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日本の常識は世界の非常識〜「イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ」

日本人の常識の多くは、世界の非常識である。それは、食において特に顕著だ。そんな自分達の当たり前を見直す機会を持つのも、視野を広げる意味で重要だと思う。

そこで、イタリアのピエモンテ州(トリノがある北部の州で海に面していない)出身の、マッシミリアーノ・スガイの著書「イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ」である。

このマッシ、テレビに登場し「サイゼリヤ」の攻略法を説明していたように記憶する。サイゼリヤの料理を、卓上の調味料や、料理の組み合わせにより、より美味しくして食べる方法を紹介していた。

彼の著した本書、めちゃくちゃ受けました、マッシは、日本に来て様々な食べ物・スイーツに出会いカルチャー・ショックを受けるのですが、それに私は驚きを感じます。海外に長く住み、ある程度耐性があるはずの私ですら、帰国し8年も経つとすっかり日本に染まっていたのです。

一つ紹介すると、マッシさんは「おでん」に衝撃を受けます。マッシさんは、「おでん」のメニューをながめ、<どれが「おでん」なのかずっと探してしまった>。全部おでんですよと言われ、ますます混乱、<「この中のおでんを下さい」と言ったら、「何にしますか?」>と聞かれ、ようやく分かってくる。<おでんとは、煮込んでいるそれぞれの食材を指す料理名で、そこから食べたいものを少しずつ注文するのだ>。確かに、そんな料理は欧米にはないかもしれない。

そして出されたものは不思議の連続。<ごぼう天を頼んだら、ごぼうが見あたらない>、おすすめのはんぺんは、<食感に驚きすぎて、すぐに口から出してしまった>。「餅巾着」の<中身を出すためにかんぴょうの結び目を解こうと頑張っていたら、お店の大将に笑われた>。<僕はまんまと、“おでんラビリンス“に迷い込んでしまっていた>。

そして極め付けはこんにゃく。<今まで出会ったことも、見たことも、考えたこともない味と食感だった>。何でも吸収するマッシだが、これだけは何度もチャレンジして、ようやく美味しく食べられるようになったそうだ。

さらに、マッシはスイーツが大好き。日本のスイーツ天国にも入り込んでいく。そうした、彼の食に対する貪欲さ、対応力に驚きつつ、改めて日本人の食に対する強い思いを認識する。さらに、比較的保守的な国民性のような気がしていたが、日本人は食に関してはタブーを設けず、何でもありでチャンレンジしている。焼きそばをパンに挟み、抹茶が洋菓子に使われ、大福はアイスクリームになり、回転寿司ではラーメンやケーキが回る。

マッシは、こう書いている。<日本の“食の魔改造“は世界にライバルがいないと思う。発想力と挑戦力、食材の魅力から味への共感までのすべてに驚いている>。

これに負けじと、マッシの周囲のイタリア人は、餃子をイタリアのスープに入れたり、おでんをトマトベースのスープで煮込み、バルサミコ酢をつけて食べる。こうしたフュージョン和食も紹介されている。

インバウンドが再開したが、彼らの楽しみの一つは食。コンビニも大好きである。その秘密をマッシが解説しているとも言える。

日常を別の視点で見つめると、新たな発見が色々ある。そんなことに気づかせてくれる、マッシの書いた一冊だった



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