“おちょやん”のその後〜映画「女系家族」の浪花千栄子

以前、NHK朝の連続ドラマ「おちょやん」について少し書いた。その際、モデルである浪花千栄子に降りかかる、渋谷天外との離婚。それも、劇団の若手女優と天外との関係、女優の妊娠といったことに起因するものであったことについては触れなかった。

朝の連続ドラマという性格上、この展開については取り上げられないのではないかと思ったからだ。予想は裏切られ、おちょやんは悲劇に陥り、“朝ドラ受け”を担う「あさイチ」冒頭で、鈴木アナは連日怒っていた。 

4月26日の週では、おちょやんは再びラジオドラマで芝居の世界に戻る決意をする。 塚地武雅が演じる役のモデルは、花菱アチャコだ。そして、宮澤エマ扮する栗子と千代、花籠の秘密が明らかになるシーンは感動的だった。観ながら、“紫のバラの人は栗子だったんだ”(説明はしませんが)と思っていたら、番組ディレクターが、そのように宮澤に説明していた。

浪花千栄子がラジオドラマで復帰するのが1950年ごろ、その約10年後に浪花千栄子が出演した映画「女系家族」がWOWOWで放送されたので観た。

原作は山﨑豊子。大阪船場の商家の主人が亡くなり、その三姉妹による遺産争い、これに番頭や主人の愛人が絡みドラマが形成される。長女が京マチ子、愛人が若尾文子、番頭には2代目中村鴈治郎。また、長女の裏で動くのが田宮二郎である。そして、浪花千栄子の役は、三姉妹の叔母。三女役の高田美和を後ろからバックアップし、このゴタゴタの中で自らのポジションを獲得しようと動く。

全編通して大阪の商家の空気が良く出ている。浪花千栄子著「水のように」の解説で、古川綾子がこう書いている。

浪花千栄子は<関西を舞台にした映画やドラマには欠かすことのできない女優といわれた>。そして、監督からの信頼も厚く、共演者への指導も依頼されていた。香川京子や淡島千景などが、<方言始動だけでなく立ち居振る舞いなども、親切に教えてもらったと感謝とともに語っている>。

この「女系家族」においても、浪花千栄子の指導があったのではないかと想像させられる。中村鴈治郎と浪花千栄子、関西を代表する二人の存在が、直接的・間接的に、ドラマの世界を造形していると思う。

そして、浪花千栄子の演技を観ていると、杉咲花が重なる。多分、杉咲は浪花の過去の映像を観ているのだろう。「おちょやん」を経て、杉咲花がどんな女優になるのか。これまた、楽しみである

蛇足だが、今日(5月3日)の「おちょやん」を観ていて、ふと気がついた。芝居茶屋の「岡安」がうどん屋になっているが、このモデルは先日うどんすきについて書いた、道頓堀の「今井」ではないかと。「今井」のHPをあたると、はたして元は芝居茶屋だった。こんなネットニュースもあった

「女系家族」、5月16日、6月23日にもWOWOWで再度放送される


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