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ジョン・フォード“騎兵隊三部作“コンプリート(その2)〜「黄色いリボン」

(承前)

ジョン・フォード監督の”騎兵隊三部作”の2本目は「黄色いリボン」だが、この作品が日本では最もポピュラーなのではと私は思っていた。その理由の一つは、父親がこの映画の主題歌を気に入っていたからかもしれない。父は西部劇の主題歌が好きだったようで、カセットを買って車の中で流していた。その中の1曲がShe Wore a Yellow Ribbon”だった。レコードやカセットを買うことなどほとんどなかった人なので、印象に残っている。

「アパッチ砦」の稿で書いた、蓮實重彦の表現も「黄色いリボン」が、知名度では一段上の書き方である。それでも気になったので、本棚にあった芝山幹郎の「映画一日一本」(朝日文庫)を取り出した。この本で選ばれた365本の映画に、”騎兵隊三部作”から選ばれたのは「リオ・グランデの砦」だった。 芝山氏は<この映画は過小評価>されているとし、全二作<とならんで騎兵隊三部作を形成しながら、「リオ・グランデの砦」はさほど知名度が高くない>と書いている。

三部作の中で、知名度が最も高い(としておこう)「黄色いリボン」は唯一のカラー作品である。それが人気の一つかもしれない。日本での公開は1951年(1949年製作)、人々は天然色の映画を嗜好したのではないか。

さて、その「黄色いリボン」におけるジョン・ウェインの役どころは、ネイサン・ブリトリス大尉(Captain)。妻を亡くし、自身は定年を迎えようとしている。なお、「アパッチ砦」と「リオ・グランデ」は、ジョン・ウェインは同じ人物を演じ、話がつながっているが、本作は独立している。

彼に課された使命は、アメリカ原住民との関係を鎮めること。そして、隊長の奥方と姪を、駅場所の停車地まで無事送り届けること。姪のオリビアを演じつのは、ジョアン・ドルー。本作の前には、ハワー・ホークス監督の「赤い河」にも出演している。“騎兵隊三部作“に登場する女性は、おしなべて勝気で、強い女性である。オリビアもその一人であり、男の世界の中で光っている。

このオリビアを巡って、若き二人の士官が恋の鞘当てを繰り広げ、それが映画のアクセントにもなっている。

それでも、焦点が当たるのは退官に向かう一人の士官であり、同様に一線から身を引くことになる、配下の軍曹だ。アメリカ原住民族との戦いという、テンションの高い世界が見せられるだけに、引退という状況のコントラストが際立つ。

また、原住民族の長も老い、若者をコントロールすることが困難になっている。世代交代は好むとこの混ざるとに関わらず、いずれの世界にも迫ってくる。これらを「黄色いリボン」から読み解くのは、私が60歳という年齢に達したからなのだろうか。

このように、「黄色いリボン」はカラー作品であることだけではなく、「アパッチ砦」「リオ・グランデ」とは、ちょっと違った色合いの作品になっており、それ故、マンネリになることなくこの三作品を観ることができた。

結論は、3作全て素晴らしいということ。

騎兵隊とそれを取り巻く家族たちという構造は共通するも、中心となるテーマがそれぞれ全く異なり、それぞれが興味深い。

ちなみに、前述の芝山氏の本では、(発刊当時)DVDで観られる作品から、1月1日「続・夕陽のガンマン」(クリント・イーストウッド主演)から始まり、12月31日「ミリオン・ダラー・ベイビー」(同 監督・出演)まで一日一作が紹介される。「リオ・グランデ」は10月10日。まったくの偶然である



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