痛みを抉るのはLemonの歌詞
米津玄師のLemonは、亡き祖父を思う歌だという。
この歌を聴く前から、私も時折祖父を思う。
祖父が亡くなって間もなく4年が経つ。
ふとしたとき、祖父が書斎で調べ物をする姿、巨人戦を観る姿、犬を散歩する姿、私達を撮る姿。祖父の姿を思い出す。
あの時、もっと話をしていれば。
そばで話を聞いていれば。
あまり口数の多い人ではなかった。
色んなことを考えている人だった。
でもその中を知れることは滅多になかった。
ただひとつ、私を、従姉を思ってくれていた。
受験する私を、就職せず進学する私を、時間をかけてようやく就職する私を、応援してくれた。
最期、あんな形で世を去る時、声も出なくなったあの時、私や母が、祖母が足をさすり、冷えていく体の温もりを絶やさぬようにすがっていた時、祖父はなにを思っていたのだろう。
あの時、祖母は、最後に事切れる時まで涙を流さなかった祖母は、あの時、そしてあれから、今も、なにを思うのだろう。
祖父は。祖母は。なにを。
時々、8ミリフィルムのような景色の中で祖父の姿を見る。
書斎にいる姿、犬を抱く姿、カメラを構える姿、ベッドに横たわる姿。
光は遥か頭上にしかない暗い井戸の底で、マッチの火のようなか細い光の中に、8ミリフィルムの映像のような景色の中で、祖父の姿がある。
はっと我に帰ると、そこには祖父が死んで4年が経つ、平成も終わる今がある。
言いようもない気持ちに満ちた心をしまって、日常に戻る。
あなたが応援してくれた進学を経て、私はほんの少し活躍出来る場面を持てた。
あなたが示してくれた道の先で、私は夢見た世界に少しだけ近づけた。
あなたがいなくなったせいで、私の心は言い残した言葉で溢れている。
今でもあなたは私の光
この歌は、ちょうど私の心にダブり、代弁し、抉る。
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