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「ユリシーズ」から100年〜その間のベスト小説は意外にも

ジェイムズ・ジョイスの小説「ユリシーズ」の刊行は1922年、今年はそれから100年の記念の年。「ユリシーズ」は、小説の新しい世界を開いたとも言われており、英Times紙では、“ランキング:過去100年の本ベスト50〜あなたは賛成しますか?“と題した記事を掲載している。

ランキング好きの私としては、ついチェックしてしまった。選出の方法は、16人の作家や批評家が、それぞれ20冊を選び、単純に得票数を足してランキングしたものである。したがって、ランキング下位は、それほど多くの人に支持されていない可能性もある。

このリストを眺めると、読んだことないどころか、タイトルを見てもピンとこないものが沢山ある。真ん中の25位から見てみよう。知っている作品は、25位アリス・ウォーカー「カラー・パープル」、24位イアン・マキューアン「贖罪」、どちらも映画化されたが(「贖罪」の映画タイトルは「つぐない」)、映画も小説も未見・未読。

21位ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」は数少ない既読本。16位に「日の名残り」、15位に「わたしを離さないで」とカズオイシグロが並ぶ。家の本棚には並んでいるが、彼の作品は「わたしたちが孤児だったころ」しか読めていない。

12位にマーガレット・アトウッドの「侍女の物語」。ドラマ化もされ、興味ありだけれど、ドラマも本も触っていない。

それでは、10位以内はどうだろう。このあたりからは、多くの選者に支持されているはずだ。

10位、バージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」。ウルフは7位に「灯台へ」もランクインしており、さすがイギリスを代表する作家である。私は、両作とも知らなかった。

9位、チヌア・アチェべ「崩れゆく絆」。アフリカ文学の名作だが、初めて聞いた。

8位、ジョージ・オーウェル「一九八四年」。近年話題になりました。さすがに本作は知っているが、オーウェルは「動物農場」で止まっている。

6位、ウラジミール・ノボコフ「ロリータ」。有名だけれど未読。

5位、トニ・モリソン「ビラブド」。ノーベル賞作家で、名前は知っているが作品は不知。

4位、ミュリエル・スパーク「ブロディ先生の青春」。スコットランドの作家だが、初めて聞いた。

3位、サルマン・ラシュディ「真夜中の子供たち」。つい先日、講演中に刺され、ニュースになっている。ブッカー賞受賞の超有名作だが、未読。

2位、ジーン・リース「サルガッソーの広い海」。初耳だが、調べたところ池澤夏樹は「現代世界の十大小説」に選んでおり、個人編集とする世界文学全集の1巻を、前述の「灯台へ」とのカップリングで編んでいる。

いつも、ごたくを並べているが、私の教養はこの程度である。

そして、いよいよ1位。遂に、私の読んでいる小説が登場しました。しかも、大好きな作品。
スコット・F・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」。パチパチパチ

結構、意外な1位である。読んでいないが、2〜9位は全て格調高そうである。「ギャツビー」は、そうした“敷居の高さ“は感じさせない小説である。

記事では、<「ユリシーズ」のジョイス同様、フィッツジェラルドは大仕掛けなショー(spectacle)の力を知っている。両作とも、表面上は普通の男ひとりの思考を通じて映し出された、個人的な生活を、浪費に対比させ位置づけている(拙訳)>。そして、<「ユリシーズ」でも見られる通り、「グレート・ギャツビー」はより大きな物語をこっそりと示唆しながら、様式と登場人物を高みに持ち上げている>。

見出しの最後に、“do you agree?“とある通り、別に絶対的なリストではなく、一種のお遊びである。異論は噴出して当然。記事には投稿ができるようになっており、「なぜこの作品は入っていないんだ!」というコメントがポストされていて面白い。

例えば、ハーパー・リー「アラバマ物語」(原題: To Kill a Mocking Bird)、ジョーゼフ・ヘラー「キャッチ22」、スタインベック「怒りの葡萄」。中でも、私が大いに賛同したのがJRRトールキン「指輪物語」。この作品によって刺激され、多くのファンタジー小説が生まれた。また、本作自体「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化されたが、「スター・ウォーズ」始め、映像化作品への影響も大である。

ちなみに、村上春樹を含め、日本人作家の作品はランクインしていない。日本出生のカズオイシグロは前述の通り入っているが。

私は「ユリシーズ」も読んでいない。また、いくつかの宿題を背負い込んだ気がする

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