理念経営2.0 ―― 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ
ちょうど、理念刷新を進めている真っ只中に出会えた書籍。
本書は、理念(ビジョン、ミッション、バリュー、ナラティブ、ヒストリー、カルチャーなど)とは、経営者の声明以上のものであるべきであり、会社の暗黙の信念を反映するストーリーテリングの源泉であるべきで、意思決定の指針となり、従業員を鼓舞する力となるべきだと説明する。
また本書は、「哲学的研究開発」という概念も探求している。これは、従業員が会社の目的と価値観について話し合い、疑問を投げかけるための空間を作ることを意味し、共有された感覚を発展させることができる。哲学的研究開発の目的は、従業員が自分たちのアイデンティティを再確認することであり、会社の目的と価値観に基づいた共通の問題を共有することで、従業員が自分たち自身を見出すことができるということである。
経営者が考えるべき重要なポイントは、会社の目的、価値観、ビジョンに基づいて、共通の物語を作り出すことである。著者は、従業員が自分たち自身のアイデンティティを再確認するために組織に属することが重要であると指摘しており、会社の目的と価値観に基づいた共通の問題を共有することで、従業員が自分たち自身を見出すことができると説明している。
本書は、従業員の共通の問題を共有することが、会社にとって非常に重要であることを示している。会社は、暗黙の信念に基づいたストーリーテリングを通じて、従業員を鼓舞することができ、その結果、成功を収めることができる。起業家、経営者、リーダーにとって、本書で提唱される理念経営のステップを参考にし、自社のビジネスに適用することで、企業の成長にアクセルをかけられる素晴らしい作品でありました。
””これからの企業理念は、「社長の誓い」ではなく、「みんなの物語」の源泉としての性格を持つようになる。そんな理念をつくるには、組織のなかに暗黙裡に存在する思想を掘り起こし、言語化していくことが必要となる。 つまり、理念経営の常識そのものが大きく変わりつつあるのだ。 ここで、「社長の誓い」としての企業理念を植えつけていく経営スタイルが 理念経営1・0 であるとすれば、あくまでも「みんなの価値創造の物語を生むためのソース」として企業理念を位置づけていくあり方は 理念経営2・0 と呼ぶことができるだろう。 こういう話をすると、日本でもヒットした『ティール組織』を連想する人もいるかもしれない。同書の著者であるフレデリック・ラルーは、社員一人ひとりが自律的に働きながら全体として進化していく、生き物のような新しい組織の形を提唱している。 そのなかでもとくに大事な考え方が「進化する目的」という考え方だ。ここでは、組織の理念は、つねにその組織のメンバーによって探究され、アップデートされていくものだととらえられている。大義の旗を掲げたとしても、それはあくまで「現時点でのもの」であり、実際に組織を運営していく過程でどんどんアップデートするほうがいいという考え方~””
””重要なのは、 社員それぞれが自分たちの理念について、つねに自問自答し語り合う場を持つこと だ。「自分たちはなんのために存在するのか?」「自分たちのミッションはなんなのか?」という問いは、個人に置き換えてみると、「自分はなんのために生きているのか?」「自分が人生で達成すべき役割とはなんだろう?」という自分探しの問いだ。 このような問いは、直接的には会社の売上・利益につながらないので、無駄な行為に思えるかもしれない。しかし、自分たちの理念について話し合う場というのは、いわば「企業の思想版R&D」のようなものだ。こうした語り合いが蓄積されていくことで、一人ひとりのなかに、そして組織のなかに思想の根が広がっていき、事業そのものが堅固になっていくので~””
””ポジティブ心理学の研究者フレッド・ルーサンスらの著書『こころの資本——心理的資本とその展開』によると、不確実な環境において幸せに生きられる人は、希望(Hope)、自己効力感(Efficacy)、レジリエンス(Resilience)、楽観性(Optimism) という4つの心理的資本を持つとされる””
””ビジョン構想に関わることで、参加した人は「希望」を強化する要素としてあげられている「胸を躍らせるような未来の目標」を考えることになる。また、ビジョンを構想したことがある人は、自然に楽観性が高まるとも言われている。あらかじめ未来像をシュミレーションすることで、先が見えない世の中に対して楽観的に向き合うための「心の資本」が育つわけ~””
””また、長期的なビジョンを明確化して伝え、共感してもらうことで、社員に希望を与えることができる。希望に満ちた組織は、メンバーの目標達成を促進するための機会を探し求め、創出することに積極的になるという。 先が見えない世の中で、自分たちの方向性を示すのがビジョンだ。ビジョンを仲間と策定すると、方向性を共有できるだけではなく、より豊かな心理的資本を持ったチームをつくることができるのだ。 形式化した中期経営計画から、~””
””「経済的利益と社会的意義、もし迷ったら社会的意義を優先しよう」 ミッション至上主義になってしまうと、自分たちのやることに制限がかかりすぎてしまうし、経済性を過度に低く見てしまうことにもなりやすい。「経済性も社会的意義も両方大事だ。ただ、もし迷ったら社会的意義を優先しようぜ」くらいのゆるさを持って運用することが効果的だと~””
””「企業の発達段階に合わせてつくるパーパス」 ここまで、企業のミッションとパーパスをほぼ同じものとして扱ってきた。実際、その用語法にはそこまで大きな意味はないと思うが、いまの時代にパーパスを策定することの意義についても少し触れておきたい。パーパスとは、社会のなかで果たしたい役割を定義することにほかならない。 一般的にパーパスは、存在意義や志などの訳で語られることが多いが、僕は社会的存在目的という訳がいちばんしっくりくると思っている。つまり、「あなたの組織はいったいなぜ、この社会に存在するのか?」という問いに対する答えだ。これだけだと少し抽象的なので、具体的な問いで考えてみよう。
・なにが達成できたら、自分たちは社会からいなくなってもいいのだろうか?
・逆に、自分たちがいなくなったら、社会はなにを失うだろうか?
こうした問いに対する答えが、パーパスだ。成熟期を迎えた大人が自分の残りの人生の時間軸を意識し、自分の実存がどこにあるかを自問するのに似て~””
””しかし、 すべての企業が社会善を語るのは誠実なことなのだろうかと疑問を感じることがある。「そのほうが社員も関係者も巻き込める」という戦術的なあざとさが見え隠れするようにも思う。というのは、人間の発達段階のように、個々の企業にはパーパスを持つにふさわしい段階があると思うからだ。 ある急成長している小売業の会社の経営者に、「あなたの会社の社会的な存在意義とはなんだと思いますか?」と質問したことがある。例の「 10 年後に売上規模2兆円」を目指しているという企業だ。 するとその経営者はこう答えた。 「いまの売上規模だとまだ社会における必要不可欠な存在にはなれていないと思います。その段階で、いまの自分たちの社会における意義なんて、大それたことは考えられません。2兆円規模の売上のある存在、つまりコンビニチェーンくらいの存在になって初めて、社会的な存在意義を考えられるようになるのではないでしょうか?」 非常に誠実な姿勢で、僕は感銘を受けた。成長期のメンタリティを持った企業は、まずは社会的意義を考えられるようになるまで、成長し続ければいいの~””
””ただ、確実に言えることがあります。理念経営1・0が創業者や組織の「答え=正解」を示すものだったのだとすれば、理念経営2・0の核心は「問い」にあるということです。 ですから、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなどの企業理念がすぐれたものであるかどうかは、それが会社のすべてのステークホルダー、とりわけ社員に対する「問い」として機能するかどうかにかかっています。 もしそこから、働く人たちの主体的な語りや探究が生み出されているなら、その企業理念はまちがいなく会社の経営資源になってくれています。これからの経営者に求められているのは、そうした「みんなの物語」が生まれてくるための「問う仕組み」をデザインすることなの~””