和歌に彩られた青春「ちはやふる」を読み切る〜ラスト10巻は怒涛の迫力
末次由紀のマンガ「ちはやふる」の連載が始まったのは2008年。新しいマンガにさほど目を向けていなかった私だが、翌2009年に創設間もないマンガ大賞(第2回)を受賞したことで、意識の中に入ったのだと思う。競技かるたという、馴染みのない世界を題材にした青春ドラマは、非常によくできており、主人公の綾瀬千早の魅力もあって、しばらく読み続けていた。
途中から、フォローするのが若干辛くなり〜というのも最新刊が出ると、前の記憶が薄れていて前巻を読み返さなければならない〜取り敢えず出たものを買って寝かしていた。連載が終了してから読もうという腹だ。しかし、一向に連載が終了する気配はなく、昨年になって遂に“「ちはやふる」完結!“とのニュースが入ってきた。最終巻は第50巻、昨年12月に発売された。
これに向けて、私は第1巻から読み始め、昨年12月に最終巻の発売にシンクロするはずだったが、そんなに上手くは行かない。「ちはやふる」を読了するまでは、他のすべてのマンガを封印したのだが、読み切ったのは2023年2月25日。
「週刊少年ジャンプ」のモットーとして有名なものに、『努力・友情・勝利』というものがある。少年マンガとして成功するための3要素とも言える。「ちはやふる」は、それを少女マンガ、そして競技かるたという特殊な世界で描き切ったと言える。
読み始めた当初は、上記の主人公・高校生の千早と、真島太一と綿谷新という二人の男性の関係性にドキドキしたのだが、読み終わってみると、それはあくまでも少女マンガという世界の中の、スパイスであってメイン・テーマではないと感じた〜彼らと私の年齢差のせいでもある。
それにしても、長いマンガである。今時の流行りの“タイムパフォーマンス“という世界とは真逆である。作者の末次由紀にとっては初めての連載であり、途中、正直“ダレ場“もある。しかし、最後の10巻程度は、怒涛のフィニッシュであり、そこにたどり着くと、この“長さ“が必要だったように思える。
『努力・友情・勝利』、「ちはやふる」はかるたというスポーツを通してそれらを表現すると共に、和歌の奥深さ、日本語の美しさを訴える。ドラマの序盤ではまだつぼみのようだが、その重要性が終盤にきて一気に花開く。その点に関しては、千早の友人・大江奏と、かるた界の女性チャンピオン、クィーンとして君臨する若宮詩暢の存在が貴重である。私も、登場する百人一首の意味を、都度調べることもあった。
かるた競技〜百人一首という、ほとんどの人が身近なものとは感じない世界を中心に、高校生活を送る若者たち。彼らの卒業までを見届けることは、同じ年代の人にとっても、遠く過ぎ去った過去である人にとっても、刺激的で楽しい時間を提供してくれる。
「ちはやふる」の清々しい世界、そして言葉が持つ深み、大事にしたい
*大人買いする方は、少し読み進めて競技かるたにご興味を持たれた後、第48巻の巻末に特別掲載されている、「競技かるた入門 40枚かるた編」を先に読まれるとよいかと思います。
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