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「武士の娘」(杉本鉞子)を読んで

中の上くらいの割といい家柄も武士の家に生まれた次女の物語。兄は出奔と言って、クリスチャンになって家をでてしまい、それだけでも大変なことだが、主人公も日本人男性と結婚してアメリカで生活したりもする。江戸時代が終わって明治になった激動の時代に、女の子は慎み深く気品も高く兼ね備えていないといけないとか、武士の娘は泣いてはいけないとか、子供のころから厳しくしつけられる。
 長岡の実家では義務を重んじる環境から東京で自由な精神を学ぶ。
 日本の女性は慎み深く優しく、そして耐え忍ぶことが当然であると教えられていたが、アメリカの女性は自由奔放に自然のまま人生を謳歌しているように感じる。当初、日本の習慣とアメリカの習慣の違いに戸惑ったりもしたけど、二人の女の子を生み育てる。旦那に先立たれてしまい、一度、東京に戻るが、また、アメリカへ行く。なにかと大変な人生だったと思うけど、姉や母や祖母の支えがあったことが心強かったと思う。
 僕なら東京での都会の生活で十分満足するだろうけど、クリスチャンだからアメリカの方がいいのかな。いろんな、エピソードや逸話がところどころに散りばめられていて、「南総里見八犬伝」のあらすじとかも勉強になった。日本人は奥ゆかしいが、アメリカの女性も男性から声をかけられて、初めてイエスかノーかの返事をするころも、アメリカの女性の奥ゆかしさを感じた。
 「無駄な犠牲は何ももたらさない。自由と希望に通じるのは自尊心である」という言葉が印象的だった。

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