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これから「週チャオ」の話をしよう

おはようございます。またはこんばんは。

世の中にはこのnoteを小説投稿ツールとして使っている方もいらっしゃるそうで、ツールというのは使いようなんだなぁと思う次第であります。

さて、私も昔は小説を書いていました。
当時は中学生~高校生ぐらいだったので、とてもここではお見せできるクオリティではないので載せたりはしませんが…

今回は、当時私がその小説を掲載していたプラットフォームであり、日本のインターネット初期の遺産の1つ(大袈裟)である「週チャオ」について、敢えて何も知らない人の為に一から説明してみるという色んな意味で暴挙に挑戦してみたいと思います。
※身内や関係者が読むとツッコミを入れたくなる箇所があると思いますが、敢えて「分かりやすさ」を軸に事実関係を整理していますので、大目に見てやってください…

◎そもそもチャオってなんぞや​

「チャオ」というのは、セガのゲームである「ソニック」シリーズに登場するキャラクターのことです。
http://sonic.sega.jp/SonicChannel/character/chao.html

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ぷるぷるでぽよぽよのかわいいやつです。

この「チャオ」が初登場したのが、1998年末にドリームキャスト向けに発売された「ソニックアドベンチャー」というゲームソフトでした。

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◎BBSという時代

この頃、セガは自社で参加者が自由に書き込みできる掲示板「セガBBS」を運営していました。
日本のインターネット史においてこれは(大袈裟ではなく)特筆すべきファクターなのですが、この辺りの詳細まで説明していくと本題から外れちゃうので、気になる人はGoogleさんあたりに尋ねてみてください。

その流れを受け、この頃発売されたセガのゲームソフトの公式サイトには、ほとんど公式BBSがありました。
ソニックアドベンチャーはセガの看板キャラクターであるソニックの新作ということで、3種類のBBSが設立されました。
それが「ビギナーたちのBBS」(ビギB)、「クリアした人たちのBBS」(クリB)、そして「チャオのBBS」(チャオB)。

上記2つはともかく、なぜ一キャラクターに過ぎないチャオに専門のBBSができたかというと、チャオがソニックアドベンチャーのゲーム内で「育成」することができるキャラクターだったからです。
この辺も本題とは外れるので詳しくは割愛しますが、その奥深さと可愛さでハマる人が続出。結果、チャオBはビギBやクリBよりも遥かに賑わうこととなりました。

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発売から1年近く経った1999年10月のものですが、InternetArchiveから引っ張り出してきました(初期のログはInternetArchiveにも残っていません)。時代を感じるワードがちらほら…

◎話題の枯渇と小説の流行、そして自治

しかし、ソーシャルゲームやオンラインゲームのようにアップデートがある訳ではなかったので、当然のことながら発売からしばらく経つと一通り話題も出尽くしてしまいます。
その結果チャオBで何が起きたかというと、二次創作である「チャオ小説」が流行したのです。
当時のインターネット環境だと動画はもちろん、イラストでの交流というのも難易度が高かったので、キーボード1つあればチャオを表現でき、さらに交流もできる小説というのは最適な表現方法でした。

しかし、小説の流行により、今度は本来のゲーム内でのチャオの話題が流れてしまうことが問題視され、当時の住民が話し合った結果、「毎週土曜日に小説専用のツリー(スレッド)を立てて、小説はそこへの返信で書き込む」というローカルルールが生まれました。

こうして生まれた小説専用ツリーの名前が「週刊チャオ」、略して「週チャオ」だったのです。

◎独自の文化と逆輸入?

ところで、「ソニックアドベンチャー」内でのチャオは喋りませんし、知能も人間でいえば5歳前後の子供と同じぐらい、と設定されています。
「週チャオ」に投稿されたチャオ小説も初期はその設定に沿った作品が中心だったのですが、だんだんとエスカレートし始め、ついにはゲームの設定を逸脱する…どころか、巨大ロボットに乗って宇宙戦争をけしかけたり、闇の魔王を倒すために七つの海を巡る大冒険が始まったり、鬼殺隊やらサーヴァントやらレベル5の超能力者やらもびっくりの能力バトルをおっ始めたりしてました。
もうここまでくると、二次創作の皮を被った一次創作であり、通常インターネットで見られるような二次創作とは趣が異なる作品群が投稿されるようになっていきました。
(念のため付け加えておくと、当時からこんなのは最早チャオじゃない、もっと本来のゲーム内容に沿った作品を投稿するべきだ、という意見はありました)

こうして、チャオB、そして週チャオは、原作となったゲームからも逸脱した、当時としても他のネット界隈とは一線を画す独自の文化を作りあげていきました。
ここまでくると、「チャオBや週チャオ独自の雰囲気や文化にハマったが、正直チャオ自体にはそこまで興味がない」という住民まで現れました。ホップスターっていうんですけども。

ともかく、これをうけてか、2001年に発売された続編である「ソニックアドベンチャー2」では、一部でチャオが人間と同じ言葉を喋ったり、チャオがロボットに乗ったりしています。

これは2019年に公式が制作した「CHAO IN SPACE」というショートアニメ。あくまでも夢の中とはいえ、チャオ同士が宇宙でロボットに乗って戦っています。

セガ側が明言している訳ではありませんが、個人的にはこのあたりの要素は、チャオB・週チャオの独自の文化を公式が逆輸入した結果だと思っています。(願望込)

◎その後どうなったか

しかし、2000年代も後半に入るとこういった「公式掲示板を介しての交流」そのものが廃れていき、インターネット上での交流はブログ、そしてSNSへと変遷していきました。
また、チャオを育てることができるソニックシリーズの新作が途絶えたこともあり、チャオBも2008年に実質的に閉鎖、週チャオも程なく休刊となりました。

…しかし、一部のチャオB残党はツリー式掲示板をレンタルした上で、2020年の現在でも細々とですがチャオ小説の投稿を続けています。
2008年に休刊したはずなのになぜか2018年に開設されたTwitterアカウントもあります。ほとんどつぶやいていませんが。

20年以上も経って一体何を考えているのでしょうか(褒め言葉)。

◎まとめ

…つまるところ、この記事を通して何が言いたいかというと、

2000年前後というインターネット黎明期に「週チャオ」っていう独特のネット小説文化があったんだよ、ということ。

当事者の一人として、これはどこかに分かるように書き残しておかねばなるまい、ということでこのnoteに残します。
10年後ぐらいにまた新しいプラットフォームが流行したら、それに合わせてこの文章も改定して載せ直したりするかもしれません。私が生きていればの話ですが…

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