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アニメ版の先にあるものは〜石塚真一「Blue Giant Supreme」

2023年2月24日に記事にしたアニメ「Blue Giant」は、引き続き好評のようで、今も一部映画館で上映されているようです。ジャズを題材にしたアニメは新機軸であり、上原ひろみらの演奏も素晴らしく、ストーリーはマンガの王道という感じが受けたのでしょう。

その後、私は原作「Blue Giant」を読み、その素晴らしさについても言及したわけですが、さらに続編「Blue Giant Supreme」を読了しました。まずもって素晴らしいのは、紙面から音楽が聴こえてくるかのような表現力。主人公の成長と共に、音楽もより洗練されていくわけですが、マンガでそのことを表現する、難しいと思うのですが、見事です!


ここからは、「Blue Giant」のネタバレが若干あります。



主人公のサックス奏者、宮本大は高校卒業と共に仙台を離れ、東京で本格的に音楽活動を展開します。その模様をアニメ化したのが、前述の作品。そして、遂に宮本大は日本を飛び出し、世界に羽ばたこうとします。そして、その先はジャズの本場アメリカではなく、ヨーロッパ!

初めての異国の地で、様々な出来事と格闘する宮本大の姿を描いたのが「Blue Giant Supreme」です。

なんと言っても、海外編の最初の舞台を欧州にしたところが素晴らしい。

作者の石塚真一は、インタビューで「ここでアメリカに行くと話がすぐ終わっちゃうなと思って遠回りしました(笑)。というのは僕の話で、大は自分なりの道を行きたかったんですかね。」と語っています。

「Blue Giant」の最終巻のラストを読み返すと、大が仙台の師匠に海外行きを相談するシーンがあります。そこで、アメリカのバークリー音楽大学を出ている師匠は大に、<お前はアメリカとか音大の枠にとらわれず、思うまま世界から回る人間なのかもな>と話し、ヨーロッパ行きを勧めます。

ヨーロッパでジャズと言えばフランス、特にパリはカウント・ベイシーなどの演奏で有名な“April in Paris“といった曲もあり、シャンソンだけではなくジャズの街という感じもあります。大もフランスを候補地に挙げますが、師匠は<が、あの国はオーソドックスが基本だ。ジャズには“開いている“が“固い“>とし、<ジャズに対して柔らかくー かつ開いている国がー>と続けます。

大は、<おれ、その国に行きます。>と応えますが、ここでは国名は明かされません。大が降り立った場所は。。。。それが、「Blue Giant Supreme」の第1巻で明かされます。

宮本大の目標は、世界最高のサックス奏者になることですが、そこには日本人・アジア人にジャズが出来るのかという命題がつきまといます。

大の作る音楽は、“XX人“という狭いカテゴリーの中にとどまるものではなく、世界的な音楽になって欲しい。「Blue Giant」を読み、彼の未来を見守る人は、皆そう思っていることでしょう。その為にも、ヨーロッパに行くことが重要なのだと思います。

そこには、アメリカでは経験できない多様な文化があり、出会いがあり、刺激があります。「Blue Giant Supreme」を読みながら、私は大と共にそれを体験しました。そして、予想通りの流れなのに、感動を覚えるのです。もう一度言いますが、マンガの王道です。

私は自分の経験から、若いうちに海外で生活経験するのが良いと思っています。もちろん、環境が許さないことをあるでしょうが、今は物理的に行けなくとも、その空気を感じることも可能になってきたようにも思います。

そんな“空気“を感じさせてくれる、「Blue Giant Supreme」。多くの人がこのマンガを読んで海外へと思いを馳せて欲しいと思います。

宮本大の旅はさらに続いて行きます〜「Blue Giant Explorer」へと



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