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2024年は「源氏物語」を読もう(その2)〜瀬戸内寂聴とオーディオドラマ

(承前)

「源氏物語」“攻略法“などと、大仰に書いたが、私はこうして通読したというだけである。それでも、ご参考になれば幸いである。

通読できたのは、第一にオーディオ・ドラマの存在が大きい。瀬戸内寂聴訳「源氏物語」(講談社文庫)を基に2002年に発売されたものでCD103枚組、オークション・サイトなどに時折出品されているようだ。これを購入するとなると大ごとだが、サブスク・サービスのAmazon Audibleに入っていたことで、聴取が容易だった。

そして、このドラマがよく出来ている。語り手である紫式部に三田佳子、光源氏は中村橋之助(現・芝翫)、夕顔には南果歩、紫の上が沢口靖子。その他、森繁久彌、天海祐希、寺島しのぶ、etc.と豪華配役で、音楽はツトム・ヤマシタと贅沢なつくりになっている。これによって、通勤時等の移動時間を使って、立体的に「源氏物語」を楽しむことができた。

そして、瀬戸内寂聴訳が、こうした音読を意識していたのではないかと思うほど、オーディオ・ドラマにフィットしている。Audibleには与謝野晶子訳の朗読も入っているので、少し聴いてみたが、ちょっと固い感じがする。

ただ、聴くだけだと「音声→漢字」の変換が脳内でうまくいかないこともある。ディテールについて、聴き飛ばしている部分もある。そこで、瀬戸内寂聴訳「源氏物語」を書籍でも入手して補った。一度耳から入れているので、引っかかった場所へと読み飛ばしていく。

できれば電子書籍版(私はAmazon Kindleを専用端末とiPad/iPhoneで使用)をお勧めする。現代語訳とは言え、古語的な表現も多く、巻末には「語句解釈」が添えられている。電子書籍の場合、「解釈」が付された言葉はハイライトされるので、必要に応じてタッチすれば解釈のページへとジャンプするのでストレスが少ない。

さらに役立ったのは、各帖について瀬戸内さんが書いた「源氏のしおり(訳者解説)」である。橋本治が「これで古典がよくわかる」 (ちくま文庫)で、「源氏」の「かんたんな文章」について、<「主語だって平気で抜けていますから 、 「一体これは誰のセリフだ ? 」というところがいたるところにあります 。「主語と述語の関係 」がはっきりしないし、>と表現している。現代語訳とは言え、“訳“なので同様の“わかりにくさ“がある。


セリフについては、オーディオ・ドラマである程度補完されるのだが、それでも分かりづらい箇所はある。それを「源氏のしおり」は埋めてくれる。各帖の内容がコンパクトにまとめられているとともに、「源氏」を読み解くためのポイントが簡潔に記載されている。

今回、改めて瀬戸内さんの「源氏」を聴き・読みながら、私にとって結果的に“攻略法“となった第二のポイントは、この訳者から入ったことだと思っている。(もちろん、比較対象を持たないのだが)

明日は、「源氏のしおり」をもう少し、瀬戸内さんのもう一冊、そして「源氏物語」に踏み込むことを躊躇されているあなたへの提言を


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