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ドラマ「パチンコ」シーズン1〜このドラマは日本で作って欲しかった

ミン・ジン・リーの小説「パチンコ」について書いたのは、2021年の3月だった。あれから2年以上が経ち、この7月には文庫化された。

まず、未読の方には強く読むことをお勧めする。戦前・戦後、朝鮮半島から日本に渡ってきた人たちの人生が、見事に描かれている。それによって、日本という国を見つめ直す内容になっている。

この小説は、Apple TVでドラマ化され、文庫化に合わせて紹介記事を目にすることもあった。私は、長らく見ようとダウンロードしていたが、こうした記事に後押しされ、視聴した。

原作は、<第一部 故郷 1910ー1933年>、<第二部 母国 1939ー1962年>と時系列的に、1989年までが語られる。ドラマの方は、これを分解して、過去と現代(1980年代)を行き来しながらの演出になっている。

これは原作を読んでいない方には、ちょっとフォローしづらいかもしれない。アメリカでは、ベストセラーになっているので、ある程度原作の読者を意識しているようにも感じる。個人的には、素直に歴史を積み重ねて欲しかったように思う。

ただ、ドラマとしての評価は、シーズン2以降を観てからだと思う。

それよりも、このドラマを観ながら、日本で製作されなかったことを残念に思った。在日韓国人について、正面から向き合って描く、最高の素材であると思う。舞台のほとんどは日本であり、日本人あるいは日韓の共同で作るべきドラマだ。

関東大震災における、朝鮮人に関する流言、それに伴う虐殺のエピソードが登場する。日本における人種差別の事実であり、同時に今のSNSにまどわされる社会にも通じている。

そして、在日韓国人が不利益をこうむった事象は、戦中・戦後へと続いていく。結果として、多くの才能が日本国外へと流出しただろう、原作者ミン・ジン・リーを含め。日本における、インクリュージョンの問題を内包している。

南果歩が出演しているが、日本の第一線の俳優陣が世界に出る大チャンスでもあったはずである。

最終エピソードのエピローグとして、在日韓国人の女性が数人登場する。八十代から九十代の方々で、みなさんとてもお元気である。それはとても嬉しい映像でもあった



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