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手塚治虫はヒグマ“OSO18“をどう考えるのだろうか〜「大地の顔役バギ」

クマが人里に出没し、さまざま被害をおよぼす。そういった事象を頻繁に耳にするようになった。中でも有名なのは、昨年“駆除“されたとされる、釧路地方に出現したヒグマ「OSO18」。この手のニュースを見ると、仕方がないし、被害にあった人からすると切実な問題であることは認識しつつ、なにか可哀想にも思える。

クマがこうした行動を取るには、彼らなりの正当な理由があるのだろうし、生きるために必要なことだったのだろう。そして、その原因を作ったのは、人間なのではないかと考えてしまう。

手塚治虫漫画全集の第321巻のタイトルは「大地の顔役バギ」、この表題作を読みながら、手塚は前述のような事件をどう考えるのだろうかと思った。

1975年から76年にかけて「週刊少年アクション」(双葉社)に連載された作品。

フェルナンド・ゴメスは、農園開発のためにジャングルを切り開くのだが、ジャガーの巣にぶつかる。人間に抵抗するジャガーのオスを銃器で仕留めるのだが、オスに庇われたメスのジャガーが暴れ出す。そして、メスはゴメスをかみ殺すのだが、ワナにかかり絶命、人間に対する憎しみと、ゴメスから奪ったロザリオを息子のバギに託す。

このバギに、日本から流れてきた射撃の名手・麻理夫(まりお)が絡み、西部劇風に物語は進行していく。

手塚が何度なくテーマにしてきた、自然そして動物と人間の共生がベースに流れる活劇。人間から見ると、バギは社会を見出す悪である。そして、バギが保持するロザリオは、人間の富への欲望を表象している。富のためなら、人間は動物を殺してよいのだろうか。

手塚治虫は、予言のような作品を数多く残した。本作からも、未来への警鐘が感じられる。

本作は、残念ながら未完で終わっている。手塚はバギと人間の関係をどう描くつもりだったのだろうか。

本作の収録作品は、SF短編で植物と人間の関わりを描く「緑の果て」(1969年「ファニー」)、核戦争・SDGsといったことを考えさせる「熟れた星」(1971年「SFマガジン」)、村おこしが村民を暴走させる「山棟蛇(やまかがし)」(1972年「漫画サンデー」)。さらに、手塚作品のキャラクターの中では奇妙な魅力を放つフースケが登場する「出ていけッ!」(1972年「プレイコミック」)が収まっている



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