懐かしい歌を

懐かしい歌を
           蓬莱ほっぽ

飛行機の轟音が空を割り 遠ざかる
見上げた鼻っ柱に花びら ひらり

飛ぶことも
舞うこともできない私は
懐かしい歌を一節 春に霞んだ空へ放った

轟くことも
響くこともない
懐かしい歌を一節

年老いた唇を潤す
森の奥の泉のような歌だ

白布の下にあっても
乾くことのない歌だ

ここまで私の手を引いて来た
鬼火のような歌だ

鳴くこともなく
飛ぶこともなく
平々凡々な私の唇に残る

いつかお前と歌った歌だ


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