見出し画像

“大丈夫“ってだいじょうぶ?〜いくつかの辞書を引いてみた(その2)

(承前)

飛行機のフライトで、CAさんからコーヒーをサーブされ、「お砂糖とミルクはお使いになりますか?」と聞かれて、「大丈夫です」と答える。はて、これは正しい日本語なのだろうかと考えた。何と言うのが正しいのか。「いりません」、なんだかぶっきらぼうな感じがする。「結構です」これも固すぎ、冷たすぎ。などと考えていた。

そして、前回の三省堂国語辞典の提言は、「けっこう」である。

「結構」を辞書で調べてみた。

広辞苑第七版、最初に来る語釈は<【一】① かまえつくること。組み立てること>。例文の一つは、<文章の結構>。続いて<②たくらみ。もくろみ。計画>。例文は平家物語の一節。<③したく。用意>、どれも日常的には使わない意味である。次にようやく、<④申し分のないこと。よいこと>という、<「結構なお手前」など、耳にする使い方が登場する。そして6番目に<これ以上は望まないこと。十分。たくさん。「もう結構です」>が登場。なお、“不適切な使い方“といった注意書きはない。

新明解国語辞典第八版はどうだろう。冒頭は<【一】建物などについて、全体の構成をどうするか、どこをどのように強調するかなどの、全体の組み立て(についての計画)>という、私の知らなかった意味がやはり載っているが、その二つ後に“結構な、結構に“として<【二】②現在の状態で十分満足しており、これ以上を必要としない様子だ>。

さら[運用]として補足説明がある。
<相手の申し出などを丁寧に断るのに用いられることがある>。そうか、“結構“は固く冷たいイメ結構ジがあったが、新解さんによると“丁寧“な拒絶であることが分かった。ところが、続いて<相手からの勧誘や協力の申し出などを拒否するのに用いられることもある>。固いのか柔らかいのか、どっちなの?

明鏡国語辞典第三版は、<【二】②それで満足なさま。さしつかえないさま。(中略)「一杯どうかって?それは結構ですね」 ③それ以上は不要であるさま。(現状に満足である。)「もうお酒は結構です」>。明鏡さんはお酒が好きらしい。

さらに補足説明がつく。
<[使い方]「一杯、どうですか?」のような提案に対して、単に「結構です」というと、②③のどちらの意なのかわかりにくい。②の場合は「(はい、)結構ですね」などと、③の場合は「もう結構です(よ)」「いや、結構です」などと答えると意味が明確になる>と、とても親切である。

総括すると、“大丈夫“と違って、“結構“は全ての辞書において適切な日本語として表記されており、さらにその使い方指南まで掲載している辞書があるということである。つまり、“大丈夫“はだいじょうぶとは言えず、“結構“はけっこうな表現なのである。

念の為、三省堂国語辞典を引く。<【二】③〔自分のがわが〕(これ以上)いらないようす。「もう結構です・(勧誘に対し)うちは結構です」>と、“けっこう“を推奨していた割には、シンプルである。

さて、みなさまお気づきになっただろうか。どの辞書も、“これ以上は“というニュアンスを入れている。“結構“の使用が、けっこう難しい秘密はここにあるのでは?

(コーヒーに)「お砂糖いかがですか?」、私のコーヒーには砂糖は入っていない。この状態で、「結構です」と言うのに抵抗感を感じるのは、そこに理由が?

すでに酒を飲んでいる状態で、「もう一杯、どうですか?」に対して、「もう、結構です」。これに比べると、シラフの時の「一杯、どうですか?」「いや、結構です」は、語感が異なるのでは?

そう言えば、今日もコンビニで「レジ袋入りますか?」、「大丈夫です」と反射的に答えていた。。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?