新型コロナ 若者が重症化しやすいは本当か
最近、新型コロナウイルスの変異株によって若者が重症化しやすくなっているという報道が盛んにみられる。この投稿を書いている今日(5月15日)、インターネットで若者の重症化について検索するとそれに関連した記事やテレビニュースの動画が大量に出てくる。
読売オンライン 都内新規感染の6割が30代以下…「若い世代でも重症化の恐れ」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210513-OYT1T50083/
時事ドットコム 変異株猛威、若年も重症化 コロナ急拡大の大阪府https://www.jiji.com/jc/article?k=2021042000967&g=soc
時事メディカル コロナ、変異株の脅威 ~若年層も危険~https://medical.jiji.com/topics/2123
NHK 都心の病院も満床に近い状態 若い世代や基礎疾患なくても悪化
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013031211000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_071
NHK 「感染して初めて恐怖を… 緊張感薄れてた」渋谷 20代女性https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210514/k10013030051000.html?utm_int=all_side_ranking-access_002
これは一部の例であるが、非常にセンセーショナルに若年層のリスクを強調する報道がなされている。これらの報道だけを見れば、基礎疾患のない若者でも感染すれば重症化し死に至るリスクが高いと受け取る人が多いだろう。
果たしてこれは本当だろうか。そもそもこれらのニュースで若年層の重症化リスクについて書かれていても、根拠が書かれていない。実際にどのくらいリスクが高まるのか、以前と比較してどのくらいリスクが高まったのかなどはほとんど述べられていない。
では根拠はどこにあるのか。
衆議院議員の青山雅幸さんが衆議院の厚生労働委員会で積極的に質問し、ブログも書かれているので参考になるが(https://ameblo.jp/masayuki-aoyama/entry-12674434721.html?frm_src=thumb_module)、実際は根拠となる数字はほとんどない。むしろ全体で見れば重症化の割合は下がっているという事実がある。これについて5月12日の厚労委員会では田村厚労大臣も「大阪で若い世代が多いのは、感染者(絶対数)が多いから、重症者数が多いと見えているのかどうか、よくよく分析したい。」と述べており、実際には国も正確な実態を把握していないのである。唯一、変異株の重症化リスクについて、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで以下の報告があるが、この結果では、40-64歳において重症化リスクを高めるとの報告があるだけで、20代、30代では有意差はないとしている。しかも、「本結果のみから変異株の重症度について結論づけることは困難。」と述べている通り、未だ不確実性が高いのである。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000779013.pdf
2/10~5/6の期間に報告された症例のうち、変異株症例※115,451例(変異株群)と、N501Y-PCR
検査が陰性であった4,490例(変異株PCR陰性群)等について、発生届における「症状」等を比較。
※1 ウイルスゲノム解析で英国株と確定した症例又は変異株PCR陽性だがゲノム解析結果が確定していない症例
• 性別、年齢、報告週、都道府県、重症化リスク因子となる疾患の有無について補正すると、変異株群は、変異株PCR陰性群と比較し、診断時に肺炎以上の症状を有している※2リスクが1.4倍であった※3。
※ 2 発生届の「症状」に「肺炎像」、「重篤な肺炎」、「多臓器不全」又は「急性呼吸窮迫症候群」が記録されているもの。
※ 3 年齢層別の解析では、40-64歳の年代において有意差があり、その他の年代については有意差はなかった。
• ただし、発生届における「症状」は医師が診断した時点の情報でありその後の経過に関する情報はない等の制約により、本結果のみから変異株の重症度について結論づけることは困難。
その上、5月14日衆議院厚生労働委員会で青山雅幸議員が発言しているが、感染者のうち全数を変異株かどうか調査しているわけではないので、変異株感染者のうち重症化した人が多いとしてもそれだけで、変異株に感染した人のうちどのくらい重症化しやすいかは示せない。
そもそも、上記のアドバイザリーボードに書かれているが、現在20-30代の感染者が多くなっており、それに従って重症者が増えるのは当然であり、果たしてリスクが向上しているのかは不明である。
現状のデータでは、不十分であり、「リスク上昇の可能性などと濁しながらも」とあたかも確定的報じるマスコミの姿勢はいかがなものか。変異株の大本である、イギリスではジョンソン首相が変異株は死亡リスクを高める可能性があると1月に述べていたが、当時はまだ情報も少なくしっかりした論文も少なかった。しかし、4月になり、以下の論文が発表されている。
ロイター コロナ英変異株、入院患者の重症化リスクは他と同等=論文
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-variant-lancet-idJPKBN2C008K
このように、当時の印象と実際の分析では異なる場合もある。マスコミの報道は、医者の印象や感覚的な要素でしかなく、いたずらに国民をあおっている。(危険を訴えて何が悪いというのはナンセンスだろう)国はしっかり調査を行い、正しい情報を発信してもらいたい。
また、最近では基礎疾患の無い若者でも重症化リスクが高まっているという報道もあるが、これも感覚、印象による報道でしかなく本当だろうか。正確性に欠けるのはご容赦願いたいが、Twitter等でのコロナの重症病棟に関わっている医療関係者のつぶやきを見ると、肥満による影響が強いという意見が多い。また、当初から指摘している喫煙歴はどうなのか、また確定診断がなかったが基礎疾患はなかったか、などそういった要素が抜けている。本当に、基礎疾患もなく、健康な若い世代が死亡するリスクが高いのか、甚だ疑問である。
様々なデータとともに若年層の重症化リスクについて述べてきたが、今回の新型コロナウイルスを考えるとき重要なのが、リスク評価だろう。リスクをどう捉えるのかである。
東洋経済のサイト(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/)から年代別陽性者の割合や死亡者数を確認するが、5月5日時点のデータで20代は感染者132490人のうち死者は3人、30代は89672人のうち19人、40代は87155人のうち78人である。20代は44163人に1人、30代は4719人に1人、40代は1117人に1人である。仮に変異株で若年層の重症化リスクが高まっているとしても、上乗せされるのは数人~十数人程度この数字を大きく変えるとは思えない。比較用に参考にするが、自動車事故で死ぬ確率は10000分の1と言われている。20代の若者がコロナに感染し、そのうえで重症化し、亡くなるよりも4倍自動車事故で死ぬ確率が高いのである。もちろん単純比較できるものではないが、どの程度のリスクかを知るためには重要な情報だろう。
また、興味深い比較例がある。2009年の新型インフルエンザの事例である。厚労省の2010年3月時点でのデータである。(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/rireki/100331-03.html)
流行開始が2009年の春なので、だいたい1年間の死者数であるが、20代以下に限っては現在の新型コロナの方が死者数が少ない。しかも基礎疾患の無い方もなくなっているのである。確かに、高齢者は新型コロナの方が致死率が高いように見える。施設でのコロナの集団感染による死者について報じられるが、これも毎年インフルエンザの時期になれば施設で集団感染が発生しその中で亡くなる方も一定数いらっしゃるのである。
これらのデータを見て何を思うだろうか。私は、コロナだけが恐ろしい病気は思えない。人間は生老病死は避けることができないと言われるが、特に病気は生活と表裏一体に関わっている。コロナだけではない。がんや様々な疾患もある。昨年の若者の死因の第1位は自殺であり、その下に不慮の事故やがんがある。コロナはごくごく一部なのである。
今のマスコミの報道を見ていると、このような正確な判断ができなくなるように感じる。マスコミは見出しで読んでもらう、見てもらう、ことを意識するため、危険度リスクを強調する報道になりがちである。今こそ、「正しく恐れる」というのがとても重要であると思う。この「正しく」というのは決してマスコミの報道から得る情報ではない。どれだけ自分でリスクを判断できるかであろう。
不幸なことに、若者の自殺が増加し、昨年から今年にかけて子どもの出生数が大きく減少しているという。日本中に覆う、恐怖と不安感、憎悪、そういった感情がこれからの日本を担うべき若者の行動を阻害している。コロナだから仕方がないとか、今は感染者を抑えるためにしょうがない、ではないのである。アメリカは日本よりも100万人当たりの感染者が多いにも関わらず、強力な規制が解除されてきている。この状況をどう考えるのか、よく考えてもらえたら幸いである。
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