映画館で出会った若者はどんな社会人になっているだろう?
8年前、勉強のために毎月北海道から東京へ行っていました。
東京での用事が済むと、大学で上京している息子と会うのが恒例。
その日は息子との約束までには時間があったので、友人が勧めてくれた映画を観ることにしたのです。
確か、川崎の映画館。
初めての土地で迷い、上映時間ギリギリに席に辿り着いたのを覚えています。
チケットを購入する時、その頃はまだ窓口販売で「どのお席も空いてます」と言われ真ん中の座席に決めました。
それがどんな意味だったのかも考えずです。
初めての貸切状態
暗がりの通路を抜けて開けた空間に出ると、本当に人がいない!
一瞬スクリーン番号を間違えたのかと思うほどでした。
唯一、若い男性がお一人だけ。
取り敢えず指定席を探すと、その男性の真横でした!
こんなに広くてだれも居ないのに?
お互い親子でも、知り合いでも、何でもない関係です。
私は構わなくても、若い男性にしてみるとおばさんが隣はイヤだろうと察知しました。
そこで、声をかけたのです。
「隣同士じゃない方がいいよね?席ズレましょうか?」
相手も素直に「そうですね」と受け取ってくれ、それぞれ距離を空けて座り直しました。
いざ上映時間が過ぎても他に来る人もなく、本当にふたりだけの映画鑑賞となったわけです。
「きっと、うまくいく」との出会い
その時の映画は「きっと、うまくいく」
インド映画の中でも、評価の高いものです。
3時間近い上映でしたが、飽きることなく見入りました。
お互いを気にすることなく映画に没頭していたと思います。
感動が収まらないこともあり、会場が明るくなると「良かったですね」とどちらともなく言い出していました。
会場を出ようとする時、若者の方から話かけてきたのです。
ずいぶん前のことなので、うる覚えですが。
確か「地元の方ですか?」と聞かれたと思います。
私は北海道から来たこと、息子がこっちにいると伝えました。
大学生かなと感じていたのですが、社会人2年目(多分)だそうです。
今は地方にいて、この日は遊びに来ていたと言ってました。
何故だか分かりませんが、自分の仕事のことや映画のことを話してくれました。
ほんの立ち話でしたが、素直な感じのいい青年。
映画の余韻を誰かと分かち合いたかったのでしょうか。
私はその頃若者の就職支援をしていたこともあり、話かけやすい雰囲気があったのかも知れませんね。
あるいは、母親のような感覚?
お仕事頑張ってね、と言って私は立ち去りました。
どこかで元気に働いていると信じて
8年も前のことです。
その時の若者も、今では頼りになる社員として頑張っていると思います。
あの時、仕事に少し迷いがあるような感じも受けていたのです。
映画を観て、元気を取り戻して帰っていたのならいいな。
映画館に行く時こんなおばさんがいたな、とたまに思い出してくれたら嬉しいです。
私には大切な映画館での思い出でした。