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散りての花はいかがかざさめ ~その②~

  前回は

『I子さんって、一体何者?』

 という話でした。

 つづきに行く前に、ほりべえがI子さんと出会った話から参ります。

2020年(令和2年)8月30日(日) 

ほりべえの日記より


 今日は、入所者のI子さんの話を書こうと思う。

 私がここでI子さんの貴重な体験の話を伺うことが出来たのは、運命なのだ。



 I子さんに初めて出会ったのは、2020年(令和2年)8月29日(土)の午後、おやつを頂いた後、少し経ってからなので3時30分頃2階東である。
 偶然通りかかって声を掛けて下さったのである。

( ※と日記には書いてあるが、詳しくは車椅子でI子さんの前を通った時に、テーブルの前に座っているI子さんにお声を掛けて頂いたのである。I子さんはほぼ同じ所にいらっしゃる。一人では動けないから。)


 『I子さんがまだ15歳で一人秋田から横浜のおじさんを頼って出て来ておじさんと義理のおばさんの家から学校に通っていた所、ある日おじさんに赤紙が来たと。
 赤紙というのは長男には来ない。次男、三男以下に来ると。
 赤紙が来た人は、一度本籍のある所へ帰り、そこから出兵しなければならない。
 だから、おじさんは一度本籍地の秋田に帰らなければならず、その時I子さんも一緒に帰るように言われたけれど、また、あの勉強も出来ないで毎日馬糞を集めさせられるようなのはごめんだ。横浜へ行ってもっと勉強したい。高い志を持って横浜に来たんだ!との思いで横浜に残った』
 というお話を昨日伺いました。

 
 まだ15歳の女の子が一人どうやって生きて行ったのか。
 高い志をどう保ったのかを聞かせて下さい。


 「あなたよく覚えているわね。高い志を持って一人横浜に残った後の話は誰にも言っていないのよ。あまりにも酷たらしい話だから。
 こんな話、誰も聞いてくれないし。」

 「そうなんですね。でも、私は聞きたいです。
 その頃の話を是非私達若い人間に伝えて下さい。I子さん達が実際に体験されたことをI子さんの口から聞いたことを、私忘れませんし、私も、もっと若い人達に語り継ぐ責任があります」と伝えると、

 I子さんの普段キリッとした顔が急に崩れ、涙を流しながら、

    「ありがとう。私と同じ体験をした人達も、もう話すべきでないと言っているけれど、話を聞きたいと言ってくれる人にこうして出会えるなんて」

 「きっとこれは運命なのだと思います」と私は言って、I子さんの目をじっと見つめた。

 見つめ合ううちに、私の瞳も濡れるのであるが、その後語られたI子さんの話は、想像を絶する内容であり、私の瞳は濡れることさえ忘れたのである。

ほりべえの日記


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 そして、I子さんの話して下さったものがコチラ ⇓


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 I子さんとほりべえが出会えたこと、伺えたお話の背景はそういうことです。


 では、つづき

2020年(令和2年)8月30日(日)13:00~ 某高齢者施設 2階東にて

I子さんの話 つづき

   結局おじさんは戦死してしまった。


 秋田で私達は勉強も出来ずに、毎日馬糞を集めさせられていた。
集めた馬糞を何にすると思う?燃料にするのよ。それと、小豆で枕を作って、兵隊さんは食べる物がいよいよなくなってくると、それを食べた。
 私達が白いご飯を食べているのに兵隊さん達は小豆なんかを食べている。
子ども心にも、こんなんで戦争したって勝てるわけないって思った。

 
 警友病院で働いている時だって、日本は神の国だ。今に神風が吹くって散々言われた。
 そうやっって寝る間もなく死に物狂いで働いたけれど、やっぱり日本は負けた。
 その時私は思ったのよ。「騙された!何が神風だ!!」って。
 だからね、私県知事の所に乗り込んで行って「神風なんて吹かなかったじゃないかぁ!!」って言ってやったのよ。

 それから進駐軍が来て、蛆虫だらけだった病院から蛆がいなくなって、本当にホッとしたのよ。

I子さんの話


 以上がI子さんの話である。
本筋から外れるので上記には書かなかったが、I子さんが六人兄弟の長女で、兄弟姉妹は一番下の者から順番に亡くなってしまい、今は自分一人残っていること。

 保土ヶ谷で義理のおばさんが私を置いて疎開してしまったことを教えてくれた隣のおばさんの名前は「山下さん」だということ。等も記録として書き留めておく。

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ここまでお読み下さいまして、誠にありがとうございます。m(__)m
今、ここに、こうして生を頂いていることに感謝して♥


(おまけ)
今月の修練でございます
どうぞご覧下さい🛐

生花新風体
椿、胡蝶蘭、しゃが


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