見出し画像

観覧車の思い出

子どもの頃は遊園地が苦手だった。
スピードの出る乗り物と高いところは怖かった。

速いからイヤ、目が回るからイヤ。

だから、遊園地に行っても近所にもあるコインを入れて動く遊具を見つけるとホッとした。

「あった、あった」と駆け寄って一番に乗っていた。
弟と並んで何度も乗っていた。

十代になっても遊園地で乗れるのは観覧車だけ。

高いけれど、ゆっくりなので怖くない。

景色がみるみる変わり、空に近づいて行くのが好きだった。

今まであーだ、こーだと言いながら歩いていた地上から離れ、人々もしだいに小さくなり、自分だけが違う空間に行くよう。

バイバーイ、と手を振るのが心地よかった。

もうすぐテッペンだね。どんな景色が見えるのかなとわくわくする。

小さくなった私たちのいた町を見下ろして、
小さい自分を想像してみる。

短い距離を行ったり、来たりしながら、
小さな私のもっと小さい心の中には喜んだり、悲しんだり、不安だったり、焦っていたり。小さな想いがたくさん詰まっている。

「頑張れ」と空の上から声をかける。


観覧車のゴンドラの小さな窓から小さな私が応援してみる。





サポートいただきました温かいお心は、他のnoterさんにも繋げていきます。有料記事を買ったり、サポートしたり、みんなで頑張っていきたいです。