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「立川談春芸歴40周年記念興行」第1ラウンド(その1)〜やはり「包丁」は絶品だった

今年は、立川談春が芸歴40周年を迎えたということで、記念興行として有楽町朝日ホールで年間を通して独演会が開催されている。当初は昼公演のみだったが、人気を反映し夜の部が開催される日もある。第1ラウンドとして発売されたのが、次の公演。各回2席がネタ出し、1席が“お楽しみ“という構成である。

1月27日 白井権八/包丁
2月3日 夢金/御神酒徳利
2月24日 よかちょろ/文七元結

毎回行くのもちょっと重いので、各ラウンド1回ずつ程度行こうと考えた。この中で、是非聴きたいのは「包丁」である。談春の「包丁」は、2005年・2018年と体験しているが、彼のネタの中では大好きなものの一つである。

最初の一席は“お楽しみ“、マクラもふらず、談春が始めたのは「十徳」。口演後、自分は寄席修行を経験しなかったので、前座ネタ、短い時間で演ることをしてこなかったので、今回の興行では最初に前座ネタを演じることにした」という趣旨の話をした。談春は1984年入門だが、その前年に立川談志は落語協会を脱退、立川流を創設したが、それにより一門は寄席に出られなくなっていた。全公演を録画しているようで、記録に残すという目的もあるようだ。

なお、談春の著書「赤めだか」(扶桑社文庫)によると、「十徳」は談志から直に稽古をつけられた数少ない演目である。

続いて始めたのは「白井権八」。講釈ネタだが、広瀬和生著「談志の十八番」(光文社新書)によると、談志は浪曲師広沢瓢右衛門から直伝を受けた。談春はそれを継承している。笑いの多い話ではなく、談春曰く「無伴奏の演奏のようなもの」。バッハの無伴奏チェロソナタのように、話芸を純粋に楽しむような演目である。

中入りをはさみ、後半はお目当ての「包丁」。

腐れ縁という感じの常(つね)と寅が、久方ぶりに再会する。常の方は、清元の師匠と所帯を持ち、羽振が良い。からっけつの寅を、常が鰻屋でご馳走るすことに。常は脇に女ができ妻と別れたい、ついては寅に一芝居打つことを依頼する。

常の留守中に、寅が家を訪ね、常の女房に言いよる。そこに常が飛び込み「間男見つけた!」と妻をなじり、離縁へと持ち込むというものである。

ひどい話である。それだけに、綺麗に演じないと聴く方の気分を害する。談春のテンポが素晴らしい、トントンと話が展開していくので、聴き手は引き込まれ、笑いも自然とこぼれる。

話のクライマックス、寅が小唄を歌いながら、常の女房に迫るシーン。これがまた見事である。寅と、堅物女房のコントラスト、そして以外な展開へとつながっていく。

いやぁー、師匠談志も褒めた立川談春の「包丁」、やはり絶品である。

余韻が冷めやらないので、彼の「包丁」がなぜ素晴らしいかについてもう少し書きたい。また次回


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