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「競争環境を把握する」とは。

こんにちわ。NEWh 堀です。
今回は、"競争環境を把握する"をテーマに書いてみます。

前回の市場の定量化と同様に、こちらも新事業開発において必ず出てくるテーマ。アイデアの独自性、優位性はどこにあるのか、の前準備/検討の土台として必ず行わなけばいけないステップ。

今回はこの"競争環境を把握するってどういうことだ"、そもそも"競争環境"ってなんだ、をテーマに書いてみました。


競争環境を把握するための「3つの軸」

時間と消費が有限である以上、どのような新事業であれ必ず顧客にとって比較対象となる競合が必ず存在する。
各プレイヤーは工夫を凝らし、顧客に選ばれるために鎬を削り、競い合ってる。けど、この競い合いは闇雲に行われているのではなく、その領域におけるルールの上で行われているもの。このルールにあたるものが「競争軸」。

顧客に選ばれるために、各社が違いを作り出し、競い合っている軸。
価格勝負な市場であれば「価格」が競争軸だし、サポートの充実度で競い合っているような領域であれば「サポートの充実制」が競争軸。競争軸は一つかもしれないし、複数あるかもしれない。
競争環境、及び競争環境を把握するというのは、
「選ばれるかどうかを分つ軸(競争軸)を把握し、各社の立ち位置と動きを掴むこと」である。と言えるんじゃないかと思ってる。

で、この競争軸というものは、
・顧客が商材を選ぶ際の「判断軸」
・プレイヤー側がどこで違いを作り出そうとしているかの「差別化軸」
の両面/重なりから生まれてくるもの
だと思う。

つまり、こういう構造。

競争環境を把握するための3つの「軸」


顧客目線の「判断軸」と3階層

「判断軸」は言葉の通り、顧客が、商品やサービスを選ぶ際の「軸」のこと。顧客が商品やサービスを選ぶ際には必ず何かしらの判断軸がする。
手軽さだったり、価格の安さ、カスタマーサポートの手厚さ、あるいはユーザー規模・実績だったり、商材によって様々な軸が存在するし、
一つの商材だとしても判断軸は複数存在するかもしれない。

ただし、
複数存在する軸も導入・購入意思決定における重要度という観点から捉えると、「実質判断軸」「俎上要件軸」「非関与軸」 という3つの階層に分解されるような気がする。

判断軸の3階層


「実質判断軸」:複数ある軸の中で導入・購入の決め手となる軸。
例えば、中堅中小企業向け福利厚生サービスの場合は、「手離れ感」は意思決定を別つ非常に重要な軸となることもある。
中堅中小企業においては福利厚生を選任で対応されている方は少なく、多くの場合総務や経理など複数の職務を兼任されている場合が多く、彼らにとっては機能の良し悪しや、品質の高さといった軸も重要だし、気にはなるんだけど、それ以上に、意思決定に大きく影響するのが「どれだけ事務負荷を増やさずに導入し、価値を享受できるか」という軸。このように最終的な決め手となる軸が「実質判断軸」。KeyBuyingFactor,KBFと表現されたりもするもの。

「俎上要件軸」:検討候補として俎上に上がるためには必要だが決め手とはなり得ない軸。
福利厚生サービスの例を続けると、「品質」や「実績」などが該当するかも。当然、導入し費用を払う以上、効果が期待できる品質や、すでに導入されているという「実績」は判断に当たっては必ず考慮される軸ではあるもの、品質が高く、実績があれば導入されるかというとそうでもない、あくまで検討の俎上に登るために必要な軸のこと。


「非関与軸」:顧客の商品購入、導入には直接的に影響はしない軸。
福利厚生サービスの例において、従業員の健康につながる運動支援領域のサービスをイメージすると、「カロリー消費量の高さ」のような軸は、軸としてはありうるが導入意思決定には影響しない軸となることもある。
従業員の健康支援領域における問題は、「一部の運動意欲の高い人ではなく、健康診断でアラートが出ており、運動は苦手だが、しなければならない従業員を、どう動かすか」が焦点となることも多く、この場合、カロリー消費量の高さという軸は、運動が得意であったり、既に取り組んでいる層にとっては魅力的だが、運動が苦手な人たちを想起すると利用ハードルを高める要素でもあり、導入意思決定における軸とはなり得ない「非関与軸」となるかもしれない。

(当然、どの顧客を主語とするかで、3つの内容は変わる)

顧客が商材を選ぶ際に気にする軸はなんなのか、その重要度はどこに位置づくのかを把握することが、競争環境を把握する上での1stSTEPな気がする。



プレイヤー目線の「差別化軸」と3階層

一方で、プレイヤー目線から見た差別化軸とは、プレイヤー各社が違いをどこで生み出しているか、違いが生まれている軸のこと。
こちらも、顧客目線と同様に、"違いの強弱"という観点から「実質競争軸」「同質化軸」「独自軸」という3つの階層に分かれる。

差別化軸の3階層

「実質優劣軸」:競合プレイヤー間で優劣が生まれている軸のこと。
各社の特徴や強みを調べていくと明確に優劣が生まれているような軸。フリマアプリ業界とかだと、DL数/ユーザー数、だったり出品アイテム数、或いは、無料から10%で各社に開きが生まれている販売手数料などは各社で差が生まれていて、優劣が発生している軸。

「同質化軸」:各社自社の特徴や強みとして訴求しているが、プレイヤー間で明確な優位劣位と言えるほどの差は生まれておらず、違いを生み出す軸とはなっていない軸のこと。
フリマビジネス領域をケースとして続けると、「配送料/配送機能の充実性」 という軸は、もしかしたらもはやこの同質化軸に位置づくのかもしれない。各フリマプレイヤーは、ヤマト運輸や日本郵政が提供する配送サービスと提携しているケースが多く、提供内容は各社ある程度共通しているような気がする。これが、自社の特徴として紹介してたりするけど、違いを作り出す軸とはなり得ていない「同質化軸」。

「独自軸」:優劣が生まれるような既存プレイヤーとの比較軸ではない、プレイヤー側が提示する新たな軸です。
フリマ領域をさらに引っ張ると、21年に米ECサイト「Etsy」に買収をされたロンドン初のフリマアプリ「Depop」はフリマアプリという領域 で新たな軸を打ち出していたプレイヤー。Depopの特徴は、instagramのような画面UIと、SNSのように互いの投稿への反応や、出品者のフォローといった”フリマアプリらしくない、SNSに近いコミュニティ的な側面にあるらしい。従来のフリマアプリでは、いかに高く売れるか、欲しいものがあるか、いかに安く買えるかといった軸が主であった中で、人とのつながり、コミュニティ性という新たな軸を持ち出し、数千万のユーザー規模まで拡大・浸透に至っている。競合プレイヤー間で競い合いが生まれていない、独自の切り口として存在している軸が3つ目の階層「独自軸」


このように、顧客目線から捉えた判断軸と同様に、競合目線から捉えた「差別化軸」にも違いを生み出す強弱という観点から階層が存在する。


競争軸を炙り出す。

こんな感じで顧客から眺めた際の「判断軸」と、
プレイヤー目線で眺めた「差別化軸」、それぞれの突き合わせから市場において選ばれるかどうかを分つ軸「競争軸」が見えてくる。


判断軸と差別化軸を突き合わせ「競争軸」を炙り出す

顧客にとって商材を選ぶ際の決め手にもなるし、プレイヤー間での優劣も生まれているような軸だったり、独自提供しているようなプレイヤーがいるような軸はわかりやすい競争軸。
また、決め手にはならないが検討俎上に上がるために必要な軸の位置付けだとしても、そこで優劣が生まれている場合も競争軸。

一方で、決め手になるor検討の俎上に上がる軸だが、今は同質化しちゃっているような軸は、そこでもし違い、優位を作り出すことができると競争軸に変わっていくことになる潜在的な競争軸になる。

その他の軸は、現状は選ばれるかどうかを分つ軸とはなっていない非競争軸と言える。

価格、信頼、規模、実績、保証内容の充実性、サポートの手厚さ、スピードやらなんやら"軸"はいっぱいあるけど、
Q.顧客から見た判断軸において、その軸がどこに位置づくのか?
Q.プレイヤーから見た差別化軸において、その軸がどこに位置づくのか?
の2つの問いで眺めると、その軸が市場において選ばれるかどうかを分つ軸となっているのかどうか、が見えてくる。かもしれない。



どう可視化するか。


戦略キャンバス

競争環境の可視化はいろいろなフレームワークがあるけど、個人的には戦略キャンバスが好き。
自社が向き合う市場における軸を洗い出し、
顧客にとっての判断軸の観点から位置付けを把握し、
プレイヤー観点の差別化軸の観点から優劣が生まれている軸を特定し、
突き合わせて競争軸を炙り出す。

その軸がプレイヤー間で優劣を作っているか、は、
競合となりうる各社のサイトの1stViewやバナーで、何を打ち出してるか、
リスティングのTDに何を表示させているか、
自社の特徴ページで何を伝えているか、を地道に掘っていくと、結構見えてきたりするもの。

この可視化を土台として、自社はどこで"選ばれる理由を作るのか、作れるのか"と向き合う。


終わりに

以上、競争環境を可視化する。でした。
ちょっと長く&小難しい感じになっちゃったかもですが、
競争環境を把握するって大事。土台。
競合とは。競合優位性とは。どう規定するか。とかも、競争環境の可視化に連なるテーマなので、その辺りもまたどこかで書く。


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