なぜ行政はサッサと動かないように見えるのか?
行政の対応を見ていると後手に回るように見えることがあります。ニュースだけ見ていると「もっとサッサと動けばいいのに」という感想を漏らしたくなります。
しかし、本当にサッサと動けないのでしょうか?優秀な公務員の皆さんは、はたして怠惰で愚かなのでしょうか?それとも別の理由があるのでしょうか?
まず大前提として、行政と立法は別です。行政している人が立法に関わることはあります。しかし、行政は立法機関で決まったことを実行する機能を担っているにすぎません。
(以下は、あくまで個人的意見です。賛成反対あると思いますが、いずれにせよご参考になれば幸いです)
さて、今日の記事▼。この記事によると、9月入学制を導入する場合30本超の法律を改正する必要があるとのことです。
学校教育の在り方を変えるために法律を大幅に変える必要がある場合、法律をなるべく変えない方向に流れやすくなります。たくさんの法律変更が障害となるからです。これは政治家や官僚の怠惰ではなく、知恵の結晶である制度を変化・放棄するには相応の理由が必要になるからと私は考えています。
9月入学論で言えば文科省はじめ関連省庁は、法律をあまりいじりたがらないでしょう。「うまくいっているなら、変えなくていいじゃないか」となる。制度は基本的に建て増し、追加の流れとなります。
これは決して不合理ではなくて、非営利である行政の性質からは最適な形だと考えます。一見受け身のように見えますが、先人が組み上げたものがうまく回っている限り、変更する動機は内部からは生まれにくいものです。環境変化に対応して先回りして行動するという動きは、事業機会を求める営利組織ほど必要としません。民間企業から見ると受け身だったり鈍重に映るかもしれませんが、求められる立場の違いからくるものと考えたほうが、もやもやしなくてすむでしょう。
もちろん、来るべき環境の大きな変化に対して先回りして対応することは、行政においても大切です。この場合は、対応が必要なことが見えているのに先送りしているケースに当てはまり、不要な制度変更とは異なります。
9月入学にわたしは賛成ですが、恒久的な変更は急がずに議論したほうがよいと考えています。急ぐ理由は現状の休校対策であり、恒久的な9月入学制度への移行のメリット・デメリットとは切り離したほうが制度にひずみがでにくいと考えるからです。
具体的には、当面の1~2年をどう乗り切るか、という話をしつつ、9月入学に持っていく。変化をどこで吸収するのか。大学だけか、小中高を含むか、入社時期に関係する企業まで巻き込むか。学校制度全体を9月区切りにするのか、選択制なのか。
論点はいろいろありますが、基本方針としては「なるべくシンプル」な制度でスタートするのがよいと考えます。
物事には流れがあります。流れ自体は見えないもので触れないものです。流れをコントロールするためにできることは、仕組みを整えることです。法改正は流れを変えることであり、流れの変化はゆっくりであるがゆえに、戻すのも大変な労力が必要となります。国規模の仕組みとなると、おのずと慎重になるのは止むをえないと考えます。
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