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【脳科学】睡眠学習

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターは寝ている人の頬を指でつついた事はありませんか?睡眠中にも人は外からの刺激を受けて、生存を維持するために、脳がそういった刺激を感知して、その刺激に反応したり、覚醒を促したりしていることは、経験上ご存知ですよね。

では、そんな睡眠中に聴覚に刺激を与えると脳はそれを記憶しているのか?もし、その刺激を脳が認識しているのならば、それは記憶にも影響を起こすのか?そして、それは学習にも影響を与えることが出来るのか?

今回は、「睡眠学習」についてのお話です。そして、この睡眠学習は50年前に一度日本で広まってちょっとしたブームを起こし、その後、沈静化。21世紀に入って新しい試みによって少しずつ有効性が再度議論されはじめているのです。

睡眠学習とは、眠りながら学習するという勉強法です。

睡眠と記憶の関係は少なくとも200年前、19世紀初頭から研究されており、何と1801年には睡眠中に瞼を閉じた状態で眼球が盛んに動く急速眼球運動が記録されており、20世紀においてシカゴ大学のユージ・アセリンスキーとナサニエル・クレイトマンの研究によって、この急速眼球運動の時間帯に何が起こっているのか研究され、1953年に、睡眠中にも関わらず、この運動が見られる時には、起きてるのと同様に脳が活性化していて、その反面、骨格筋は力が入っていない弛緩状態を保ち、運動機能が抑制されていることが分かりました。

その際に眼球だけは脳との結びつきが強くて眼球の筋肉が連動して盛んに動くという事も分かりました。そして、この時間帯に脳は夢をみているそうです。

これを 急速眼球運動睡眠の状態、「Rapid Eye Movement Sleep」と呼び、その頭文字をとって「R.E.M.睡眠」、REM睡眠と呼ぶようになりました。

人は通常では、睡眠に入って一旦は眼球運動を伴わない深い眠り、ノンレム睡眠の状態になり、そこから1時間から2時間ほどの間に、睡眠が浅くなって、レム睡眠が始まるそうで、そのあと、レム睡眠とノンレム睡眠のワンセットを90分から110分を1周期として繰り返しているのです。その、レム睡眠の際に、研究者は記憶に影響を与えることが出来るかもしれないと考えていました。

そして、1960年代に日本で枕にループ再生ができるカセットテープのレコーダーを組み込んだ「睡眠学習機器」が製品化され、1970年代に大ヒットしたのです。

この睡眠学習機器は累計50万台も売れましたが、このテープに前もって覚えたいことを録音する事で本人が記憶することはあっても、睡眠中に聞くことだけでは大して記憶に影響しないという認識が広まってから、市場から姿を消してしまいました。

1970年代に50万台も売れた睡眠学習枕・・・

その後、睡眠学習の熱は一旦下がりましたが、2009年になって、アメリカ合衆国イリノイ州のノースウェスタン大学が画像の記憶と音の結びつきの実験を行った際に、実験の夜に被験者に再度、再生された音を聞かせると、画像の記憶の固定化が起こっていることが確認され、更に2012年には、イスラエルのワイツマン科学研究所の神経学者のグループが覚醒時の学習とか無しに、被験者の睡眠中に匂いと音を条件づけて記憶させることに成功し、睡眠中に感知できる身体の器官において、新しいことを学習させる可能性が見えてきたのです。

ノースウェスタン大学とワイツマン科学研究所

そして、2014年、スイス国立科学財団の生体科学者ビョーン・ラッシュの実験によって、眠っている間に外国語を聞き流すのは、学習に効果があるらしいことが実験によって確かめられたそうです。

この実験は60人の主にドイツ語しか話せない生徒を被験者として行われました。

ビョーン・ラッシュはこの生徒を半分の30人ずつに分けて、2つのグループを作り、それを22時つまり、深夜10時に彼らが初めて学習するオランダの言葉を幾つか学ばせました。そして、ひとつのグループは仮眠を取らせその仮眠中に、もう、ひとつのグループは起きたままの状態で午後10時に学習した単語と同じものを聞かせました。

そして、午前2時に仮眠中の生徒を起こして、眠らなかったグループと一緒に、その単語のテストを行ったのです。

結果は、仮眠中に睡眠学習をしていた方が、眠らずに録音を聞かせていたグループよりも単語の意味をよりよく理解していたという事が判明しました。

なお、仮眠したグループは、睡眠学習の際に脳のシータ波が増大していたそうです。

実は脳波のひとつ、シータ波は脳の海馬という部位で観測され、記憶形成を担う海馬の脳内神経物質ニューロンの分化を促進する脳波であり、主にレム睡眠で発生し優勢に働いているそうなのです。

海馬は大脳辺縁系のひとつで、目から脊椎にかけて一直線上に線を引き、その脊椎上部から後頭部にかけて取り巻くように存在する、主に脳の記憶や空間認識に関わる部位で、アルツハイマー病にかかると、まずは海馬から変化すると言われています。また、心的外傷ストレス障害や、うつ病に罹患した場合には海馬の萎縮が見られるそうです。

つまり、2014年の実験はレム睡眠の際に、人は学習ができる可能性と、記憶をより効果的に定着できる可能性を示したのでした。

ただ、この実験では、起こされていた生徒は睡眠不足によるパフォーマンスの低下が起こっていたのではないか?という疑問もあり、また、睡眠中に音声を聞かせ続けることは、安眠を妨害することにつながり、本来の睡眠の効果を損なっているのではないか?という疑問もあるのです。

睡眠と記憶の関係は、まだまだ研究で明らかにせねばならない事が沢山あり、実験と検証を積み重ねることで、将来、人は効果の高い睡眠学習の方法を確立するかも知れませんね。

今回はWIRED.jpの「外国語を学ぶには睡眠学習が効果的:研究結果」と、ウィキペディアの「睡眠学習」「レム睡眠」「シータ波」「海馬」などの項目からお話しました。

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それではまた、らいら〜い🖐

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