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SWIFTって何?(その3)〜海外送金「指示」をテレックスで

口座のお金を動かすには「指示」が必要です。

今回のケースを再掲すると;
私はモスクワに住む娘“金なき子”に1000ドルを送金する。私の口座は大日本銀行、娘の口座はボリショイ銀行モスクワ支店
大日本銀行はドル預金口座をマンハッタン銀行の所有、ボリショイ銀行はブロンクス銀行に持っている

大日本銀行からの「指示」
1.マンハッタン銀行あて:ブロンクス銀行のボリショイ銀行口座に1000ドル送金せよ
2.ボリショイ銀行あて:ブロンクス銀行のおたくの口座に1000ドル入れたので、おたくのモスクワ支店“金なき子”のドル口座に1000ドル入金してくれ

私が銀行に入った頃、この「指示」の方法は大きく2つありました。一つは利用銀行が拡大しつつあるSWIFT。そしてテレックスです。

テレックスと言われても、若い方はなんだか分からないと思いますが、簡単に言うと専門の端末を使ったEメールのようなものです。

大日本銀行の担当者がテレックスの端末に座り、「指示1」の内容を、まさしく文章そのままに打ち込みマンハッタン銀行あてに送ります。(私は実際こういう仕事をしていました)

受け取ったマンハッタン銀行、この「指示」が確かに大日本銀行からのものであることを、どうやって確認するのでしょう。テレックスは電話のようなオープンなもので、なりすましのEメールのように、悪意のある別のものから送られている可能性もあります。

こうした通信を安全/確実に行うために、銀行同士は“テストキー”という暗号コードブックを交換していました。 そこには、通貨や金額によって特定の数字がアサインされています。大日本銀行の担当者は、コードブックをもとに、電文の中の指定された項目に当てはまるコードブック上の数字を足し上げ、暗号キー(数字)を算出し「指示」の中に記入します。受け取ったマンハッタン銀行は同様の計算を行い数字を照合、「指示」が正式であることを確認、マンハッタン銀行は大日本銀行の口座から、ボリショイ銀行の口座に1000ドルを動かします。

ボリショイ銀行あての「指示2」もテレックスで送信されます。ボリショイ銀行はブロンクス銀行にある自身の口座の入出金を照会、確かに1000ドルが入金を確認し、“金なき子”の口座に入金すれば安全です。

当時は、これらが本当に人手で行われていました。面倒、時間がかかる、間違いも発生する。もっと良い「指示」の方法があるのではと作られたのがSWIFTです



*テレックスの端末


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