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高校生が出会った“樹村みのりの世界“(その1)〜「菜の花畑のむこうとこちら」

私がマンガにのめり込んだきっかけとなった雑誌「だっくす」(その後「ぱふ」)については、以前少し触れました

確か最初に買ったのが1978年9・10月号で“特集 山岸涼子“、次の11月号が“特集 樹村みのり"でした。

樹村みのり、知らないマンガ家でしたが、これをきっかけに読み始めハマりました。「マンガでここまで人の気持ちを深く描けるのか」と感じたような記憶があります。当時私は男子校に通っており、そこではまったく学ぶことができない世界を楽しんでいたと思います。

長い間ご無沙汰だったのですが、結構な量の作品が電子化されていたので、久方ぶりに読んでみました。作品は、当時代表作の一つと言われていた、“菜の花畑“シリーズを集めた「菜の花畑のむこうとこちら」です。(Kindle版等もあり)

初出誌が表記されていないので、こちらの作品リストに従うと、第1作の「菜の花」が「別冊少女コミック」の1975年1月号に掲載、その後、同誌の1975年11月〜76年1月号に「菜の花畑のこちらがわ」が連載され、その後、77年3月「菜の花畑のむこうとこちら」、同年10月「菜の花畑は夜もすがら」、最終作「菜の花畑は満員御礼」が1978年12月号に掲載されました。

第1作「菜の花」は、“まぁちゃん“こと高校生の山口正美が少女時代を回想する話で、“少女マンガ“らしい作品になっています。この中に、まぁちゃんの家に下宿する、青森出身の“森ちゃん“という大学生が登場、学生運動にも参加する森ちゃんの造形に、樹村みのりの香りが感じられます。

並べてみると、この「菜の花」は全体のプロローグのような存在になっており、「菜の花畑のこちらがわ」からは、森ちゃんを始めとする女子大学生が物語の中心となります。

「菜の花畑のこちらがわ」、菜の花畑を望む家に住む、幼稚園児のまぁちゃん。同居するのは、茶道・華道・書道の先生をしているお母さん。そのお姉さん、まぁちゃんのおばちゃん。彼女は、出版社に勤めていましたが、今はフリーライター。この人がカッコ良い。

三人で住むには広すぎる家、女世帯で物騒ということで、二階を改装して男子学生に貸そうと考えたのですが、飛び込んできたのは、森ちゃんら四人の女子学生。かくして、にぎやかになった家を中心に、様々な出来事が起こっていきます。

第1作と第2作の間は、1年足らずなのですが、絵のタッチもグッと大人っぽくなり、軽快に読み進められるのですが、話の内容も深みが増してきます。当時の、少女マンガの世界を取り巻く状況変化を表しているようにも思えます。

最初は、少人数で始まった“菜の花畑“シリーズですが、女子大生グループが加わり、“むこう“にあるお家が登場し、最後は“満員御礼“となる、人と人との交流により生まれる素敵なエピソードが綴られていきます。

そして、その中に登場する、子供であるが故の純粋で、かつ現実的な目線に、時おりハッとさせられるのでした。

“菜の花畑“シリーズが単行本化されたのは、ブロンズ社が出した作品集。1980年3月の発行、私の高校生活が終わろうとしていた頃です。当時の樹村みのり作品をもう少し読み返してみましょう

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