームメンバーからのリアクションは励みになりますし、一人でぬくぬくとやらないことは、モメンタムを生むうえで重要だと思います。

④リズムを作る

「早期にオペレーションのリズムを作る」

「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」より

①〜③を崩さずに行うリズムを作ることにも意識を向けていました。

具体的にはオペレーションのリズムを正しく刻むために、ルールブックを作って、いつ誰が何をするのかを明記して、チーム全体で守ってもらいました。

ルールブック(Notion)

5年前に失敗した時は、「ルーティンを作ること」を重視していました。
今はルーティン構築は目的ではなく、リズムを生み、モメンタムを維持するための手段のひとつ、と考えるべきだったんだなと思います。

終わりに

"積み上げ"にはモメンタム、という提案

今回私は本の執筆でしたが、資格の勉強、ボディメイク、様々な積み上げ活動にこの"モメンタム"という考え方は適用できると思います。
何か自身の活動・プロジェクトが停滞していると感じている方は、ぜひ試してみてほしいです。

そして、モメンタムを維持して執筆した本はこちらになります!
ぜひぜひご一読お願いします。

本の内容は以下で試し読みでします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?