伊丹十三の映画が観られる!!〜こだわり抜かれた「お葬式」
ここ数年、伊丹十三の映画作品を見直したいと思っていた。未見の作品もある。しかし、私が加入している配信サブスクには入っていない。
そうしたところ、新聞に掲載された広告が目にとまった。日本映画専門チャンネルが、4Kデジタルリマスターした伊丹十三監督作品を、1月8日に全作一挙放送するというのだ。
伊丹十三は、映画監督・伊丹万作の息子であり、俳優・エッセイストなどマルチな活躍をする。私は彼のエッセイが好きだった。そんな彼が手がけなかったのが映画監督で、50代になってようやく処女作を撮る。それが1984年の「お葬式」で、私は大いに期待した。
「お葬式」は、日本アカデミー賞の最優秀作品賞を始め、監督賞、脚本賞、主演男女優賞、助演女優賞(菅井きん!)を獲得。大成功を収めた。
ところが、この映画の記憶があまりない。丁度就職した年で、見逃したのかもしれない。
そんなことはどうでも良い。早速観ましょう。
葬儀というのは、おごそかな式ではあるものの、そこには喜劇的要素がある。形式ばった営みであるが故に、ちょっとした綻びが、行為の本質以上に面白く見える。
この映画は、そんな「お葬式」“あるある“なのだが、それを軸としながら、様々な人間を描いているところに深みがある。
加えて、そこかしこに“伊丹十三的“なものが見える。登場する自動車の趣味。007シリーズを想起させる、車の並走シーン。「ある葬儀の記録」と題され、バッハ「G線上のアリア」をバックに、白黒撮影したシーンが挿入されるが、ゴダールなどヌーベル・バーグ映画を思わせる。このシーンの撮影は、「黒白撮影:浅井慎平」とクレジットされている。その他、印象的なショットの数々。
伊丹万作の映画にも出演した藤原釜足ら、ベテランの俳優陣。主演の山崎努、宮本信子(共に俳優役)を始め、配役にもこだわりが感じられる。伊丹十三記念館のサイトに、こんな記述があった。<「百の演技指導も、一つの打ってつけの配役にはかなわない。」伊丹十三は『お葬式』のチラシに、映画監督であった父親、伊丹万作のこの言葉を紹介しました>。葬儀屋の三代目江戸屋猫八、マネージャー役の財津一郎。そして、高瀬春奈〜これが。。。やめとこう。僧侶役の笠智衆が、「数え歳」の由来を説くのだが。。。
「お葬式」、やはり傑作です。コロナ禍を経て、日本の葬式のあり方も変わったかもしれない。今や、“あるある“ではなく、「昔のお葬式はこんなだったね」という記録にもなっており、伊丹十三の観察眼に恐れ入る。
今年の楽しみの一つは、伊丹作品の鑑賞となりました
日本映画専門チャンネルでは、1月21日から毎月2作品を再度放送します
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