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「誰もがどこかではエイリアンだ」〜Coldplay Live at 東京ドーム(その2)

(承前)

今回のColdplayのコンサートでは、これまで日本で観てきたどのロック・コンサートでは感じなかった特徴があった。それは外国人観客の多さである。欧米系の人がチラホラは、いつもの光景だが、アジアからのファンが目立つ。中支系、韓国、フィリピン、ヒジャブ姿の女性はインドネシア・マレーシアだろうか。ツアーのスケジュールを見ると、日本の後は台湾で2日、ジャカルタで1日、オーストラリア・パースで2日を挟んで、クアラルンプール、年明け後は、マニラ2日、そしてシンガポールでは6公演、バンコクで2日の予定。この日の客層はさもありなんである。

コンサート後半は、2021年の最新アルバム「Music of the Spheres」から、静かな“Human Heart"が歌われる。自分の心、人間としての心が消え去らないように、二つに引き裂かれてしまわないように祈るかのような曲である。

続いても同アルバムからの“People of the Pride“、こちらは打って変わってハード・ロックである。この曲を通じて、心を失わないために、“誇り高き人“として強くあれと言われているように私は感じる。つまり、この2曲は対なのである。

なぜColdplayがこれほどまでに世界的な人気なのか、様々な理由があると思うが、Coldplayのメッセージの中にインクルージョン〜“包含“という考え方が色濃く出ている点があるように感じる。

本アルバムのリリース時に出されたメッセージは、“Everyone is an Alien Somewhere〜誰もがどこかではエイリアンだ“である。裏返せば、皆どこかではエイリアンなのだから、そのことを認めてつながり合おう、“誇り高き人類の一人として“だと考える。

私はColdplayが発出するこの姿勢が、世界中の人を共感させているのだと思うのだ。

これまでも、多くのポピュラー音楽のミュージシャンが、世界の平和、“Love & Peace“ということを訴えてきた。Coldplayは、それをアップデートして、21世紀に相応しい形に仕立て上げたのだ。つながりを地球レベルで求め、さらには宇宙へと拡大する。環境問題への対応は、地球人としての義務であるとともに、宇宙の一員として生きていくための責任でもある。

それを象徴するのが、極めて個人レベルのつながりを歌った初期の名曲“Clocks“に続いて演奏された、“Infinity Sign〜Music of the Spheres II〜Every Teardrop is a Waterfall“で、ここでメンバーは“エイリアン“的なかぶりものをつけて演奏する。

続く“Something Just Like This“〜“Midnight“では、クリス・マーティンは手話も使い、再び個人レベルのインクルージョンを演出、そして極め付けは“My Universe"。BTSと共演したこのナンバーで、Coldplayは観客に向け、“あなたは私の世界、宇宙だ“と伝える。

こうしてコンサートは終盤へと突入する

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